アンケート調査によるFediverse意識調査
この記事は「分散SNS Advent Calendar 2019」の2日目として書かれた。
この報告は近年のインターネット日本語圏の一部で話題となっている分散SNSに関し、令和元年という節目の良さもあって、分散SNSネットワーク(通称Fediverse)に所属するユーザへ対し意識調査を行ったことの報告である。
なお、このアンケート調査によるFediverse意識調査の文書およびデータはクリエイティブ・コモンズ 表示-継承ライセンス(CC BY-SA 4.0)によって再利用できるようにした。つまり、翻訳による再利用が可能であるように考慮している。
方法
対象は、日本時間の令和元年(西暦2019年)11月16日から11月30日のActivityPubプロトコル対応の全サーバに所属する全ユーザを想定し、それら全ユーザを対象としてアンケート調査を実施した。
ActivityPubプロトコル対応のMastodonサーバのmstdn.guruから、Googleフォームに作成された20件の設問からなるアンケートへアクセスできるURLを記述したポスト(Mastodon用語:トゥート)を行った。
https://mstdn.guru/@keizou/103147768473468835/embed
結果
任意回答のためFediverseへアクセス可能なインターネット日本語圏全ユーザの回答を得られたわけではないが、回答者数全243人、利用年齢層10代未満から90代以上、主要年齢層は10代から40代、中央は20代、可半数を男性が占めている。
補足的な情報として当該アンケート調査依頼のポストはシェア(Mastodon用語:ブースト)数85件、ライク(Mastodon用語:お気に入り)数35件であった。
分散SNSをはじめたきっかけはインターネットの情報をきっかけが大多数であり、利用している分散SNSの種別は大勢がMastodon、Mastodonの認知率はほぼ100%、次いでMisskeyの利用者が多く、Misskeyの認知率も高い。
分散SNSの閲覧方法の可半数はWebブラウザ、閲覧しているタイムラインの可半数はホームタイムライン、連合タイムラインを積極的に活用している者も可半数を占めているということがわかった。
連合タイムラインおよびローカルタイムラインの必要性に関しては双方とも必要であるという意見が可半数を占める。
分散SNSの多くが採用するActivityPubプロトコルの認知率は非常に高い。
中央集権SNSと分散SNSの優劣比較については分散SNSの方が優れているという意見が多く、Fediverseの将来的な予想規模としては中央集権SNSのFacebookの規模を超えないものの定着すると見られている。
中央集権SNSがActivityPubプロトコルを採用すべきかと言う点については判断に苦慮する者が多く、次いで中央集権SNSはActivityPubプロトコルを採用すべきでないという意見が多い。
分散SNSサーバの収益化に関して、一部の分散SNSサーバが収益化を果たすという意見が大勢を占め、次いで収益化することはないという意見が続く。
分散SNSサーバの利用有料化に関しては月額500円(税抜)までならば許容するという意見が最も多いものの、全体の比率としては小さく個々人の意見が分かれる結果となっている。
分散SNSの利用を自分以外の他者へ薦めるかという点に関しては相手を吟味して薦めるという意見が可半数を占め、全体としても消極的な姿勢が目立つ。
分散SNSでの言動の制限という点については無制限であるべきという意見が最も多いものの、可半数意見が何らかの制限があるべきと考えている。
コンピュータ利用に関してパーソナルコンピュータオペレーティングシステムではWindowsの所持率が高く、スマートフォンオペレーティングシステムではAndroidの所持率が高いという結果となった。
年代分布
年齢分布は多い集団から20代39.9%、40代21.8%、30代17.7%、10代16%、50代2.5%、60代1.2%、その他の年齢であった。
性自認分布
多い集団から男性72.8%、女性11.1%、無回答5.8%、わからない4.1%、無性3.3%、中性2.5%であった。
各年代における性自認分布
各年代の個別の性自認分布を調査した。
10代の性自認分布
20代の性自認分布
30代の性自認分布
40代の性自認分布
50代の性自認分布
60代の性自認分布
各年代の性自認分布の比較
10代は女性と性自認している者がゼロであった。
そこで「男性もしくは女性と回答」および「男性もしくは女性と回答しなかった」割合を比較する。
世代が若い者ほど上の年代と比較して性自認が男性もしくは女性ではない比率が他の年代よりも顕著に出るという結果を示した。
他Webサービスの性別比率
性自認分布の調査結果を整理している段階で筆者は本アンケート調査の参考とするため、他サービスの年齢比率の性別比率をインターネット上で調査した。
2ちゃんねるの性別比率では2009年報告のGoogle Ad Planerの結果で男性率68%であった。
ニコニコ動画は2018年報告(PDF)で男性率68%であった。
更にImpressのインターネットマガジンの1999年報告の性別比率調査結果を発見し、男性率が82.7%であることを確認した。
乱暴な方法ではあるが、本アンケート調査の性自認分布から女性率だけ引くと88.9%というインターネットマガジンと近似した値が出る。
分散SNSをはじめたきっかけ
前述したとおりアンケート回答者の80.2%がインターネットの情報から分散SNSをはじめたという理由である。次いで所属していたコミュニティが設置したが18.1%、中央集権SNSによる言論の制限が12.3%と続く。個人個人が独自の理由も持っている場合も少なくない。
主に利用している分散SNS
Mastodonが大勢の77.0%であり、次いでMisskeyの14.4%、Pleromaの7.0%と続く。GNU Socialはゼロであった。
分散SNSの年代分布
上位3つの分散SNSの年代分布を調査した。
Mastodonの年代分布
Misskeyの年代分布
Pleromaの年代分布
Mastodonは20代以上に好まれ、Misskeyは比較的若い世代に好まれる傾向があるという結果を示した。
既知の分散SNS
既知の分散SNSではMastodonがほぼ100%認知されており、次いでMisskeyが知られているという結果となった。
GNU Socialはメインでの利用者が非常に少ないにも関わらず認知率は高い傾向にあった。
閲覧方法
分散SNSの閲覧方法の可半数はWebブラウザ、次いでネイティブクライアントアプリとなった。
少数ながら併用者も存在する。
主に閲覧しているタイムライン
閲覧しているタイムラインの可半数はホームタイムラインであった。
分散SNS毎の主に閲覧しているタイムライン
利用者の多い上位3つの分散SNSの主に閲覧しているタイムラインを調査した。
Mastodon内の主に閲覧しているタイムライン
Misskey内の主に閲覧しているタイムライン
Pleroma内の主に閲覧しているタイムライン
連合タイムラインの利用状況
連合タイムラインの利用方法状況を調査した。
「ホームタイムライン(HTL)・ローカルタイムライン(LTL)の投稿が少ないとき閲覧」「常時閲覧」「地震発生など必要に応じて閲覧」の3つを積極的な連合タイムラインの利用グループと解釈すると合わせて62.4%が連合タイムラインを積極利用しているという結果を示した。
分散SNS毎の連合タイムライン利用状況
利用者の多い上位3つの分散SNSの連合タイムライン利用状況を調査した。
Mastodon内の連合タイムライン利用状況
Misskey内の連合タイムライン利用状況
Pleroma内の連合タイムライン利用状況
連合タイムラインの必要性
連合タイムラインの必要性を調査した。
過半数が必要だと考えているものの、必要でないと考える者も無視できない比率で存在していることがわかった。
分散SNS毎の連合タイムラインの必要性
利用者の多い上位3つの分散SNSの連合タイムライン必要性を調査した。
Mastodon内の連合タイムラインの必要性
Misskey内の連合タイムラインの必要性
Pleroma内の連合タイムラインの必要性
主に閲覧しているタイムライン別の連合タイムラインの必要性
更に主に閲覧しているタイムライン上位2つの連合タイムラインの必要性を調査した。
ホームタイムライン派の連合タイムラインの必要性
ローカルタイムライン派の連合タイムラインの必要性
ローカルタイムラインの必要性
ローカルタイムラインの必要性を調査した。
分散SNS毎のローカルタイムラインの必要性
利用者の多い上位3つの分散SNSのローカルタイムライン必要性を調査した。
Mastodon内のローカルタイムラインの必要性
Misskey内のローカルタイムラインの必要性
Pleroma内のローカルタイムラインの必要性
ActivityPub認知率
ActivityPubプロトコルの認知率を調査した。
全体的に高い認知率を示しており、「ActivityPub対応サーバもしくはアプリケーションを実装したことがある」「ActivityPubの仕様書を読んだことがある」者をActivityPubへ高い理解度を持つグループとした場合は合わせて21.4%、「ActivityPubについて解説した記事もしくは言説を読んだことがある」「ActivityPubが多くの分散SNSに採用されているということは聞いたことがある 」者をActivityPubの基礎的な理解度を持つグループとした場合は合わせて59.9%と考えることが出来、一般的に難解だとされ理解が阻まれがちな情報技術関連としては非常に顕著な結果である。
中央集権SNSと分散SNSの優劣比較
中央集権SNSと分散SNSの優劣比較については分散SNSの方が優れていると考える者が多く、中央集権SNSの方が優れていると考える者は少なかった。
比率として目立つのは優劣を決めかねている者であり、これは分散SNSの方が優れていると考える者とほぼ同規模だった。
分散SNS全体はFacebookの規模を超えるか?
分散SNSはFacebookの規模は超えないものの定着するという定着するという見方が大勢であった。
規模と定着
そこで規模と定着をわけて調査をした。
予想規模
予想定着
中央集権SNSはActivityPubを採用すべきか
中央集権SNSはActivityPubを採用すべきかを調査した。
わからないという考えが大勢を占めるものの、一部であれ中央集権SNSもActivityPubを採用した方が良いと考える者も多く存在するという結果を示した。
分散SNSの収益予測
分散SNSの収益予測を調査した。
不安は残るものの3/4にも迫る比率で収益化するという予想が占めた。
有料化
分散SNSの有料化の是非に関して調査した。
ただし、調査結果から読み取れるように回答が分散しており、本アンケート調査から多数決意見を採用し有料化へ踏み切ると、その他の意見を寄せたユーザは不満を抱く可能性があることへ留意しなければならない。
推薦と勧誘
推薦と勧誘に関して調査をした。
薦めるという前向きな意見が大勢ではあるが、それには吟味が伴うという結果を示した。
話題
アンケート回答者が分散SNSで取り扱う話題に関してどのような考えを持っているのかを調査した。
「あらゆる話題にこだわらず取り扱うべき」が最も多いが、「その他」の項目では「べき論で決められるようなものではない」という回答が目立った。
パソコンOSの種別
所有しているパソコンのOSの傾向を調査した。なお、複数回答可能である。
スマートフォンOSの種別
所有しているスマートフォンのOSの傾向を調査した。なお、複数回答可能である。
調査結果データ
本アンケート調査結果はCSV形式でダウンロード可能とした。
この調査結果もCC BY-SA 4.0で配布するので存分に活用されたい。
謝辞
以上をもってアンケート調査によるFediverse意識調査の報告とさせて頂く。
まずは本アンケート調査にご協力頂いた243名の方々へ最大限の敬意と感謝を示したい。
そして同時に本アンケート調査結果データの第三者共有による同一性保持に関してご協力頂いたぐすくま氏、tateisu氏、のえる氏へ改めてお礼を申し上げる。
これまでFediverse日本語圏の調査では243名もの詳細なデータは集まることが無かったと考えられ、このデータはFediverse日本語圏が存続する限り初の大きな調査記録として後世の技術者・研究者に引用され続けるものと確信している。
それでは皆様、再度ご協力ありがとうございました。
明日の担当はCutlus P氏です。
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