ネットニュースになった風俗嬢のその後
ご縁があって、日刊SPA! に取り上げていただきました。
「超エリート進学校」出身の、えっちなおねえさんです。
お店の中では、毎月のランキングが2~7位あたりをうろついています。
そんな「普通」の風俗嬢の、非日常体験記です。
睡眠障害を抱え、辞め(させられ)た正社員の方の職を探す風俗嬢の朝は、少しだけ遅い。
8時にアラームを鳴らすと9時には起きられるが、頭がぱやぱやとしてしまう。
ぱやぱやの頭で家事をしながら目を覚まし、都内某所のカフェに向かう。
今日の予定はこれと就活講座と出勤。
本指名様からのご予約をいただいている。
必要とされるのは嬉しくてありがたい。
「はじめまして。わかなと申します」
◆◇◆◇◆
わかなとして初めて受ける取材で、普段お客様に話すことも、話さないことも、たくさん話した。
職業・えっちなおねえさんは、職業・聞くおにいさん相手に、たくさんたくさんお話をした。
あまりにもわたしがたくさんのことを話すせいで、記事が5本になってしまうのではないかと思ったほどだ。
わたしには、性への執着がこれほどにもある一方で、生への執着がとことんない。誰かと仲良くなりたくて、仲良くなれるのが心から嬉しくて、楽しい。
業界を心から楽しめることが、頭や心がおかしい証拠なんじゃないかと感じたことは、正直何度もある。
でも、誰かに迷惑をかけていないのならば、おかしいままだとしても問題ないわけで。
わたしはひとり暮らしを始めてから、実家とは連絡をほとんど取らないようにして、絶縁を試みているし。
それでも、とにかく、わたしは。
風俗嬢として過ごす日々が、心の底から大好きだ。
実は結構好きなのがプレイ後の会話……って言ったら、「性豪じゃない」なんて怒られてしまうだろうか。
出会ってすぐ恥ずかしいことをたくさんしてから出してくれる言葉が、他人だったわたしに言葉を向けてくれるひとときが、愛おしい。
いつか風俗嬢を辞めたとき、何を拠り所にするのかまだわかっていないほど、この日々を愛している。
風俗嬢を1年間みっちり楽しみすぎたせいで、風俗業界以外の交友関係が、全部途絶えてしまうほどに。
◇◆◇◆◇
その日のうちに、原稿案を読ませていただいた。
お恥ずかしながら、「わたし」だ。
他人の前で脱ぐより、恥ずかしい。
わかなのお客様は、どう思うのかしら。
それでも、また会ってくれるかしら。
これで縁が途切れてしまうなら、「友達」になれないと思われてしまうのなら、仕方ないんだけれども。
公開日まで、ずっとお腹が壊れていた。
「友達」に嫌われるのが、怖かった。
空っぽが埋まらないことが、ばれてしまう。
もう、可哀想と言われたくはない。
◇◆◇◆◇
いい目覚めではなかったが、睡眠障害を悪化させて以降初めて、朝9時にパッと起きた。
匿名の心ない言葉に少しばかり傷ついたものの、わたしを一途に応援し続ける本指名様の言葉に救われた。
「会いたくなりました」
「変わらず仲良くできますよ」
「今までの人は離れないだろう」
「大体知ってる話だったなあ」
たくさんのマイガール登録とアクセス、問い合わせと予約。
同じお店の女の子やお客様からの「生きててよかった」の言葉。
ネット記事から興味を持って会いに来るお兄さまの体温。
最終面接を受けた企業からの不採用連絡。
実名のわたしは、ブラック企業に疲弊して身体を壊した第二新卒でしかないから。まだ頑張らなきゃね。
「えっちなおねえさん」としての繋がりがあるから、社会でなんとかやっていく努力ができる。
役割があれば仲良くなる工夫ができる。「ひとりじゃない」状態にできる。不器用なりの、泥臭いライフハックだ。
特別な日に食べるような美味しいお寿司を頬張る。
わたしは、ここで生きている。