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最低賃金の男女平等?はて?

「年収の壁」の金額は、103万円、106万円、130万円、150万円といくつもある。

ややこしいが、この中の第3号被保険者の「年収106万円の壁」「年収130万円の壁」から逆算して時給を計算し、平均給料・手当から逆算した時給、および最低賃金と比較を試みた。

「年収の壁」が、第3号被保険者以外の第1号被保険者や第2号被保険者の女性の賃金にも影響していること、および女性の賃金には、年齢、学歴、キャリアや資格などが反映されず、ただ、年収の壁と労働時間に基づくものであることを示せないだろうかと考えたためだ。

だが、その結果は、意外なものだった。

なぜこんな簡単なことに今まで誰も気づかなかったのだろう。

第3号被保険者や被保険者の条件は、「日本年金機構」HPを参照
日本年金機構HP
年金用語集〉た行〉た行 第3号被保険者
年金Q&A〉国民年金の「第1号被保険者」、「第3号被保険者」とは何ですか。


第3号被保険者について

主な要件

 ・厚生年金に加入している第2号被保険者に扶養されている20歳以上60歳  
  未満の配偶者
 ・年収が130万円未満かつ配偶者の年収の2分の1未満
    ・週所定労働時間 20時間未満
 ・所定内賃金   月額8.8万円未満

第3号被保険者の人数と男女比率(令和4年3月末現在)

第94回社会保障審議会年金数理部会 資料2 令和3年度財政状況 ―国民年金・基礎年金制度― P10

・女性比率は約98%、7,508千人(令和4年3月末時点)、ほぼ女性
・別名「専業主婦優遇の制度」
・実際は、「専業主婦」と、扶養の範囲で働く「短時間労働者の主婦」で構成されている

各種時給比較

 【計算条件】
・1年間の週数 :365日÷7日≒52週、
・年労働時間:週20時間×52週=1,040時間 (第3号被保険者の場合)
                          週40時間×52週=2,080時間 (法定労働時間の週40時間)         ・小数点以下四捨五入


1.「年金の壁」から逆算した時給

年金の壁の金額、所定内賃金より算出した時給・週給・月給

2.平均給料・手当から逆算した時給

令和6年9月 国税庁 報道発表資料 「令和5年分民間給与実態統計調査について」 より作成

3.最低賃金

厚生労働省HP 地域別最低賃金の全国一覧より

4.まとめ・比較表

上記より検討した結果

「年収の壁」の時給の要素は「年収の壁」の金額と「労働時間」

∴第3号被保険者の賃金の決定要因には「キャリア」を反映する要素がない。

社会保障制度上の年収の男女比、世帯年収

・第3号被保険者の年収要件
 ①年収が130万円未満
 ②かつ配偶者の年収の2分の1未満

∴上記②より、社会保障制度の規定では、
・夫(=第2号被保険者)の年収は、
 「短時間労働者の妻」(=第3号被保険者)の2倍、
・男女比=2:1

∴上記①②より、
・「短時間労働者の妻」の年収が130万円の場合、夫の年収は260万円以上。
 →夫:妻=2:1
 →社会保障制度上、世帯年収は130万円+260万円=390万円以上と想定
・したがって、妻が無収入の専業主婦の場合、夫の年収は390万円(=130万円×3)以上
 →夫:妻=3:0

「4.まとめ・比較表」から

・「年収の壁」の1,019円、1,250円、1,100円と、女性の「平均給料・手当」1,308円は、手当分を考慮すると、ほぼ同水準。
∴第3号被保険者の「年収の壁」は、第1号・第2号被保険者の女性の賃金にも影響しているのではないか?

・「男性の平均給料・手当」2,288円は「女性の平均給料・手当」1,308円
の約1.8倍、
男女比=約2:1
∴社会保障制度上の規定の男女比とほぼ一致している。

・「最低賃金」951円~1,163円も「年収の壁」及び「女性の平均給料・手当」と同水準
∴「最低賃金」も第3号被保険者の「年収の壁」の影響があるといえるのではないか?

ん❓ちょっとまてよ❓

なんで「最低賃金」には、男女の区別も被保険者の種別もないの?
⇒なんで社会保障制度では、「短時間労働者の妻」を扶養する夫の年収は妻の2倍なのに、なぜ「最低賃金」は男女平等なの?

Q.「扶養する人」と「扶養される人」の最低賃金が同じでいいの?
⇒世帯年収が390万円以上(130万円×2)必要とするなら、妻が、出産・子育て・夫の転勤などで退職して年収がゼロになる可能性を考えると、
男性の年収が260万円(=130万円×2)では、世帯が維持できないのでは?
結婚も出産もむずかしくない?

Q.単純化すると、こういうこと?
 社会保障制度     夫3:妻0=夫390万:妻0
        または 夫2:妻1=夫260万:妻130万
 均等法       「男性1:女性1」を推進

均等法・第3号被保険者制度は1986年に同時に始まった。
⇒「雇用機会と待遇の男女平等」を推進する一方、
社会保障制度で、結婚後の男女の年収比を不均等のまま固定。

そのため、本来想定していた「均等」とは異なり、年月の経過とともに、以下のような「社会保障制度上の不均等な年収比」ごとに分岐した「男女同一待遇・同一賃金」になっていったのでは?

①上記例、年収390万円水準の男女の第2号被保険者⇒いわゆる「総合職」
②上記例、年収260万円水準の男女の第2号被保険者⇒いわゆる「一般職」
③最低賃金が、性別や被保険者種別に関わらず、「扶養される人」である第3号被保険者の水準になった。

結論
「年収の壁」は男性の賃金水準も「扶養される人」レベルに低下させてしまい、貧困の原因となった。
第3号被保険者の「年収の壁」を撤廃しても、人手不足は解消されない。
婚姻により賃金が決まる第3号被保険者の制度を段階的に廃止し、社会保障制度により生じている男女間の賃金格差を解消して、最低賃金を「扶養する人」=男性の「平均給与・手当」(この記事中の計算例では2,288円)以上の水準に引き上げることが必要。

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