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短歌往来2023年9月号寄稿13首「母子手帳の代はり」
割引あり
ながらみ書房『短歌往来』2023年9月号掲載作品と、その前身となった15首詠を掲載します。
15首詠の完成後約8ヶ月かけてどのようにそれをアップデートしたのか、
歌を詠む方はどうぞご参照ください。詠まない方も、読み比べてお楽しみくださいね。
短歌往来2023年9月号寄稿13首
「母子手帳の代はり」
梶間和歌
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朝風はさへぎられたり頸すぢに刃を当てゝ組む基礎壁に
安全靴のひゞきに消ゆる潮騒をときどき思ふ七尺脚立のうへ
母子手帳の代はりにラチェットレンチをたづさへてこの国の明日を築きこそゆけ
潮風に髪を打たせむ海いろに溶けゆく空のあを見えぬまゝ
「忙しいマヽのため」てふサインパネルを面ファスナー上下六点で留む
使ひやすきナメ方がある消耗品として割り切るトルクスビットソケットなりけり
あらかたはバラし終へつと顎を拭ひ金曜夜の海にたゞよふ
錆止めを注して眠らす月末のポーチに休む我が工具たち
産むために去りしエナにもカヲルにもその手に馴染み錆びしラチェット
養育費払ふ男も養育をする男らも捌くラチェット
頬を濡らし地組みする手をふと止めつ午前一時の海に呼ばれて
疾く頸に馴らし果てたるポールなり高さいくつでも重くなどない
建てた以上いつかはバラす基礎壁をさりとも建てよガテン系女子
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この作品の前身、15首詠
「代はりのラチェを」
梶間和歌
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