感想&雑感:『日本型組織の病を考える』村木 厚子 (著)
どうも!おはようございますからこんばんわ!まで。
今回はこの本のきっかけとして書いていきたいと思います。
1.全体的な感想
ある日突然自らが容疑者として浮上し、拘置所にぶち込まれるというイメージってなかなか難しいですよね?。著者の村木氏は障害者郵便制度悪用事件の容疑者と名前が浮上し、一時は逮捕され拘置所に入るという経験をされましたが後に無罪となりました。この事件では検察庁の証拠改ざんというえげつない事があったという事実がありました。
本書では村木氏目線でのその備忘録と拘置所で目にした姿、事件を契機として著者が感じた日本型雇用×不祥事の病巣と著書が想う公務員の姿、そして改革のマインドと後に厚生労働省事務次官となり退官後に取り組んでいる改革の芽の育成に取り組んでいる姿が描かれています。
2.検察という組織
障碍者郵便制度悪用事件の背景は次の通りです。(引用: https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%9A%9C%E5%AE%B3%E8%80%85%E9%83%B5%E4%BE%BF%E5%88%B6%E5%BA%A6%E6%82%AA%E7%94%A8%E4%BA%8B%E4%BB%B6#cite_note-sangiin_171/syuh/s171211-1 )
郵政省当時の1976年に発足し、日本郵政公社を経て郵便事業株式会社に引き継がれた郵便制度として、第三種郵便という一定の要件をそなえた低料金の定期刊行物の内でも、発行人が心身障害者団体であること等の証明を得た場合、さらに低料金の郵便料金が適用される心身障害者用低料第三種郵便物の制度がある。例えば、本事件当時、重量200gの書籍は240円、単なる第三種郵便の月刊誌では84円のところが心身障害者用の月刊誌であれば30円である[9]。このため、本来この扱いを受けないダイレクトメールを虚偽の申請により心身障害者用低料第三種郵便物と認定させることは、正規の郵便料金との差額を不法にまぬかれることで、郵便法第84条に違反する。
本書の中では、逮捕された日の午前10時から取り調べが始まり同日午後5時半に検事から逮捕と言われた際、旦那さんにたいほという3文字だけメールを送って伝えたとの事です。漢字に変換する余裕が無いほど切羽詰まっていたというのがよく分かります。
本書内で私が特に驚いたのが調書の作り方です。検察は自分達のストーリーにあてはまる話は一生懸命聞くけど、そうでない部分は1文字も書こうとせず自分達の裏付けにできるかどうかの一点で証拠を精査していたとの事です。著者は検察が描いたストーリーに否認し続けたため、他の容疑者と同じく起訴はされましたが罪を認めた側はすぐに保釈されましたが著者は長く拘置所で勾留される流れとなりました。
その後検察の改ざんが分かって著者は無罪となり、復職後に取り調べの可視化につながる法務省の検討会の一員となりました。検討会の中では「可視化は取り調べの機能を損なう」「国の治安維持を害する」といった趣旨で可視化は必要ないという意見があったとの事で、これは検察という硬直した組織が漬かりまくった結果として出た発言なんだなと思います。
3.拘置所×日本社会
本書の第2章では拘置所にいた時の著者の備忘録や拘置所から見えた社会の様子が記されていますが、逮捕当日も拘置所に対して興味津々だったという著者のメンタルの強さは半端ないなぁと思います。
本書内で特に驚いたのはあどけない少女が薬物に手を染めて刑務作業をしている姿と障碍者(ここでいう障害は知的障害)の方が繰り返し犯罪を犯してしまう姿です。少女の場合は、貧困や虐待,家庭内暴力やネグレクトといった形で厳しい環境下に置かれて学校や地域から居場所を失ってしまい、やむなく性産業に従事しその過程で薬物に手を染めてしまいました。その背後には少女たちを利用して金儲けをする大人がいるという部分があり、大人と社会の責任が大きいと著者は指摘しています。障碍者の場合、多くは福祉と結びつかない結果として犯罪を繰り返してしまったり社会のルールを知らないで犯罪を繰り返したりする傾向にあるそうです。
上記の図は平成30年版 犯罪白書に掲載されている高齢既決拘禁者(65歳以上の受刑者,死刑確定者及び労役場留置者)の休養患者(医師の診療を受けた者のうち,医療上の必要により病室又はこれに代わる室に収容されて治療を受けた者)の図で、これを見ても受刑者の高齢化率は高く、中には認知症の高齢者もいます。法務省は2018年度から札幌・宮城・府中・名古屋・大阪・広島・高松・福岡の刑務所で4月以降に入所した受刑者に認知機能の検査を行い、認知症の疑いがある受刑者は医師の診断を受けて認知症と診断を受けた場合には刑務作業の軽減や症状の改善指導がおこなわれるようになったこのことです。
4.終わりに
今回はここで筆を置きたいと思いますが、本書は日本社会の病巣を知る上で大変示唆に富んだ一冊だと私は思います。