【エッセイ】違います。好きなのであって、詳しいわけではないんです。
「人生で一番好きな映画は?」「今まで読んだ漫画の中でベスト1は?」「面白いと思った小説は?」
これらは、人と仲良くなるため、その人を知るための会話をする時に聞かれがち、言いがちな質問だが、あまり好きではない。
正確には、これらの質問に対するいい感じの返答が得意ではないと言う方が正しい。
人間誰しも、ひとつくらい好きな映画やドラマ、漫画、アニメ、小説、演劇などのエンタメ作品はあるもの。
作品に限らず、好きな俳優や芸人、劇団、アーティスト、アイドルなど、ひとりくらいはいるものだ。
また、エンタメに関連することではなくても、好きなアスリートやスポーツチームがある人も数多くいるのは間違いない。
何がきっかけでその作品を好きになるのかは、当然人それぞれだが、何かを好きになるきっかけなんて、些細な理由だったりするものだ。
ただ、好きになったエンタメ、好きな作品を人に言うのは、自分の中で割とハードルが高いことである。
一番好きな映画や漫画、アニメなどを聞かれると、正直、本当に困るし、悩んでしまう。
自分の中でなんとなくのランキングはあるからすぐに答えることは可能だし、聞いてる方も、あくまでも一会話のきっかけにすぎないというのも、頭ではわかっているのだが、余計なことをつい考えてしまい、エンタメ作品のことを聞かれているのに、エンタメで返せない自分がいる。
半ば逆ギレ感も否めないが、そもそも、一番好きな映画や漫画、アニメなんかを聞いてくる人は、自分の中に確固としたナンバー1作品があるから他人にもそれを求める人か、そこまでエンタメに興味がない人、エンタメに対するデリカシーがない人であると思っている。
とは言いつつ、好きな映画の話やハマってるアニメ、オススメしたい漫画の話をするのは好きであり、飲み会の会話の中心はこれだけでいいとさえ思っている。
あくまでも、ランキング付けしたエンタメ作品を人に話すのが好きではない、得意ではないということ。
なぜ、好きではないのか。それは、“好きであること=詳しいこと”と勘違いする人がいるからだ。
過去に、好きな映画や漫画なんかの話をしている時に、同じ作品が好きなのにも関わらず、「そんなこともわからないの」や「それ知らずに見てたの!?」などの知識マウントをとられたことがある。
自分自身、好きな作品のキャラの名前や技名などがわからない人に対し、指摘してしまったことはあるし、誰かから似たようなことを言われたことがある人は少なくないだろう。
同じ作品が好きという、本来ベクトルは同じはずなのに、なぜ、こんなことが起きるのか、言ってしまうのか。
人は無意識のうちに、自分の好き度合い、好きレベルと比べてしまいがちな気がする。
自分はこんなに好きで、これだけのことを知っている、これくらいの知識がないと好きとは言えないというような、その作品に対する、“好きのものさし”を作ってしまうのかもしれない。
だから、自分の好きのものさしよりも短い人には、上から目線の態度をとってしまうことがあるのだろう。
もちろん、詳しいことに越したことはないし、いろんな知識や情報を知っていれば、よりその作品への造詣が深まり、楽しむ幅も広がるのは間違いない。
それでも、「名前はわからないけどこのキャラがかっこいい」、「この台詞が心に響いた」、「ストーリーはうろ覚えだけど、バトルシーンがヤバかった」など、例えどんなに細かなものでさえ、その作品の好きなところが一つでもあるのなら、大手を振って『好き!』と言っていいはずなのである。
とはいえ、好きと言った後に知識マウントをとられるのも傷つくし、その作品に対するミニクイズ大会が始まるのも嫌。クイズということは、勝者と敗者が決まるまでは終わらないものである。
好きな作品の話をして、マイナスな方へ心を揺さぶられるのはまっぴらごめんだ。
だから、好きなエンタメ作品を話した後、できれば、「好きなのであって、詳しいわけではないんです」と注釈を入れたい。
でも、そんなことを言ったら、なんか言い訳じみているし、あからさまに会話をシャットアウトしている感も出てしまう。
「一番好きな〇〇は?」に対するベストアンサーを見つけるのが、人生の中の課題の一つになりそうだ。
その答え探しのため……だけではないが、一番好きな作品を聞かれた時に、即答できるくらいの人生ベスト1の作品が見つけられるよう、これからも数多くの作品との出会いを心待ちにして、エンタメの海にダイブして、深く潜っていきたい。
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