「素敵」しか言えない理由
教育実習をしていた時期、指導教官から色々とフィードバックをいただいた。
なかでも印象的というか、ややコンプレックスに感じるのは「褒めるのが下手」という言葉。
たしかに子どもに限らず、友人に対してもなかなか褒めるということができない。
「いいね!」とパッと明るく褒めるのに少し迷いがある。
それは今でもあまり変わっていないけれど、ここ2年くらいはちょっとちがう意識を持つようになっている。
「素敵」の意味を知っていますか?
あおやぎさん、「素敵」って言葉の意味を考えたことはありますか。
広島出張に行っていたとき、運転席に座るその人は言った。
助手席にいた私は「さあ…よく使いますけど、そういえばどういう意味なんでしょう」と答えた。
素敵っていうのはね、「素晴らしくて敵(かな)わない」ってことなんですよ。
正確じゃないかもしれないけれど、僕はそう思ってるんです。
素晴らしくて、敵わない。
妙に納得感があった。
あおやぎさんが初めてうちの事務所に来た時、僕は奥のほうにいたんですけど、覚えていますか。
正直全然覚えていなかったのだが、わたしはその方に挨拶するために、遠回りしてその席まで歩いて行ったのだという。
僕はその時の会議に出席するわけでもなかったし、また後日挨拶してくれてもよかったわけですが、それでもあおやぎさんはこっちに来て目を見て挨拶してくれたんですよ。
そんなことを覚えていてくれたのか、とわたしは驚いた。
たしか行きの新幹線で先輩から「ちょっと最初は厳しくて怖いと感じるかもしれないけれど、大丈夫だから」というようなことを言われていた。
だから、視界の端にその方を捉えたとき、真っ先に挨拶したくなったのだと思う。これからよろしくお願いします、と早く言いたくて。
僕はそのときね、「ああ、敵わないなあ」と思ったんですよ。
だから、僕はあおやぎさんのことを「素敵」だと思ってるんです。
そんなふうに言ってくれるなんて予想外で、でもなんだか嬉しかった。
ほかに言葉があったとしても
今の話は2年くらい前のことだった。
それからわたしは「素敵」という言葉をよく使っている気がする。
なにがなんとかでここが良くて、と言葉を尽くして相手に伝えたいときもあるけれど、無理にそうしなくてもいいんじゃないか。
素晴らしくて敵わない。ほんとに、いいなあ。
そう思ったら迷わず「素敵ですね」と口にする。
簡単で、曖昧かもしれない。
それでも、使う言葉の意味はわたしのほうに委ねられているのだ。
でもできれば「素敵」と言う意味を、その人に伝えられたらいいなと最近は思っている。
一方的に評価するわけでなく、羨むでもなく、まっすぐな目でみる気持ち。目の前のものや相手に対して、「素晴らしい」と感じる気持ち。
「素敵、しか言えないなあ」と自分の語彙力をさみしく思うこともあるけれど、これはこれでいい言葉だなと思うのだ。
今日はどんな「素敵」に出会うだろうか。
楽しみに生きる毎日でありたい。