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越山“若水”がもたらす豊かな暮らしと、農業の新興勢力⁉【福井県美浜町を発掘!】
今回の発掘の舞台は福井県美浜町!
美浜町と言えば、全国の海水浴場ランキングでいつも上位に食い込む『水晶浜海水浴場』があったり、若狭ふぐの産地であったり、何かと海のイメージが強い場所ですが、
今回はあえて山の方向へ車を走らせてみました!
そこで見つけたのは、越山若水の“若水”がもたらす豊かな暮らしでした。
福井の方は、「越山若水」といえば福井新聞の論説のタイトルとしてなじみがあるかもしれませんが、
「越山」は越前の豊かな山々を、「若水」は若狭湾へと繋がる水の美しさを指す、福井県の豊かな自然を表す言葉なんです。
発掘では、「若水」の言葉通り若狭の美しい水に出会い、それによってもたらされる豊かな暮らしに思いを馳せることができたので、
一体どんなことがあったのかレポートしたいと思います!
YouTuberの激熱サポーターと合流!
今回のサポートメンバーは、地元のYouTuber!
美浜町から田舎の魅力を発信している『Route27ちゃんねる』の上野山達也さん、藤本佳祐さんとJR美浜駅で合流です!
ちなみに、“Route27”は国道27号線という意味で、国道27号線が美浜町を東西に貫いて通っていることにちなんで付けられたそうです。
毎度、我々の発掘調査は“事前に予定を決めず”その町の魅力を発掘していくというパターンがお馴染みなのですが、実は今回、Route27ちゃんねるさんから事前にこんなものが送られてきました。
分刻みのタイムテーブル!!!(笑)
紹介したい場所や人がたくさんいるということで事前にアポ取りも済ませ、予定を組んでくれていました!
このプロジェクトにこんなにも熱い想いで参加してくださるなんて、我々にとっても大変ありがたい話です!
しかーし!
まったく予定通りに行かない、いや、予定通り行った試しがないのがWAKASA発掘調査隊!(笑)
一体どうなるのでしょうか?
ひとまず作ってくれたプラン通りに、まずは湧き水があるという山方面に向かっていきます!
地元では生活用水にも使われている⁉【若狭美浜 新庄やまびこふれあい湧水】
美浜駅から車で10分程でやってきたのは、新庄地区と呼ばれるエリア。
▲嶌本均さん(左)
美浜町の水道課で22年(!)勤められたという経歴を持つ嶌本均さんにご案内いただきます。
水質調査なんかにも精通している、いわば美浜のお水のプロ!ですね。
そもそも福井にはたくさんの湧き水があり、県内120か所の湧き水で水質調査を行い、特においしい水を味わえる35か所を『ふくいのおいしい水』として選定しています!
「福井」という地名の語源は「よく水が湧き出るところ」という説もあるんだとか!
そんな『ふくいのおいしい水』に選定されている名水があるのは、嶺北(福井県北部)が多いみたいで、特に大野市なんかは水がおいしいと有名。
ただ、ここ嶺南も負けてはいません!
お隣、若狭町の『瓜割の水』は環境省が行った『名水百選選抜総選挙』の『おいしさが素晴らしい名水部門』で第2位に選ばれるほど。
水質調査でもダントツの上質さを叩きだしているんだとか!
そして今回は、平成29年に新たに『ふくいのおいしい水』に認定された『若狭美浜 新庄やまびこふれあい湧水』をおすすめしていただきました。
なんと、コップがその場に置いてありました!
「どなたでもご自由にお飲みください」って感じなんですね^_^
じゃ、遠慮なく飲んでみます!
ゴクリっ…。
…柔らかくて飲みやすい!!
ペットボトルに汲んで持って帰っちゃいたいくらい!
実際、大きなボトルに水を汲みにくる方は結構いるみたいで、地元の方の生活用水や飲み水としても大活躍しているみたいです。
自然の恵みが住民の暮らしを豊かにしているんですね!
なんと、以前紹介したCafé MIROKUさんのコーヒーにもこちらのお水を使っているそうです。
と、お水の美味しさに夢中になっていると、
嶌本さん「あ、そこらへん、足元気を付けてくださいね!」
足元?
嶌本さん「天然のワサビ生えてるんで!」
わお!これはすごい!
ワサビは本当に水が綺麗な場所にしか生えないと言われています。
水質の良さを見せつけられた感じがしますね!
この湧水がある道は、かつて美浜でとれた塩や魚などを滋賀の方へ運ぶのに使われていたそうです!
実はこの新庄地区のすぐ隣は滋賀県になります。
美浜と滋賀とを結ぶ『粟柄越』と呼ばれる古道があり、ここから滋賀を通って京都へ物資が、またその逆に京都の文化が滋賀を経由して美浜へ入ってきていたそうです。
そして、この道を通っていた人や、物資を運んでいた馬たちの水飲み場として使われていたのがここの湧き水だそうです!
さらに、ここ新庄はかつては木炭の産地であり、山で働く人々の喉を潤してきたのもこの湧き水だったそうです。
ちなみにこの地で焼かれた炭は「若新(若狭新庄の略)」という商標がつけられ、滋賀県から峠を越えて買い付けにくるほど評判がよかったんだとか。
あれ?
若新プロデューサーの苗字って、若狭新庄が由来だったりして⁉
ちなみに、ここから車で5分ほどの場所で、名もなき湧き水も発見しました!
かつて塩街道(若狭の塩を京都に向けて運んだ街道)だったと考えられる道沿いにあり、滋賀への峠を越える人の休憩所・水飲み場としても使われていたようです。
若狭美浜 新庄やまびこふれあい湧水
福井県三方郡美浜町新庄第262号3番地3
https://www.pref.fukui.lg.jp/doc/kankyou/water/goodwater.html
100年前からある生活道路【新庄の隧道】
次なる発掘に向かうために移動していたところ、サポートメンバーの藤本さんから
「せっかくなので狭い隧道通っていきますか?」と提案が!
そりゃあもちろん、行かないわけがないです!
※隧道…トンネルのこと。
藤本さん「ここです!」
なんだかミステリアスな雰囲気!
長さは50mくらいの短い隧道です。
日中だったからなのか分かりませんが、特にライトもなく、1人で歩いて通るには二の足を踏んでしまいそうです…。
幅は2mくらいなので、ギリギリ車が一台通れるくらいでしょうか。
調べてみると大正14年4月30日に竣工とのことで、約100年前に造られた隧道であることが発覚!
山によって分断された『田代』と『馬場』という2つの集落をつなぐために掘られた生活道路なんだそう。
なんとこの道は今も現役で使われているんです!
郵便局の車が通ったり、そのあとも何台か車が通って行ったので、今でも生活道路としては欠かせない道のようです。
正面衝突しないように、入り口付近で止まって向こう側の様子を覗いてから通るのが慣習みたいでした!
新庄の隧道
福井県三方郡美浜町新庄65-68
https://mihama-shinjo.com/?page_id=28
北陸最大級の若手きゅうり農家【福田農園】
「次は若手きゅうり農家を紹介します!」と言われて、『福田農園』さんにやってきました。
福田さん「Route27の福田です!」
まさかのサポートメンバーのおひとりでした!(笑)
福田新八さんはRoute27ちゃんねるのメンバーでもあり、農家さんでもあります。
大学卒業後、JAに就職し、野菜の販売を担当していた福田さん。
販売のノウハウや栽培技術のスキルを習得し、その後、地元で新規就農したそうで、現在は13棟のハウスで、きゅうり、スナップエンドウなどを栽培しています。
なんときゅうり農家としては北陸最大級なんだとか!
青々として、見るからにおいしそうなきゅうりがたくさん!
というわけで、早速いただいちゃいます!
パリっ!
ポキっ!
ん~、いい音!!
音だけで新鮮なのがわかります。
そして、みずみずしい!
ハウスの中で採れたてを食べるという雰囲気もあいまって、特別美味しく感じます!!
寺井隊長「このおいしいきゅうりには、何かこだわりはあるんですか?」
福田さん「ひとつは水です!ちょうどこの地面の下に水源があって、この畑には井戸水を引いてきています」
やっぱり水!
若狭の良質な水が、この美味しいきゅうりを育んでいるんですね!
福田さん「もうひとつは、肥料に魚介類、魚のエキス、石灰(貝殻)などを使っています!」
きゅうりに魚介類!?
若狭湾の魚たちも、まさか自分がきゅうりの肥料になるなんて思ってもみなかったでしょう!
でも、どうして肥料に魚介類?
福田さん「実は僕、福井県立大学で水産経営学を学んでいたんです。
農家をやっていく中で、大学時代に海洋学で学んだ魚の成分のことを思い出して、魚の持つうま味成分を野菜に与えることで美味しくなるんじゃないかと考え、肥料にしてみることにしました。そしたら、そのきゅうりの評判が良くて…」
農業に漁業分野の知識が生きているんですね!
福田さんのきゅうりは主にJAに出荷されていますが、地元の飲食店に卸したりもしているそうです!
その他にネット販売を検討していたり、新しい発信方法なども模索したりしているそう!
今までのイメージとは違った新しい農家のモデルが打ち出せると、「次の時代のイケてる職業は農家だぜ!」って具合に農家を目指す若い人も増えてきそうですね!
若新プロデューサー「若手農家さんが頑張っているんだから、商品としてもっと磨き上げて、今より高く売れるようにPRしていきたいよね!」と、新たな展開も示唆!
お土産にイタリア品種の白いナスをいただいて大喜びのメンバー一同でした!
福田農園
福井県三方郡美浜町郷市
https://www.instagram.com/nouka_fukuichi/
自然豊かな町では、暮らしも豊かだった
海のイメージが強い美浜町ですが、元をたどれば山からもたらされた水が川となって海に注いでいるんですよね。
今回美浜町を歩いてみて、まさに“若水”(若狭湾へと繋がる水の美しさ)に触れることができたわけですが、
そこから見えてきたのは単純に水が美しいことだけではなく、
そのおかげできれいな湧水が地元の方の暮らしにも役立っていたり、おいしい農作物が生まれていたりと、
人々の暮らしを豊かにするような何かにつながっているということでした。
その途中で出会った隧道もまた、山に囲まれた土地ならではのものですよね。
かなり暗く狭いトンネルだったので、地元の方は不便を感じたりしているのかもしれませんが、
よそから来た私たちにとってみれば、心惹かれる雰囲気がただよっていて、非日常感を感じるものでした。
そんな風に、特徴的な自然環境は地元の人の暮らしにさまざまなものをもたらしていて、それが外から見ると、実はすごく魅力的なものだったりすることがある、ということを学びました。
これって美浜町だけでなく福井県各地、いや、全国各地で見られることだと思います。
例えば火山があったり豪雪地帯だったり、
時に人間の暮らしに困難をもたらすような厄介なものであっても、そのおかげで育まれる土地の魅力がきっとひとつくらいはあると思うんです。
今度旅行に行くときは、その土地の特徴的な自然環境をたどって、新たな魅力を見つけに行ってみませんか?