三拍子第100回目単独ライブ『これでもか!!!』(2024.10.17)
2024年10月17日(木)、漫才コンビ三拍子の100回目の単独ライブが開催された。
タイトルは「これでもか!!!」
会場は国際フォーラムのホールC。
キャパ1,500席の会場は3階席まで埋まり、当日券も売れて立見も出たらしい。
老若男女、実に様々な観客が集まったあの場所で三拍子が見せた舞台は確かに漫才を軸としているが、既存のお笑いや漫才の枠に収まらないエンターテイメントだった。
ここでは、あの日見た景色を記録したい。
前説
数々の三拍子の単独ライブで前説を務めて来たビクターミュージックアーツ所属のコント師「さんぽ」が今回も会場をあたためた。
とみやんさんが公演中の諸注意や物販について分かりやすく伝える。岩永さんは声出しの練習で「バツイチコール」(※高倉さんは一度離婚している。)
観客が「バーツイチ!バーツイチ!」と声を出すと「まだ離婚してない」と首を横に振り、もっと大きい声を出すように煽る。
小さなお子様からお年寄りまで会場が一丸となって拳を掲げ「バーツイチ!バーツイチ!」と声を上げた。私はあの光景を一生忘れないだろう。
そして、開演。
オープニングトーク
三拍子オリジナル出囃子「目玉バキバキ男と蝶ネクタイ木男」が流れ、幕が開く。
中央にはサンパチマイクがたたずみ、後ろには30人編成バンド「オワリズム弁慶」がポーズを決めてスタンバイ。
三拍子が登場すると会場全体から拍手が鳴り響く。
中央に来た高倉さんが一歩前に出て人差し指を高く掲げ「バツイチでーす!」と言うと会場からは笑いが起き拍手は更に大きくなった。
高倉さんは会場全体を見回し、「せっかくだから元取ろう!180万円の元取ろう!」と舞台下手側の1番端へ行き、そのまま漫才を始めようとする。久保さんは反対側の一番端から「そこでやるのかよ!」と突っ込んだ。
その後も高倉さんは
「ウケるかな!?今日ウケるかな!?」
「なんか広いんだもん!普段と違う!バティオス(歌舞伎町の小劇場)と違う!ナルゲキ(西新宿の中規模の劇場)と違う!東洋館と違う!やり方が違う!」
「俺は今楽しい!みんなに見られて!」
「来てくれてありがとうね。拍手と笑い嬉しいな。」
と終始テンションが高い。
「来てくれてありがとうね。お前にも言ってるんだよ。」と言われた久保さんは「俺は来るよ。90万円払っているんだから。」と現実的な返答。
尻尾をちぎれんばかりに振って喜んでいるかのような高倉さんと、それを一歩引いてどっしりと見守っている久保さんが印象的だった。
そのまま1本目の漫才に入る。
漫才
ランプの魔人漫才
2年前の20周年単独ライブ「ラストチャンスと言わないで」の最後にやった漫才。
歌ネタなのでオワリズム弁慶とコラボするのかと思いきや、高倉さんがいつも通りに口でラッパやドラムの音を歌う。あの漫才を見たことがある人は心の中で「いやバンド使わないんかい。」と突っ込んだことだろう。
1,500人規模の会場でオワリズム弁慶だけが「絶対に笑ってはいけないお笑いライブ」を強いられ、肩を震わせて耐えようとしたり、思わず吹き出して顔を背けたり、我慢を諦めて普通に笑っている人が続出していた。
「どうも、ありがとうございました。」で暗転するとすぐにドラムのシンバルが鳴り響く。
オープニングソング「七転八万起」
明転すると三拍子はそれぞれ左右の舞台袖に戻る途中で、その間から5人のダンサーが飛び出し、テーマ曲「七転八万起」の演奏が始まる。
その光景をお笑いファンによるpodcast番組「サンパチニシヒガシ」では「漫才師が扉を開いた」と形容した。漫才と音楽を繋ぐ綺麗で格好いい場面だと思う。
頭上のスクリーンには黒い背景に第1回目からの三拍子単独ライブのタイトル、開催日、会場が音楽に合わせて次々と表示される。始まりと終わりには朱色の円の中で黒い服を着た高倉さんが走る映像も流れた。
駆け抜けて来た100回の歴史と100回という物量の多さを視覚的に表した映像と「何回転んでも起き上がる」という力強い歌詞、エネルギーに満ち溢れた演奏や歌やダンスパフォーマンス。
100回目の単独ライブに相応しい「これでもか!!!」と言うくらいエンタメをぶつけたオープニングだった。
私は1階席の前の方だったのでオワリズム弁慶と映像を同時に見ることは難しく、映像は配信で繰り返し視聴した。
舞台の際まで迫り来るダンサー達と生の演奏や歌は迫力があった。
漫才
その後は漫才と幕間VTRが交互に披露され、後半には企画のコーナーもあった。まずは漫才をネタバレのない範囲でまとめたい。
三拍子ゲーム漫才
既存のCMをつくろう漫才の派生のような漫才。
高倉さんと久保さんのやり取りが小学生男子のようで微笑ましい。
漫才の終盤、高倉さんはかかりすぎて酸欠になりかけていた。
感動する場面漫才
2023年定期単独ライブ「漫才の向こう側」でやった「緊張する場面漫才」の派生。
ボケツッコミが逆転するが、高倉さんのツッコミがボケにも見える。久保さんに比べて優しい語尾で、頭を叩くツッコミをする時も頭頂部の髪の毛が揺れる程度にしか触れない。そんな高倉さんのぎこちないツッコミに久保さんが突っ込む時もある。
2人のコンビネーションがおもしろい漫才。
つっこみ間違い漫才
YouTubeに3種類アップされている「つっこみ間違い漫才」の新版。
今回のライブで1番おもしろくて見応えがあった。正しく突っ込んだ後の久保さんの一言ツッコミが秀逸でおもしろい。
終盤の歌パートからの畳み掛けるような2人の応酬は尚一層おもしろかった。
歌のお兄さん漫才
2023年単独ライブ「うんたった」初出の歌ネタ漫才。
今回はオワリズム弁慶とコラボ。バンドが伴奏だけに終わらず、漫才の一部としてボケて久保さんに突っ込まれる。三拍子の2人はもちろん参加しているバンドメンバーがずっとニコニコしていて楽しそうだった。もちろん観客も楽しい。
RYO TAKAKURA’ with オワリズム弁慶
漫才が終わり暗転すると高倉さんはジャケットを脱いで法被を羽織る。
漫才の最中はいなかったダンサーも現れ、オワリズム弁慶と共に「歌のお兄さん漫才」の劇中曲を高倉さんがサンパチマイクで歌う。
漫才の中で繰り返された歌詞が少し別の意味を持ち、どことなくミュージカルのような雰囲気もあり、バカバカしくもあり、最後はバッドエンドでオチて笑いが起きた。
オワリズム弁慶メンバーの白塗りで高下駄を履いた弁慶が薙刀を片手に時折高倉さんの顔を覗き込む様子がシュールでおもしろかった。
(RYO TAKAKURA’は高倉さんが音楽活動をする時の名義)
無茶振り漫才
2023年定期単独ライブ「漫才の向こう側」初出の漫才。1回目は驚きと共に、2回目以降はメタ構造の妙に迷い込ませ観客の心を弄ぶ漫才。一度と言わず4〜5回見てほしい。
今回は直前に企画のコーナーで見た即興漫才が効果的に作用していた。
企画
高倉さんが本日の企画はこちら、と言うとスクリーンには「ゲストとトーク」の文字。
しかし、不穏なサウンドともに「…と言うのはニセ企画で」の文章が現れる。動揺する三拍子。
「本当の企画は即興漫才」とデカデカと表示されると高倉さんは歓喜の声をあげ、久保さんは心底嫌そうな顔をしていた。
三拍子の代名詞となりつつある即興漫才。
即興の相方は三拍子も知らないスペシャルゲスト。
コンビの組み合わせとテーマの発表はパリオリンピックのようなルーレット形式で決めた。
久保さん×シューマッハ「運動会」
まずは久保さんとジャパニーズゴッドタレントでゴールデンブザーを獲得したシューマッハ(サンミュージック所属)のトリオで即興漫才。テーマは運動会。
全身白タイツで登場したシューマッハはエコバッグを持参しており、久保さんは「なんかすっげえ用意してて怖い!!」と怯えた。
五味さん(左)が淡々とテーマに沿った漫才を久保さんと行う中、中村さん(右)は犬やシマウマになって自由奔放に舞台を歩き回る。
トコトコ歩いて舞台袖に向かうシマウマを「サファリパークみたいなってる!放し飼いの!」と追いかけたり、何の脈絡も無く犬のマスクをサンパチマイクに被せた中村さんに「ダメだよ!神聖な場所なんだから!」と注意する久保さんがおもしろかった。
最後はバトン代わりに犬のマスクを頭に被る犬リレー。
頭が大きくて中村さんから受け取ったマスクが入らない久保さんに爆笑。それでもなんとか被り、お尻を床に付けながら背面四つん這いで歩く久保さんを尻目にシューマッハは2人で漫才。久保さんは舞台に座った状態でマスクを脱ぎ捨て、2人に突っ込んで締めた。
高倉さんは授業参観の保護者の如く、舞台の端からニコニコと相方を見守っていた。
高倉さん×ダンディ坂野さん「旅行」
みんなのアイドルであり大スターのダンディ坂野さんが登場すると会場からは大歓声と大拍手。
だがあの瞬間、1番喜んでいたのは他でもない高倉さんだと思う。
ダンディさんはいつもの蝶ネクタイではなく漫才用のネクタイをつけて、サンパチマイクのケーブルを跨いで前後に行ったり来たりして楽しそうに漫才をしていた。
なぜか人のギャグをやり続けるダンディさんに高倉さんはずっこけたり、両手両足を前に伸ばして長座体で舞台上を滑ったりと普段は滅多にやらないリアクションを見せる。
最後はゲッツではなく「おひさしブリーフ」で締め。
「ダンディさんにツッコミをやらすんじゃなかった!」「お互いフリに弱いです」「全然ゲッツをしてくれない!」などの名言が飛び出すはちゃめちゃな即興漫才で会場は大爆笑。
漫才後にダンディさんが「ゲッツ!」や例の去り方をすると会場からは歓声と拍手が起こり、大盛り上がりのうちに企画のコーナーは終わった。
もうクライマックスかと思うくらいの満足感に包まれた客席だったが、高倉さんは「この後まだまだ続きます!」と言った。
宣言通り、この後は山手線漫才の幕間VTR、無茶振り漫才、エンディング、そしてアンコールへと続く。
幕間VTR
①漫才風15秒CM
単独ライブ開催にあたって実施したクラウドファンディングのリターンの一つ。
好きな芸人や歌手、自分のYouTubeチャンネル、地元などを「三拍子揃った○○!」のフレーズ込みで宣伝する。15秒どころか1本あたり45秒以上あった。
ビクターミュージックアーツ所属の若手漫才コンビきつね日和のCMでは、高倉さんと同郷のおいなり達也さん御本人登場。続く北海道のCMでもオチに名前を出してもらえてきつね日和のファンはとても喜んだ。
②江戸屋CM撮影の裏側
帯広の珍味屋「江戸屋」のCM撮影風景。没映像も公開されておもしろかった。
30度を超える真夏日にエアコンが無い中汗だくで撮影する2人が見られる。
CMは11月から北海道全土で放送されているらしい。
③メイクさんを笑わせる対決
久保さんはメイクさんとの会話が盛り上がり、高倉さんは盛り上がらないという実話を元にした漫才がある。本当にそうなのか対決形式で検証したVTR。撮影は帯広で江戸屋CMを作成する時に行われた。
④SANBYOSHI On-Site MANZAI
山手線全30駅を替え歌で覚える三拍子の「山手線漫才」
三拍子が実際に各駅の前で漫才を行い、歌に出て来る駅名に合わせて映像が切り替わる。
ロケは早朝から1日がかりで行われたらしい。
街の雑踏や騒音の中でやる漫才は非日常的で、2人の後ろを通勤中と思しき人々が行き交ったり、物珍しそうに振り返るカップルも一瞬映っていた。
観客は次々と切り替わる映像に感嘆の声を漏らしたり、漫才自体がおもしろいので笑いも起こる。
漫才の中では同じ駅名が繰り返し出て来る。同じ駅でも時には近距離から、時には物陰から覗き込むように撮影して毎回異なる映像が流れる。中には映し出される時間が1秒にも満たない駅もある。
ほんの数分間のために「これでもか!!!」というくらい労力が注がれた幕間VTRは観客を存分に楽しませた。
エンディング→アンコール
無茶振り漫才が終わるとエンディング映像が流れる。白い背景の左右に黒い衣装を着た高倉さんと久保さんが走り、中央にスタッフロールが流れて行く。
グッズのTシャツに着替えた高倉さんと、着替え忘れて衣装のままの久保さんが登場。オワリズム弁慶や即興漫才のゲストも呼ぶが、シューマッハいわくダンディ坂野さんは既に帰ったとのこと。
かなり時間が押していたらしく、久保さんは腕時計を見て会場の延長料金(延長したら明日まで借りなければならないので追加で180万円必要になるらしい。)に怯え、物販の購入を促した。
BGMとしてRYO TAKAKURA’の”I am a money man”が流れる。
2人の挨拶が終わり、拍手に包まれながら退場するとBGMは大きくなり「ありがとう!支えてくださったみなさん、そして僕を応援してくれたみなさん、みなさんのおかげで僕はここまでやってこれました。本当にありがとうございます。」と曲中のセリフが流れ、スクリーンに「これでもか!!!」のポスターが映し出される。
スクリーンの映像も消えて会場が真っ暗になるとドラムが一定のリズムでビートを刻む。それに先導されるようにアンコールの手拍子が会場全体から鳴り響く。
照明がパッとつくとオワリズム弁慶は既にスタンバイしていて、三拍子が再登場。
三拍子×オワリズム弁慶でアンコールのファミレスアイドル漫才が始まる。
高倉さんがアイドルのように歌い、久保さんがオタクのコールで突っ込む歌ネタ漫才。
弁慶も登場し、ダンサーと歌手たちはペンライトを振って盛り上げる。
最後まで大盛り上がりのうちに幕は降り、三拍子単独ライブ第100回記念公演「これでもか!!!」は終演。
無事に物販のTシャツとアクスタは完売し、延長せずに撤退できたらしい。
ロビー、物販
1階からエスカレーターを上がった先にある会場ロビーにはテレビやラジオ番組、芸人さんやファンからのお花がずらっと並び、1階にもお花の香りが漂って来た。
1階で開場の待機列に並んでいる間、ふと2階を見上げると赤いキャップを被った作家の小林さんが歩いていたり、手伝いの芸人さん達がこちらを見下ろしていた。
また、目の前を高倉さんが所属するお笑いユニットグループ「強烈」メンバーの佐々木さんや岡安さんが歩いていたり、三拍子が出演したYouTube番組「チャイコフスキーの夜」のスタッフさんや、山手線漫才の編集を手がけた安藤元気さんも見かけた。
終演後には三拍子が出演した「お笑いの向こう側ライブ」で共演した「にぼしいわし」のにぼしさんがショウガールズさん達と写真撮影をしていた。
混んでいて写真に撮り損ねたがTBSラヴィット!からのお花も来ていた。
ラヴィット!のおじさんツアーでお馴染みの三拍子等身大パネルと一緒に写真を撮ることが出来る撮影スポットもあり、何人もの人が記念撮影をしていた。
物販コーナーでは過去の単独ライブのグッズも販売。販売と整列スタッフはサンミュージック所属の芸人(チェリーボンボン、シャンソン姉さん、ぺぺる)が行っていた。
終演後にはさんぽのとみやんさんも物販スタッフに参加。缶バッジコンプリートセットを頭上に掲げて購入を呼びかけた。並んでいる最中にPayPayで購入できることを知り、ライブ中に見た山手線漫才の幕間VTRが良くて全種類欲しくなってしまったので購入。
(決済方法は分かりやすく明記して案内してほしい。手持ちの現金が尽きても欲しいものがあれば電子決済で買うので。)
写真には撮っていないが今回単独ライブ限定のTシャツは前面にフライヤーイメージ、背面に100回分の単独ライブのタイトルが記載されている。後日、某所で他のファンの人と「いつから三拍子のファンになりました?」という話をする時に大層役に立った。
三拍子第100回目の単独ライブは、漫才はもちろんサプライズや音楽もあり、お笑いや漫才の枠を越えて見る人を楽しませた。
次に何が飛び出してくるかわからないワクワク感はサーカスのようで、やり過ぎなくらい今できるエンターテイメントを詰め込んだショーだった。(お笑いライブと言うよりは、笑いあり漫才あり歌ありのショーのようだったと思う。)
これは2020年の単独ライブ「漫密2020」から見始めた私の感想だが初めて見た人や長年追っている人、芸人さん達にはどう見えたのかも気になる。
様々な人の感想を聞いてみたい。