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太宰治「嘘」を読んで

日曜日の無料版です。

昨日は読書会を行いました。3名の方がご参加くださいました。みなさん、ご参加ありがとうございました。

昨日のテーマは太宰治の「嘘」です。この「嘘」を選んだ理由は、どこかの読書サイトで「この短編がおもしろい」と書いてあり、実際に読んでみたら、とても読みやすくおもしろかったからです。

そして、実際に読書会を行ってみて、さらにおもしろく読めました。

青空文庫で読めますから興味のある方は読んでみてください。

嘘をついているのは男か女か

わたしはこの小説そのままに読んで「女ってこわいですね〜」と言っていたのですが、参加者のお一人が「これって嘘をついているのは男じゃないんですか?」とおっしゃいました。すると、そこにいた人全員が「あ、そうかも」になり、そこからこの短編に対する読み解きが始まりました。

冒頭はこう始まります。「私」の言葉です。

男は嘘をつく事をやめて、女は慾を捨てたら、それでもう日本の新しい建設が出来ると思う。

しかし、ひょっこり訪ねてきた小学時代の同級生の名誉職はこう返すのです。

しかし、それは、逆じゃありませんか。男が慾を捨て、女が嘘をつく事をやめる、とこう来なくてはいけません。

小説の「嘘」とは、そのまま読めば、名誉職の遠戚の嫁が出征しなければならない夫を馬小屋に隠しておいたことです。実はこの嫁と名誉職が恋仲?で、そのことを隠しているのでは?という話になりました。なるほど、そうかもしれません。

最後に「私」は名誉職にこう尋ねるのです。

そのお嫁さんはあなたに惚れてやしませんか?

名誉職はそれを否定して、こういうのです。

しかし、うちの女房とあの嫁とは、仲が悪かったです。

これをどう読み解くか、いろんな考えがあって読後がとてもおもしろかったです。いかに自分がバカ正直なのかということを思い知りました笑。

嘘はいつかバレる

人間、生きていれば「嘘」の一つくらいつきます。しかし、その嘘をつきとおすということは心が苦しく、とても難しいことです。

日本の太平洋戦争時代というのは本当に過酷な時代です。出征する=死です。きっと自分が生き抜くためには、嘘もやむを得なかったのだろうとおもいます。

読書会では「嘘を突き通すことはできるか」という話になりました。顔を整形しながら警察から逃げ続けた容疑者や脱走して祖国に帰れなかった人をそれぞれに思い出しました。

そういう人たちのことを考えてみても、嘘はいずれバレるものだとおもいました。それでも嘘をついてしまうのは男や女にかかわらず、人間なのかなあという気がします。

そんな話をしていたら、以前に読んだ水木しげるの漫画を思い出しました。
『敗走記』という戦記物に収録されている『ごきぶり』という作品です。あることがきっかけで戦地から逃亡した兵士が戦後も連合国に追いかけられ、巣鴨で処刑されるという話です。母親が最後にこう言います。

むす子の一生はまるで逃げまどうゴキブリのような一生じゃった……

今回の読書会は「嘘をつく」「逃げる」「隠す」ということについて考えました。思ってもみない方向に話が進んでいき、とても充実した会となりました。

次回は12月19日(土)です。
課題本は『82年生まれ、キム・ジヨン』です。
ご参加お待ちしております。


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日本語教師でライターが日常をみつめるエッセイです。思春期子育て、仕事、生き方などについて書きます。

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