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映画日記①1/1~1/9『時々、私は考える』など6作品

2024年は、映画やドラマを楽しめた1年だった。

たくさん観たというわけではないけれど、映画通の友人ができたり、おすすめを教えてもらったり、海外俳優に少しの時間対面できたりと、ほどよく刺激を受けたと思う。

「2025年は1日1つ映画を観る!」と決意したが、6日目にさっそく観られなかった。観るつもりではあったのだけど、家族のケアが必要になり余裕がなかったため。

でも結果的に「いつ、この自分ルールを破ってしまうか」とドキドキしなくなったし、もちろん家族も回復してきたのだから、よかったのかもしれない。

1~2週間に1回は、noteに感想を綴っていこうと思う。映画好きの方、私のように色々観ようと思っている方などの目にとまったら嬉しい。

なお、記事のタイトルには、その週に観たなかで自分が一番好きな作品、今後も観なおすだろうという作品のタイトルを入れていくことにする。

『PERFECT DAYS』(2023年12月公開)

1月1日~9日で観たのは6作品。最初に観たのは、Wim Wenders(ヴィム・ヴェンダース)監督作品の『PERFECT DAYS』だった。

東京・渋谷でトイレ清掃員として働く平山(役所広司)。私がこの人物について一番心に残っているのは、いつも小さく人を救い、そして彼も小さく救われているということ。

繰り返しのように見える日常に、繰り返しではない何かが生まれるたび、目を細めて喜びを感じる平山は、人からどう扱われても、心の奥底に守られている部分がある。

最初は台詞がほとんどなく、役所広司さんの所作や表情を味わう時間が快い。

平山はきっと、いつも聴く洋楽の歌詞を全て理解しているのだろう。

生きることは美しくて、痛みはあって、それでもやはり美しい。ただ「毎日を真面目に、丁寧に過ごしましょう」というまなざしでは作られていない、生きることについて真摯に向き合われた作品だと感じた。

また時々観なおして、そのときの自分が何を感じるか知りたい。


『PAST LIVES』(2024年4月公開)

Celine Song(セリーヌ・ソン)監督作品の『Past Lives』。

登場人物たちの関係性をめぐる視点だけでなく、言語の違いという観点から観てもおもしろい作品だった。

※以下、具体的なシーンや最後について書くのでネタバレになりそうです。観る予定のある方はご注意を……。


ヘソンと再会して帰宅したノラが、彼と過ごしていた妙な感覚について、アーサーに英語で話す。

その話しぶりはとても説明的で、感じたことを隈なく言葉にするさまは、感覚について話しているものの論理的にすら感じられる。

一方、ヘソンとの会話で韓国語を話す彼女は、口数が少ない。もちろん、12歳から英語圏で生活してきた彼女にとって、韓国語はもはや母親とヘソンとして使わない言語になったからという理由もあるかもしれない。

それでも、言語より表情で語り合うノラとヘソンの姿は印象的だった。

アーサーも非常に魅力的な登場人物。知性も感性も高い彼が、ノラの寝言と彼が韓国語を学び始めた理由を話す場面は、この作品のなかで一番好きだ。

全体を通じて、とても味わい深い作品だったのだけれど、最後にノラが泣くシーンだけは、意識が少しだけ現実に引き戻されてしまった。

私なら(映画を作ったことがないただの素人だけれど)、アーサーの肩にノラが頭を落として、しばらく動けない……という最後にすると思う。

……と最初は思ったのだが、振り返ってみれば、幼少期のノラは泣き虫だったわけで、成長するにつれてその性分を押し殺してきたという解釈をするのであれば、(個人的に惜しくはあるが)あそこで泣くことは自然なのかもしれない。

鑑賞後も、心と頭の両方が満たされる作品だった。


『陪審員2審』(2024年12月配信開始)

U-NEXTで独占配信中の『陪審員2審』。Clint Eastwood(クリント・イーストウッド)監督の最新作とのことで、これを観るためにU-NEXTにお試し加入してみた。

ネタバレしないように書きたいが、私の力量では何を書いてもネタバレになりそう。

でもひとつだけここに書くなら、「善人ではあるが、聖人ではない」人間の姿を描いた作品だと感じた。

鑑賞中に何を考え、何を予想し、何が予想と違ったか、あるいは予想通りだったかなど、観た人と語りあいたい。


『時々、私は考える』(2024年7月公開)

Rachel Lambert(レイチェル・ランバート)監督作品の『時々、私は考える』。この作品が、年始にみた作品のなかで一番のお気に入りとなり、人生初のブルーレイディスクまで買ってしまった。

彼女の空想癖について、何を空想するのかが原題ではズバリ示されている。けれど、私はこの邦題が好きだ。

原題とそっくり同じにしてしまうことによるデメリットを回避する、という意図かもしれないが、それ以上に、この日本語タイトルこそが作品の空気感を表現できているのではないかと思う。

自分なりに満足して生きている、でも人には言えない自分もいる。フランの姿に、共感する人が結構いるのではないかと私は思うし、そう信じたい。

観ている途中にちょっと面白く感じたのは、「片隅のキャラ」のように描かれているフランだけれど、どのシーンを撮るにも役者の皆さんはフランが主人公ということを理解しながら演じているんだよなということ。

職場のメンバーそれぞれにおかしさがあって、最後には意外な人物の台詞に胸をうたれて。まさしくドラマだと思うけれど、ドラマチックではないところが粋だと思う。

『コンパートメント No.6』(2023年2月公開)

Juho Kuosmanen(ユホ・クオスマネン)監督作品の『コンパートメント No.6』。

愛情とは何か、心に残る時間とは何かを考えなおすきっかけになった作品。

リョーハは、何度聞いても「ペトログリフ」を覚えられないが、それを見に来たラウラのために、何としてでも目的を果たす手伝いをしようとする。

自分には良さが分からなくても、相手にとって大事なら大事にする。そういう彼は、粗野でも愛情深い人なのだろう。彼自身はそんなふうに形容されるのを嫌がるだろうけれど。

ロシアの厳しい風雪は見ているだけで凍えそうだけれど、心はじわじわとあたたまっていった。


『枯れ葉』(2023年12月公開)

Aki Kaurismaki(アキ・カウリスマキ)監督作品の『枯れ葉』。映画館で上映されていたとき、少し気になったが結局観にいかなかった。

理不尽な理由で職を失ったアンサ、彼女が纏うなんともいえない空気感が印象的だった。

悲壮ではなく、明るくもなく、淡々と生きている。とはいえ、心の中まで淡々としているわけではないのだろう。常に世界や自分のことを考えているように思える。

おしゃれで、綺麗で、かっこいい世界のすぐ隣に、日々を淡々と、どうにか生きている人たちがいる。

それがこの作品から主に感じたことなのだけれど、カウリスマキ監督の作品には、「労働者三部作」「敗者三部作」なる作品群があるらしい。

アンサやホラッパと通じる何かを感じさせるキャラクターたちが、まだまだ観られそう。カウリスマキ作品を少しずつ観ていくのも、また楽しいかもしれない。


やや短くて、静かな作品を観たかった

2025年のはじまりは、80分間~124分間の6作品を鑑賞。普段はド派手なアクションものや壮大なファンタジー作品も大好きなのだけれど、なぜかこの年始は静かな映画が観たかった。

「毎日映画を観る!」という目標を掲げたうえで、少し短めで、静かな映画を観たことは正解だったように思う。超大作も素晴らしいけれど、続くと3日目でバテていたかもしれない。

これまで私は「数を多く」ということが、映画鑑賞に限らず得意ではなかった。何を目標にするにしても、熱しやすく冷めやすいし、映画やドラマ、小説は「話題作」と聞くとなぜか近寄りたくなくなる。

けれど、映画に関しては、たくさん観ることを心がけてみてもいいかもしれない。そう思ったのは、自分の毎日を生きるなかで、ふと思い出す世界の数が多ければ、生きるのがもっと興味深くなりそうだから。

たくさん観て、たくさん感じて、深く考える。そんな1年にしたい。





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あおやぎ
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