非正規を巡る悩ましい判決

 どうも!おはようございますからこんばんわ!まで

 非正規雇用を巡って10月13日に興味深い判決が言い渡されました。その一つに、メトロコマース事件があります。概要は次の通りです。東京メトロの売店販売員(契約上は東京メトロの100%出資子会社であるメトロコマースと労働契約を結んでいます)たち4人(60代、うち3人は7カ月〜10年8カ月勤務した後、定年退職済み)が同じ業務をしているのに、正社員と契約社員で※賃金格差がありすぎるとして、同一労働・同一賃金を求めて、賃金格差分や慰謝料など合わせて4560万円の支払いを求めて、東京地裁に提訴した。という裁判です。

 さて、判決はどうなったでしょうか。

契約社員の退職金も認めず 最高裁「格差、不合理と評価できず」

 URLのリンクを紐づけた産経新聞の記事を見ると、最高裁は「格差が不合理とまで評価することはできない」として、原告側の退職金についての上告を棄却したそうです。2審の東京高裁判決では住宅手当と退職金の不支給は違法としていた(基本給と賞与については、配置転換の有無など労働条件が異なるとして格差容認)ので、退職金の不支給をひっくり返してきたのは驚きました。

 また同じ日に大阪医科大(学校法人大阪医科薬科大)の元アルバイト秘書の女性が、賞与などの支払いを求めていた訴訟で、最高裁第三小法廷(宮崎裕子裁判長)は10月13日、二審・大阪高裁判決を変更し、女性側を逆転敗訴とする判決を言い渡しました。

今回の裁判で争点となっている(旧)労働契約法20条(以下、旧労契法20条)(現在、この規定はパートタイム・有期雇用労働法に集約されました)は次のような規定となっています。

第20条 有期労働契約を締結している労働者の労働契約の内容である労働条件が、期間の定めがあることにより同一の使用者と期間の定めのない労働契約を締結している労働者の労働契約の内容である労働条件と相違する場合においては、当該労働条件の相違は、労働者の業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度(職務の内容)、当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情を考慮して、不合理と認められるものであってはならない。

 今回最高裁判決が言い渡されたメトロコマースの件では契約社員(有期雇用)で売店業務のみをしていたという点、大阪医科薬科大の件では正規の職員と同じ秘書の仕事だけとアルバイト(有期雇用)という背景で、旧労契法20条における不合理は認められないという判決となりました。

 メトロコマースの件では1審は社内の正社員全体と比較しての判決となりましたが2審では同じ売店業務をしている正社員との比較で、退職金と住宅手当の部分で格差をつけることを不適法としての最高裁判決、詳しい判決文を読んでみないとなんとも言えない側面はありますが、この判例法理が同一労働・同一賃金実現のための柱として旧労契法20条が吸収されて生まれたパートタイム・有期雇用労働法の実務における運営へどう影響するのかを注視しなければならない一方、ライフスタイル上便利な働き方で選んでいる人もいるけど仕方なく非正規労働を選んで非正規労働で生きている人たちにも目を向けなければならないのだと改めて思いました。


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