仮想通貨は金脈のない国で金を掘れる技術だ
一時期脚光を浴びたビットコイン、仮想通貨。最近はずいぶんと下火になってきているように感じますが、仮想通貨に関わる技術自体の価値が無くなったという訳ではありません。今回はその仮想通貨の価値について、私なりにまとめてみようと思います。
ちなみにその仕組みから暗号資産と呼ばれることもあるそうですが、この記事では仮想通貨と呼ばせていただきます。
1 仮想通貨は金脈のない国で金を掘れる技術
皆さんは仮想通貨と聞いて何を考えますか?真っ先に思い浮かぶのはきっと資産運用でしょう。ビットコインが上がった、暴落したと一時期話題になっていたことがありましたね。このように仮想通貨には資産としての価値があります。
次に資産と言ったら皆さんは何が思い浮かぶでしょう。株でしょうか。はたまた国債、もしくは土地でしょうか。ここでは安全資産の代表格とも言われる金を例に話してみたいと思います。(金が本当に安全資産かは諸説ありますが、価値が失われないという意味で安全資産とさせていただきます。)
金は大昔から資産として、通貨として、大きな役割を果たしてきました。その背景には様々な金の特性があります。例を挙げれば以下の通りです。
1.産出量が少ない
2.変質しない、失われない
3.偽造されない
1については皆さん直感的にわかると思います。金は貴金属に含まれますから。そしてこの珍しさが価値になるわけです。
2についても大体分かっていただけると思います。金は非常に安定で、長い期間輝きを失いません。金は塩酸や硫酸、硝酸でも溶かすことができない、非常にタフな物質です。鉄のように錆びてボロボロに砕け散ってしまうなんてこともありません。この変質しない、失われない特性のために、資産としての安全性が生まれてくるわけですね。
とは言っても偽造されたものが出てきてしまえば信用は落ち、資産としての価値は無くなってしまいます。ですから偽造されやすいものではダメなのです。しかし金は密度がとても大きいという特徴があり、例えば銀などの混ぜ物をすると(見た目の違いはとても小さいですが)かなり軽くなってしまうのです。これが3ですね。
このように金には安全資産としての資質が備わっています。
そしてこれは仮想通貨にも当てはまるのです。
その理由については後ほど話していきます。
さらに特筆すべきは、仮想通貨は仮想なので世界中どこでも発行できるというところです。(だったら希少価値がないじゃないかと思うでしょうが、後ほど話すので焦らずにお願いします。)
つまり仮想通貨とは金脈がない国でも金を掘り出せる魔法の技術なのです。
2.そもそも仮想通貨って何?電子マネーとは違うの?
さて、なぜ仮想通貨に安全資産の素質があるのかを話すには、そもそも仮想通貨がどんなものであるかを話す必要があります。その話をしていきますので、つまらないとは思いますがちょっと頑張って読んでください。とても大事な部分です。
まず前提ですが、電子マネーと仮想通貨は全くの別物です。電子マネーはそのサービスを提供している会社が中央のサーバーを持ち、そのサーバーと個人の端末、お店の端末がやり取りすることによって取引を行うものです。
例えるならそうですね、地域バザーのお買い物券をバザーの運営から買って、それを使って買い物をするイメージでしょうか。これには運営の信用が必要ですし、偽造されないための工夫が大切になってきます。
これに対して仮想通貨は中央のサーバを持っていません。ではどうやって仮想通貨は信頼を得て、公正な取引が行われるのでしょう。その秘密はブロックチェーンという技術にあります。
3.ブロックチェーンって何?
ブロックチェーンというのは名前通り、ブロックがチェーン状に連なったものです。このブロック一つ一つに、どのような取引が行われたかが記録されていきます。そしてその取引がどういうものだったかを数値化し作られた鍵穴(ハッシュ値と言います)とそれに合う鍵(ナンス値と言います)を生成して次のブロックへ移ります。
ところでこの鍵を作るときに膨大な計算量が必要になります。というのもこの鍵は鍵穴に対して総当たりではめ込んでみて合うか調べなくてはならないからです。なんとそのパターン数は10の77乗以上!1京が10の16乗なのでとんでもない量だということがわかるでしょう。
もしこの中で取引の改ざんが行われたらどうなるでしょう。取引内容が変わってしまうので鍵穴が別の形にひしゃげてしまいます。すると作った鍵と合わなくなってしまうので、改ざんが行われたことがすぐにバレてしまうのです。では鍵の方も改ざんすれば良いのでは?思い出してください。鍵の作成には10の77乗以上の総当たりが必要なのです。
しかしここで一つ疑問が浮かびます。正しい方の取引の鍵は誰が総当たりしているの?と。そこで出てくるのが分散コンピューティングという考え方です。
各々が持っているコンピュータはインターネットで繋がれています。このインターネットに繋がっているコンピュータたちですが、ずーっと動いているわけではありません。仕事中や寝ている時、食事の時などはパソコンから離れるでしょう。そこでこの使われていない時間を利用し、みんなにちょっとずつ計算してもらうのです。ちりも積もればなんとやらで、これで10の77乗の総当たりを突破できましたとさ。めでたしめでたし。
でもちょっと待ってください。いくらパソコンを使ってない時間にやってくれると言っても電気代やら何やらはかかるわけです。それを善意のみでやってくれる人はそんなに多くはいません。ですから、各々が計算して貢献した度合いに合わせて、仮想通貨の発行という形で報酬が支払われるようになっています。
ちなみに仮想通貨が発行されるタイミングはここだけで、計算をして報酬をもらう行為をマイニングと言います。まさに金の採掘ですね。
分散コンピューティングの利点は計算速度を上げられるだけではありません。このやり方では各々のコンピュータがちょっとずつ処理を行なっているため、中央サーバーが存在しないのです。中央サーバーが無いとどんな利点があるかと言うと、例えば震災などでコンピュータが一部ダウンしても、他のコンピュータたちで補うことができるのです。このため中央サーバーを持つ電子マネーに比べて災害に強く、仮想通貨自体が失われることが無いのです。
以上の説明で 2.変質しない、失われない 3.偽造されない について分かってもらえたでしょうか。加えて 1.産出量が少ない についても、仮想通貨を発行するにはたくさんの計算をして貢献しないといけないという話で理解してもらえるでしょう。
このように仮想通貨には安全資産としての資質が備わっているのです。
4.仮想通貨にはこんなメリットも
仮想通貨は先ほど話したように改ざんできません。また、すべてのやり取りがどこかのブロックに必ず残っています。つまりどれだけのお金を動かしたかが一目瞭然となるわけですね。これに対してプライバシーの侵害だとかいう人もいるかもしれませんが、それ以上にマネーロンダリングに使えないというメリットを与えてくれるわけです。
ご存じない方のために軽く説明しますと、マネーロンダリングとは違法なことなどをして得た表に出せないお金を、秘匿に特定の金融を介すことで表に出せるお金に変える行為のことです。仮想通貨では取引がすべて書き残されているため、当然これができません。つまり仮想通貨が台頭してくれば、世の中のよくないお金の動きが抑制されるということです。
ただやはりプライバシーの問題は無視できないので、そこら辺を改良した仮想通貨の開発なんかも進んでいるらしいです。
5.まとめと仮想通貨の現状
今回の記事で、仮想通貨で使われているブロックチェーンという技術はかなり安全性が高いことが分かってもらえたと思います。これは単純に通貨だけでなく、様々な取引に有用に使えるということでもあります。取引に限らず、もっと想像を超えた使われ方をするかもしれません。
ですが現状ではビットコインが暴落しただの話題に上がるほどで、とても安全と言えるものには見えません。得体の知れない投機の会場という見方が一般的でしょう。これは本当に残念なことですが、仮想通貨について一般層に広く知識が行き届いていないことが原因だと思っています。安全資産の資質があるということを十分に理解されていないために、日和見の投機が起こるのです。
ですのでこういう情報をしっかりと広めていき、仮想通貨は安全資産としての資質があるんだという認識が広まっていけばいいなと思います。
この素晴らしい仮想通貨の技術が、ただの投機のオモチャではなく、もっと社会のためになる方法で世界に浸透していくことを切に願っています。
6.参考文献
ブロックチェーンの仕組みなどを理解するに当たり、以下のページを参考にさせていただきました。ありがとうございます。
ここには載っていない面白い話(ブロックチェーンがどこに使われているか等)もあるので、興味があれば目を通すことをお勧めします。
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