歴史は映画のパンフレット
ぼくは恥ずかしながら、高校を卒業するまで真面目に歴史というものを勉強したことがなかった。
高校3年の時、日本史か世界史を選択する時もぼくは「世界史はカタカナばかりで覚えられない」という、非常に意識の低い理由で日本史を選択した。もちろん、だからと言って日本史の成績がよかったわけではない。テストの点数はだいたいいつも、赤点と平均点の間くらいを行ったり来たりしていたし、教科書のザビエルの肖像画は逆さにするとペンギンの顔が浮かぶようにラクガキがしてあった。
さて、高校生まではそんな感じのぼくだったが、大学に入って3年ほど経った時、突然世界史の面白さに気がついた。
世界三大宗教の歴史から始まり、古代エジプト、ローマ帝国。間を一気に飛ばして近代ヨーロッパ史にジャンプするなど、順番こそめちゃくちゃだったけど、とにかく気になった宗教や国、地域の歴史を調べることが楽しくて仕方なくなったのだ。
そんな風に、世界史の面白さに目覚めた理由はとても単純で「大好きな映画がもっと楽しめるようになるから」と気づいたからだ。
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世の中には、戦争や戦時下の人々を描いた映画がたくさんある。とても有名なところからあげると「戦場のピアニスト」や「プライベートライアン」など。日本のアニメ映画でも「この世界の片隅に」や「火垂るの墓」などが有名だ。こうした映画を観るときに、その背景にある歴史を知ることはほぼマストだと言える。
しかし、そういった映画以外でも、世界史を知っていると面白くなる映画はたくさんある。
たとえば「フォレスト・ガンプ」や「グラディエーター」、「ハムナプトラ」などなど。こういった作品は、世界史に詳しくなくても作品の魅力を存分に楽しめるように作られている。しかし、その歴史を知っているともっと楽しむことができる作品だ。
「フォレスト・ガンプ」のストーリーは実際のアメリカ現代史と密接に連動しているし、「グラディエーター」の敵役であるコンモドゥスは実在のローマ皇帝で、精神を病んでいたことも皇帝自ら闘技場に立ったことも本当に記録に残っている。
けど「ハムナプトラ」のイムホテップは実在しない、あれはフィクション。あと、ミイラは製造の段階で脳みそを引き抜くので、もしイムホテップが復活してもあいつはめっちゃバカになる。
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最後若干話が逸れた気がするけれど。こんなような感じで、一見世界史とは関係があまりなさそうな映画でも、実は歴史を知っていると楽しみが増えることは多い。世界史とはまさに、歴史の副読本。つまりハンプレットのようなものなのだ。
正直いって、ぼくは子どもの頃から歴史学習というものが嫌いだった。歴史上の人物や年号が自分の実生活とどう関係するのかが想像できなかったし。大人たちが語る戦争の物語も、説教くさくて苦手だった。
でも、今は違う。
今のぼくにとって歴史は、自分の実生活と密接に関係する知識だ。もちろんそれは、選挙に行って政治に参画するためでもなければ、戦争という過ちを繰り返さないためでもない。
ただ、自分が大好きな映画を楽しむため。それだけのために集める、とても大切な知識だ。