ココナッツミルク克服のきっかけとなったお店
子供の頃時々出会う、白くてジャリジャリした食感の食べ物があった。私はそれが嫌いだった。ケーキに乗っかっていたり、アイスについていたり、クッキーの中に入っていたりした。でもそれが何だか知らなかったので、時々「あ、これなんか知らないけど嫌いなやつかも」と思っても、とりあえず食べて「うーやっぱり嫌いなやつだった」を繰り返していた。
後に分かったこの白いジャリジャリの正体、それはココナッツだった。存在を知ってからは食感はもちろんのこと、においも、ミルクも見た目も嫌いになった。
その一方で私はアジア系の食べ物が好きだ。ご存じの通り、アジア料理にココナッツは和食と出汁のごとく、ほぼ必須アイテムだ。アジア料理が好きと言いながら顕著なココナッツ系のものはダメだった。例えばタイのグリーンカレー。でも今では好物の一つだ。きっかけを作ってくれたのは六本木の裏通りにひっそりとあるバンコクというタイ料理のお店だ。
以前働いていた職場のまーまー近くにその店はあり、最初は職場の人がランチに連れて行ってくれた。メインの通りをそれなりに歩いて一本中に入って坂を下ったところの地味なビルの二階、なんて、自力で探せるような場所ではない。いつも物腰柔らかなしゅっとしたタイ人のおかあさんがおだやかなほほえみで迎えてくれる。
ココナッツ嫌いの私は最初おとなしくガパオを食べていたのだが、その店はハーフ&ハーフメニューが充実していて、最終的に私の定番メニューはその大好きガパオと苦手グリーンカレーのハーフ&ハーフになるのだ。
いつだったか、一緒にいった人においしいーからちょっと食べてみ、と言われ、「何これ?い、いけるかも。」の瞬間だけは感覚が残っている。じわじわと脳内に刻まれたココナッツミルクまずいの感じが塗り替えられていく、あの感じ、これも何だか憶えている。
タイ料理は行く先々で見つけたらついつい入ってしまうが、このバンコクを超える店には未だ出会えていない。厨房にタイ人が立っていようといなかろうと、料理のコクといい、辛さといい、盛りといい、地味な店内といい、おかあさんのおだやかなほほえみといい、病みつきにさせる何かがこの店にはあった。何か中毒性のものを入れているのではないかと真剣に疑うほど、一時期この店のガパオ&グリーンカレーにはまっていた。
あ、でもタピオカミルクのココナッツミルクはまだ苦手で、このお店のランチについてくるタピオカミルクは、通っているうちにおかあさんが言わずしても外してくれるようになったことを思い出した。。。こんな状態では”克服”とは言わないのかもしれない。更に、あまりにも日常だったので愛しいガパオ&グリーンカレーの写真を一枚も撮っていないことにも気づく。
というわけでトプ画は”また気持ちよく食べに行きたいもんだ”の願いを込めたものにしてみました。六本木バンコク万歳。