A Manual for Cleaning Women: Selected Stories Lucia Berlinを読んでみた。
邦題は『掃除婦のための手引き書 ルシア・ベルリン作品集』。表紙を飾るのは著者のワンショット。このセクシーな妙齢の女性が掃除婦?ど、どういうことだ。思わず手に取っちゃうでしょう。
題名にSelected Storiesとあるように、本書は短編集だ。
内容は全て日常。場面や人がくるくる変わるので、一瞬忘れるが。作者が経験しただろう日常の集まり。
問題ありの親族。3度の結婚&離婚歴。息子が4人。脊柱側湾症に悩まされ、アル中。仕事経験は掃除婦から准教授まで。更に言うと評価を得たのは本人の死後。これだけでもいかに著者の人生が濃厚だったか想像できるだろう。
また父親の仕事の関係で、アラスカ、アイダホ、モンタナなど比較的ワイルド野性味溢れる地域を転々としており、更にメキシコやチリに住んでいたこともあるのでそういった土地の息吹が随所に生々しく感じられる。そしてどこへ行っても人間関係がどっぷりと深いので、日常と言えど、一つ一つのstoryがその場面に立ち会っているかのような、においまで感じそうなくらいなのだ。
表紙の写真は個人的にはいわゆる"奇跡の一枚"と見ているが、この写真が本書の中身を象徴しているような。著者の手にかかれば、人生は、日常は、苦難に満ちていながらも、人と人との関係性であり、自分自身で作るものであり、美しく魅惑的なのだ。そう、一言で言うと、これは人生讃歌。