雑感:防御としての知識・知恵~ハラスメントを題材に~
どうも!おはようございますからこんばんわ!まで。
ここ最近の日本は本当によくわかんねぇなと思う場面が昔以上にあるような気がしますけど、その時自分自身を守る上での知識を持つことは大切ですよね。今回はハラスメントを題材にして、色々書いてみたいと思います。
1.パワーハラスメント
上記画像は、厚労省がプレスリリースしている資料からの引用です(ちなみに、これは厚労省が運営元となっているあかるい職場応援団というホームページにも掲載されています)。日本においてこの3要素を引き金とした6類型は往々にしてあります。しかし、この線引きは難しい側面もはらんでいます。その一例としてあかるい職場応援団のサイトでも取り上げられていたのが、三洋電機コンシューマエレクトロニクス事件の広島高裁松江支部判決です。
1-1.三洋電機コンシューマエレクトロニクス事件広島高裁松江支部判決
事件の概要は次の通りです。(あかるい職場応援団HPから引用:原文まま)
控訴人YはY社島根工場の半導体製造部門の業績が悪化し、余剰人員が発生したことから、他の部門への生産応援、異動のほか、転進支援制度の緩和等を行っていました。Xもマルチメディア部門に生産応援のため派遣されていたところ、平成18年6月末には同部門も生産終了することとなり、Y社では会社内部での配置換えの他、県外会社への出向等を検討していました。
そのような中、平成18年5月10日、Xは勤務終了後、女子ロッカーにおいて、同僚C、Dに対して「同僚Aが会社のお金を何億も使い込んで、こっちに飛ばされただけぇ、乙山課長も迷惑しとるだけぇ」という旨の話をしたとされます。これを聞きつけたAは事実無根の中傷であるとし、Y会社B課長、人事担当者Y1、Y2等に対して相談を行い、Y1・Y2らが社内調査を行ったところ、同僚C、DからXによる中傷発言があった事が確認されましたが、X本人は事実関係を否定しました。
その後、同年6月16日には、XはY会社取締役Eに対して直接、携帯電話に電話をかけ、以下の申し立てを行いました。①工場においてサンプルの不正出荷をしている社員がいる、②私を不当に辞めさせようと、人事等が圧力をかけてくる、③契約社員を辞めさせようと、県外出向を強要しようとしている、④社員の中には、人事担当者を「ドスで刺す」などの過激な発言をする者がいる等。EはY1に対して、Xからの申立内容を伝えるとともに、Xの話は不適切な内容なのでよく話を聞いて注意するよう伝えました。
Y1らは同日午後4時55分頃にXを人事課会議室に呼び出し、B課長とともに面談を実施したところ、Xは終始ふて腐れたような態度で横を向いていました。これにY1が腹を立て、感情的になり、以下の発言を行ったものです。なおXは同面談時、Y社に無断で当該音声をボイスレコーダーで秘密録音しており、これを裁判所にCD—Rで証拠として提出しています。
①Xが裁判所に訴えると述べたことに対して 「正義心か知らないけども、会社のやることを妨害して何が楽しいんだ。あなたはよかれと思ってやっているかもわからんけども、大変な迷惑だ、会社にとっては。そのことがわからんのか。」
②Xが誹謗中傷の事実を否定したことに対して 「言ったんだ。ちゃんと証拠取れているから。・・もう、出るとこに出ようか。民事に訴えようか。あなたは完全に負けるぞ、名誉毀損で。あなたがやっていることは犯罪だぞ。」
③県外出向の件について 「今回の福知山に行く件は、あなたが一切口を挟まないでくれ。迷惑だ。」
④その他 「前回のことといい、今回のことといい、全体の秩序を乱すような者は要らん。うちは。一切要らん。」・・「何が監督署だ、何が裁判所だ。自分がやっていることを隠しておいて、何が裁判所だ。とぼけんなよ、本当に。俺は絶対、許さんぞ。」「会社がやっていることに対して妨害し。辞めてもらう、そのときは。そういう気持ちで、もう不用意な言動は一切しないでくれ。わかっているのか。わかっているのかって聞いているだろう。」
その後、同年6月21日には、雇用契約期間を1年とする「労働契約書」をXY間で取り交わしたが、同契約に際し、Y2はXの問題行動に対して注意喚起する必要があると考え、「就業規則の懲戒事由に該当する場合は、譴責以上の処分を下す」等と記載した覚書にXの署名捺印を求め、Xもこれに応じました。
またY社は携帯電話製造業務の終了に伴い、Xについても新たな移動先を検討する必要が生じたところ、従前の半導体製造業務は交代制勤務が多く、Xが家族介護のために希望する定時勤務に就くことは困難であったため、Y社はXを清掃業務が主たる目的とするK社に出向させ、同年7月11日よりY会社独身寮の清掃業務に就けることにしました。
同異動までに若干の間隔があいたところ(7月3日~同10日)、Y2はXに就かせる通常の業務がないことと、Xの問題行動に鑑み、次の職場でも問題を起こさせないためにも上記待機期間中、会社会議室において社内規程を精読するよう命じました。
また同年7月11日からXは出向先K社において、寮の清掃業務に従事していましたが、翌年の人事考課の際、3回の評価を行うところ、K社担当者による1次評価Bに対し、3次評価者であるY2は同評価をCとするよう修正依頼を行い、結果的に査定がCとなった結果、各月の基本給額はB評価と比べて3000円ほど低くなりました。
XはY1・Y2およびY社において上記一連の行為が不法行為にあたり損害を受けたと主張し、損害賠償請求を提起したものです。これに対して、1審ではYが「Xの言動に関する誤った理解を前提」に、上記一連の行為を行ったと認定し、これが「全体として、原告の勤務先ないし出向元であることや、その人事担当者であるという優越的地位に乗じて、原告を心理的に追い詰め、長年の勤務先である被告会社の従業員としての地位を根本的に脅かすべき嫌がらせ(いわゆるパワーハラスメント)を構成する」とし、慰謝料300万円をY等がXに支払うよう命じました。これに対して、Y及びY1・Y2が控訴したものです。
実際に1審の鳥取地方裁判所と2審の広島高等裁判所松江支部の判決において共通していたのは、ボイスレコーダーを用いて密かに録音した音源は証拠能力としてあると認めました。一方で、1審が慰謝料300万円を認めたのに対して2審は10万円しか認めなかったことの違いには、ボイスレコーダーの中に「ふて腐れ、横をむくなどの不遜な態度をとり続けたこと」が録音されていて、暴言が本当にあったかの事実関係だけでなくその経緯についてフォーカスを充てています。つまり単に暴言があったからパワハラだ!というだけでなく、そのパワハラと思しき行動にどのような意図があったか?や指導の域を超えていたか?否か?等、多方面の要因が絡み合った複雑怪奇なものだという事が分かります。
2.セクハラ
パワハラと同様に職場で問題視されるハラスメント行為の1つにセクシュアルハラスメント(通称:セクハラ)があります。セクハラの定義は色んなサイトに挙がっていますが、ここでは日本の人事部というサイトから男女雇用機会均等法が定義している職場でのセクハラについて引用します。
(1)「職場において、労働者の意に反する性的な言動が行われる」
(2)「それを拒否したり抵抗したりすることによって解雇、降格、減給などの不利益を受けること」
(3)「性的な言動が行われることで職場の環境が不快なものとなったため、労働者の能力の発揮に重大な悪影響が生じること」
ここでいう(1)・(3)が主に環境型と呼ばれるセクハラの類型で、(2)が対価型と呼ばれるセクハラの類型になります。対価型においては、現在進行形で働いている職場環境だけでなく就活セクハラという言葉に表されるような未来の働く職場を巡って行われることがあるようです。(下記動画はそれを取り上げたニュースの映像です)
3.ハラスメントと思ったら?
ハラスメントと思ったら、まずはスーツの胸ポケット忍ばせることができるボイスレコーダーを買いましょう。あるいは少々お値段は張りますが、腕時計型の小型カメラを買いましょう。もしくは、それも難しいならば受けた段階では気持ちが苦しいかもしれませんが、殴り書きレベルでも構いませんのでメモ帳等にメモして、そのメモをその日のうちにその内容をワードに打ち込みましょう。
そして、揃えた資料会社とは関係のない第3者(例:労働基準監督署の総合労働相談コーナー)の人に見てもらいましょう。これを頭の片隅に入れておくだけでも、たとえセクハラやパワハラの根拠となる法令が分からなくても対応できます。