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県庁部長権限で即決した“ミステリアス”な発掘事業【隊員コラムby嶺南振興局長小林弥生】

2年後には、北陸新幹線がやってきます!
終着駅は“嶺南”の“敦賀”です。
何とかしてPRしたいなあと思っていたところ、
若狭町出身の若新さんから「いい案思いついた」と連絡がありました。

「東京から一本でつながる 海と山の秘境
北陸の最果て 若狭つるが」

若新プロデューサーから提案された最初の企画は、この1枚だけでした。
(企画書とかないんだ、、、。)

東京駅で北陸新幹線の行先“敦賀”を見て、日本地図で位置を正確に思い浮かべることができる人はどれくらいいるでしょうか。
恐らく知らない方が50%以上、、、。
でも、知らない場所ってミステリアスですよね。

そういえば、
小浜って、まちのあちこちに色のついたお地蔵さんがあって、地域の人が毎日お水や線香をお供えしたりしているんですよね。

若狭町では、お悔みのお知らせを有線放送で、しかも屋号でお知らせしていたり、
若狭町やおおい町には人が立ち入ってはいけない島があったり。
それって、ものすごくミステリアスじゃない。

どこにあるかも知らない場所に、まだ見ぬミステリアスなまちがある。

といっても、私は県職員なので、
“最果て”なんて、そんなネガティブなこと言ったら逆効果では?
県がそんなこと打ち出してよいものか?
ネガティブキャンペーンなんてあり得ない。
というご意見もちらほらお聞きしまして。

ちょっとだけ迷ったのですが、(一応)
「局長、そこは決断ですよ! どうなるかわからないけどやるべきです!」
という若新プロデューサーの根拠のない(笑)後押しのもと、
「じゃあ、やりますか」
と、軽い決断をしたのでした。

決めたのは、令和3年度に入ってから。
当然予算はありません。
しかし、福井県には政策トライアル予算という、
各部長の権限で新しい施策にいち早くチャレンジできる予算があるのです。
この予算を活用してチャレンジしてみようと思いました。

本来は、部長の裁量に任せられているのですが、
知事に名誉隊長に就任してほしかったため、
それとほんの少し“最果て”に不安を抱いていたため、
知事に、恐る恐る
「知名度が低いことを逆手にとって、知られざる魅力を発掘します。
知事には名誉隊長として参加をお願いします」
とお伺いをたてました。

知事の反応は、即、
「面白そうだからやりましょう」
ということでWAKASA発掘調査隊が発足しました。
こんな資料で後押ししてくださった知事に感謝です。

最初に作成した資料

そして実は、「WAKASA」という表記にもこだわりがあります。

福井県外の方にとっては、”嶺南”と言われてもどこかわからないと思います。 

現在の嶺南には、昔の国名でいう”若狭”と”越前“が混在しているため、
「“若狭”とはいえないね」
「“つるが・若狭”では長いなぁ」
と悩んでいた時に、
「“WAKASA”ではどうでしょう」という案がでました。

確かに、福井県長期ビジョンでは嶺南を「WAKASAリフレッシュエリア」としています。
“若狭湾”を囲むエリア、若々しさに溢れたエリアなどいろいろな意味を包含している表記です。

これにしよう!
ということで、発掘隊はWAKASAという表記を活用しています。

ちなみに、私は、結成式では、
急遽出席できなくなった名誉隊長の代理でポーズをとっていましたが、
あくまで事務局の一人でした。
それが発掘調査に同行しているうちに、みんなが取り扱いに困ったのか、noteで“調査隊とは”のページがアップされた際に、いつの間にか隊員になっていました。
(本人了解なし)

そして、発掘を重ねるうちに、ポーズをとるのも自然にできるようになりました(笑)
古墳に入る姿をご覧になった方は、嶺南振興局長がそんなことするのか、と驚かれたようです。

「局長は毎日飛び回っているのでは」
「嶺南振興局の決裁が山積みになっているのではないか」
というようなお声もお聞きしますが、大丈夫です。

WAKASAのいろいろなことを知り、おもしろい人にお会いできる仕事は、楽しいことばかりです。
全く苦になりません!

発掘隊の調査には、スケジュールを工面して、少しでも参加したいという気にさせるものがあふれています。

WAKASA発掘調査隊を始めてから、SNSでの発信も積極的に行うようになりました。
頻繁に発信していくことで、なんだかWAKASAがおもしろいことになっていると、
感じていただいていると思います。

noteの記事に関しては、私は口を出さないことにしています。
(そもそも決裁とか了解をとるとかありません。)
毎週「UPしました」という連絡を受けて初めて読むことがほとんどです。

担当者は事前に名称や顔出ししてもよいか等の確認作業はしているのですが、文章には口を出さないように言っています。
(担当者は困っていますが)

もちろん、県として発行しているブログなので責任はありますが、
取材した感覚を素直に表現していくことの方を重視しています。

役所が書く文書は、どうしてもいろいろなところに影響がないように気を遣うあまり、
課題をぼやかしたり、触れないようにしたりしがちです。

WAKASA発掘調査隊では、地域の魅力を発掘することはもちろんですが、
課題から目をそむけることなく、みんなで一緒に考えることもしていこうと思います。
そうでなければ、地域が発展していくことはないからです。

WAKASAの皆さんが、地域の課題を考え、良くしようと努力している姿をお伝えし、
一緒に考え、活動していきたいと考えています。

嶺北の県職員が見つけた違いのグラデーション

私は、2年前の春、初めて嶺南に勤務することになりました。
県職員として勤務して30年超になりますので、嶺南のことだって何でも知っていますという意識でいました。

県の仕事は福井県全体が対象なので、福井県全体の振興・発展、県民益の向上がミッションですし、17あるすべての市や町のことを知り、分け隔てなく均等に施策を実施する必要があります。
そのため、嶺北、嶺南といっても同じもの、同じにしないといけないという意識が強かったと思います。

強いて言えば、嶺南は嶺北と比べるとちょっと人がおっとりしていて、海が多くて、原発もあって…というイメージがあったくらいでした。

しかし、嶺南勤務になってしばらくして、同じ時期に嶺北から異動になった職員が言いました。

「こっちの山って色がちがいますね」

山なんていっしょじゃん。緑の濃いか薄いか。

でも、言われて山を見ると、ああ確かに。

写真では分かりづらいですが、嶺北で見慣れている山は杉を中心に整然と同じ樹木が並んでいるイメージ。
でも嶺南の山は、植林されているところは少なくて、山全体が原生林のよう。(もちろんいろんな樹種が植生しています)

嶺北の山
嶺南の山

そして、海と山が接近しているので、いつも山が近くにある感じがします。

海もそうです。
嶺北にある県庁からは海は見えませんが、嶺北、嶺南ともに日本海に面していて、
福井県の地図にはつながった海が描かれています。
嶺南は、そのなかの若狭湾に面しているので、越前海岸よりは波は荒くないかな、という認識でした。

ある日、敦賀市から小浜市へ移動した際、
あれっ?同じ日なのに海の色が違う、と思いました。
小浜市と高浜町の海の色も違います。

そのことを地元の人に話したら、「そりゃそうだろ」と、
こいつは何を言っているんだという顔をされてしまいました。

また、福井の名物の一つに“おろしそば”があります。
大根おろしとだしをかけ、かつお節とネギをのせた、嶺北では定番のグルメです。

でも、嶺南ではおろしをぶっかけて食べる文化はありません。
小浜の人に言わせると、あれは土地がやせていた嶺北の食べ物、だそうで。

小浜ではつい最近まで“そうめん”を製造していたそうです。(今年初めて知りました)
北前船の荷としてそうめんを製造しており、そうめんの株仲間(商人たちの組織)があり、株仲間一同で神社に寄進した文書が残っています。

神社に寄進された文書

滋賀の長浜や朽木には“鯖そうめん”という料理があります。
かつて、小浜からは鯖街道を経由して京都に鯖などの海産物が運ばれていましたが、そうめんも運ばれていて、途中で一緒に鯖と一緒に煮た料理なんではないかと勝手に思っています。(あくまで小林説です。)

言葉もそうです。
嶺北はもちろん、嶺南のなかでも市町によってイントネーションが違います。
文化の違いと片付けるのは簡単ですが、こんなに多様なものがあるのかと思います。

WAKASA発掘調査隊で発掘しているものは、
地元では普通のことかもしれませんが、
移住者やよそ者からみると、非日常なことばかりです。
おまけに、なが~い歴史に育まれた背景がすごい!

私は毎回「あれ、これ違う」「こんなことするんだ」
という異文化の世界に放り込まれた感覚になり、
発見、オドロキの連続の日々を送っています。

嶺北とは違う特性やカラー、これを風土というのかもしれませんが、
それに6市町ごとに少しづつ違いのグラデーションが加えられた特徴が
嶺南地域の素晴らしい魅力であると感じています。

県職員はどうしても福井県という枠に入れようとしてしまいますが、
全体を均等に取り扱うことで、それぞれの魅力をうすっぺら~くしていたのかもしれません。

これからは、この特徴を描き出していくことが大切なのだと思います。
時には、嶺北VS嶺南や、嶺南6市町自慢大会なんてことをやってもよいかもしれません。

小さな地域で行われているその土地では普通の、でも不思議なことを、
他の地域の人だけでなく、住んでいる人たちに、もっともっと知ってもらいたいと思います。
だってこんなに個性的で素敵なヒトやモノがあふれているのですから。

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