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『生殖の海』 2022年版 第五章「目を開けて」
割引あり
『生殖の海』 2022版 第五章「目を開けて」
橘のにほふあたりのうたゝねは夢もむかしのそでの香ぞする
ASICSの安全靴の紐きと締めつガテン系女子の血よ燃え上がれ
恋はいさラチェットレンチ捌く系女子はオクタノルムを組みバラすのみ
だゞつ広いホールに壁を建てゝゆくこの工程が好きだなにより
天板を跨ぐそれとは反対の脚より駆けよ五尺脚立、七尺脚立
計三社わたり歩いて身を寄せたずつと愛せる場所をもとめて
あの比の上司と違ふちやんと見るつもりで声を掛けた芦沢
下端組むことを地組みと呼ぶこともこの会社にて知る三年目
どつか他社でやつてゐたのと聞かるればえゝあなたよりずつと前から
客対応につれづれなればおのづから考へごとが七五にぞなる
あたしにもわかる企業の金が動くあたしの建てたブースのなかで
社交的だとか人には見られあゝなんて便利だ笑顔てふもの
身に相応ふそを求むればこれも又好きだが合はぬテンションロック
T三十サイズのトルクスビットソケットに合ふはずのテンションロック探しつゞけて
いつか又こゝを去るときさいごまでひとりだつたと思ふのだらう
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五月雨にむかしの袖の香を強み目を開けて見る夢振り払ふ
パシフィコ横浜も東京ビッグサイト、幕張メッセも吹き交はす海風しげし夢はちぎれる
ショートヘアにこだはつてゐたあの比は我れのをんなを舐めきつてゐた
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