~大泉洋さんに学ぶ「巻き込まれ力」~
「大泉洋 おおいずみよう」さんという北海道出身の役者さんがいます。
近年はNHKの大河ドラマに出演をしたり、映画の主演をしたりと大活躍をしています。軽妙なトーク力と、かといってスターぶらない彼のファンも多く、愛されています。僕も「水曜どうでしょう」に出演している時から彼のファンです。
今でこそ「軽妙なトーク力」で人気ですが、大学を出た後に出演している「水曜どうでしょう」序盤のシドロモドロに話をしている彼から、今の姿にいたる想像が出来ません。共演している彼の事務所の社長である鈴井貴之さんからも、「ホント君、しゃべるのダメね。」とOAで流されるくらい。見ているこちらも「彼はやっていけるのかな」「この番組、続くのかな」と心配になるほどです。おそらくディレクターだった藤村忠寿氏も頭を抱えていたに違いないです。
しかし「自分の番組を長く継続させたい。」「面白い番組にしたい」と飢えていた藤村氏・鈴井氏は番組の編集をしながら気が付きます。
大泉さんは自分で進行をしようとすると途端に「面白いことを言わなくちゃいけない」「編集点をつくりやすい演出を自分でやらなくちゃいけない」とプレッシャーを自身に与えすぎてぎこちなくなってしまっていたのです。
序盤はそこもあえて前面に出して「若いのが頑張っているな。」と視聴者に思わせようという編集をしていた藤村氏ですが、あるとき気が付きます。
大泉さんのパフォーマンスが上がるのは意識的に彼にバトンを渡した時ではなく、理不尽なことに巻き込まれたときに発揮していたのです。
藤村さんはその後、立証します。大泉さんに対する執拗なドッキリ企画をウリにシフトチェンジするのです。
そしておそらく視聴率の推移に着目して藤村さんは確証を得ます。前後して大泉洋自身もファンレターや感想で気が付きます。
「上手に巻き込まれていくことも悪いことじゃなく、むしろ今求められていることではないか」と。
番組内でも語っています。
「僕はねえ、サラリーマンの入浴剤みたいな存在ですよ。」
「抑圧された社会に生きている皆さんがだよ、帰ってさぁ・・ひっそりどうでしょうかけるんだよ。するとそこにはさ、その人よりも抑圧された男がさぁ(略)誰からも聞いてもらえないんだけど僕は一生懸命叫んでるわけだろ。」
「そういう現実っていっぱいあるわけでしょ。それでもねぇ、ものも言えずに黙ってんだよみんなさ。」
「でも俺は黙ってないんだよ。俺は言うんだよ。それで世界が変わるわけじゃないの。それでも何か言いたいんだよ。」
「自身の場所」を発見してからの人気のバズりっぷりは言うまでもありません。
ビジネスにおいても「巻きこみ力」のある方たちは優秀とされています。
しかし、「上手に巻き込まれる力」のある人も必要だし、輝くことができます。
むしろ「巻き込み力」のある方たちは下手をしたら「強引」だと言われたりして時には大きなリスクを背負ってしまったり、メンタルに傷を負いながら進まざるを得なかったりします。
そんなときに「上手に巻き込まれ」てグループを盛り立ててくれる大泉さんのような存在は大変貴重です。
水曜どうでしょうがカルト的な人気を誇ったのも、視聴者側サイドも「巻き込む藤村さん」と「巻き込まれる大泉さん」両方を「巻き込んで」いたからなのかもしれません。
テレワークの推進、会議はZOOM、組織の改編。これから数多くの変化が多くの企業で起こるでしょう。
大泉さんのことを思い出しながら、世界の大きな変化に「巻き込まれていく力」を意識するのも必要になってくるかもしれませんね。
埋もれてしまっている宝石がたくさんあるように思います。文化だったり、製品の場合もあるけれど一番は人間の可能性です。見つけて、発信してよりよい世界を共に生きましょう。