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外来輸液センター(Outpatient Infusion Center)

私が再生不良性貧血を発症して以来通っている診療科は「血液内科」です。
この診療科は、白血病や悪性リンパ腫を始めとする血液の癌や、骨髄不全が原因の病気、その他の血液疾患を全て治療する診療科です。
そして、「腫瘍内科」と「血液内科」を一つの診療科として「血液・腫瘍内科」としている病院が多いです。
因みに「腫瘍内科」は、胃癌、大腸癌、乳癌を始めとする「固形癌」の「薬物療法(抗がん剤治療)」を行う診療科です。

それ故、私が外来診察に行くと、その科のロビーにいる患者さんの殆どが抗癌剤治療の為に受診に来ている人だったりして、私のように「癌ではない」患者は少ないと看護師が言っていた。
たまに採血後に
「今日は、このあとキモセラピー(抗がん剤治療)ですか?」
と看護師に聞かれることがある。
「いえ、私は癌じゃないので。。。」
という会話を数回した。

外来での抗がん剤治療を始めとする「輸液治療」はどこでするのか?
「外来輸液センター(Outpatient Infusion Center)」
です。

外来輸液センター

大きな部屋に180度リクライニング出来る椅子(まるで飛行機のビジネスクラスのシート)がズラーっと20台並んでいる。その全てにテーブルが付いていて、カーテンで仕切ることが出来るのでプライバシーもある程度守られる。そんな部屋が私の知るだけで3部屋あった。
ここでは、抗癌剤治療だけではなくて輸血やその他の点滴治療が行われている。

そして私は、1月7日に約2年半ぶりにここで輸血をしてきた。

赤血球製剤

輸血をするかしないかは、前日または輸血予定日当日の採血の結果次第。赤血球の血液製剤(赤い血)を輸血する場合、
「ヘモグロビン値6.9以下」
という基準がある。
私が通っている病院は、巨大故に血液検査の結果が出るまでに約2時間かかる。輸血予定日当日の採血となると、腕や手の甲にIVをセットする時に同時に採血。検査結果を2時間待つ。
輸血ということになると、院内の血液センターに赤血球製剤をオーダーする。オーダーを受けた血液センターは、患者個人個人に合わせて血液製剤を調整する。ここでも1時間半から2時間ほど待つ。
そして漸く輸液センターに血液製剤が運ばれて来て輸血が始まる。
輸血は移植の一種だからどんな副反応が出るか分からない。前準備として頭痛薬と抗アレルギー剤を飲まされるけれど、ゆっくり体内に入れていく。赤血球製剤の場合は2時間ほどかけて入れる。

これだけで「約6時間」かかる。
私が通院している病院では、時間短縮の為に現在採血は輸血予定日前日に行っている。それでも4時間はかかるのだけど。
これは輸血の場合です。それも1パックの場合。。これが2パック以上だったり、血小板輸血もすることになればもっと時間はかかる。
抗癌剤治療やその他の点滴も薬の種類に応じて時間は変わってくる。

では、その長時間をどうやって過ごすのか?

私は、IVを左腕や左手の甲に入れられた場合は右手が自由なのでブログの下書きを書いたり、日本語を教える準備をしたり。
右手の甲に入れられるとペンが持てないので、映画やYouTubeを観たり本を読んだり、昼ご飯を食べたりしている。外来輸液センターは長時間の滞在になるから「サンドイッチ弁当」(ハムチーズ、タマゴ、ピーナツバターから選べる。アップルジュース、ビスケット)が貰える。それを食べても良いし、自分でおにぎりとか持って行っても良い。

IV 今回は右手の甲だったので、書く作業は出来なかった。


輸血開始

周りを見渡すと、高齢者の方達は寝ている。それ以外の人達は、殆どの人がラップトップ等を持ち込んで仕事をしている。
平日の日中の時間を数時間病院に留め置かれれば、仕事に支障が出る。それに幸いというか、コロナパンデミック以降リモートワークの環境が整っているので病院でも仕事がしやすい。
リモートで出来ない仕事もあるけれど、皆工夫している。

私の向かい側に座って血小板輸血を受けている人は、逞しい筋肉の持ち主でジムでインストラクターをしていると看護師との会話が聞こえてきた。
その人は、持ち込んだラップトップ(ノートPC)をジムと繋いで遠隔で指導していた。

私の隣の女性は、乳癌の抗がん剤治療中だと私に教えてくれた。腕にPICC(中心静脈カテーテル)が入ってるので点滴の度に針を刺すストレスも無く、比較的自由に腕を動かくすことが出来るから仕事がしやすいと言って、カタカタとキーボードを叩いていたり、オンライン会議に点滴しながら参加していた。
*PICCは、腕の静脈から心臓付近の太い静脈まで細いカテーテルを挿入しておく。必要な時にそこから点滴薬や輸血を入れたり採血をする。その度に針を刺す必要が無い。私も2022年の発病から半年腕に入っていた。

PICCライン:このキャップに輸液や輸血挿入口を差し込むだけ。
毎週消毒に行かなければいけないけれど、私は半年入れっぱなしで生活していた。


私の腕に入っていたPICC
使わないときは、このように。
お風呂に入る時はラップを巻いていた(笑)

さながらここは、どこかの会社のオフィスのようだ。または、ラップトップやiPadを持ち込んで作業をしているどこかのカフェにも見える。
会社やカフェと違うのは、皆がそれぞれ輸血や点滴の管に繋がっている事だけ。
その日そこにいて治療を受けていた多くの人が、スーツやスポーツウェアを着て外来輸液センターにやってきて、治療を受けながら仕事をして、点滴や輸血が終われば仕事に戻ったり、普通の日常生活に戻っていく。それが出来る時は。

「元気に見える」「元気に見えるけれど、普通に仕事もして日常生活が送れているけれど」「辛い治療を日々受けている病人」です。

私はこの日5時間「外来輸液センター」にいた。
そして患者さん達の出入りを見ながら、この人たちは、私と同じように医師から言われるハードな事実に傷つき、受け入れ、前を見て治療を受けながら笑顔で日々の生活を送っているんだろうなとある種の仲間意識が芽生えた。

でも、もう行きたくないや。

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