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【作品解説】路地裏の告白
こんにちは、狐瓜です。
今回はジョウケイドットハーフシリーズ『路地裏の告白』の解説をしていきます!
路地裏の告白
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「一人じゃ何もできないくせに」
その言葉は誰に向けたものだったのだろうか。
▼ 差分
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葉っぱしか生えていない花壇の白■は何なのかは不明です。
花として描いていたものの名残か、何も描いていなくて(透過部分で)PNGに書き出す時にできたものなのか。謎ですが、このままにしています。
(公開初期のデータでいつも解説を書いているもんね!)
ちなみにジョウケイドットハーフシリーズ1作目はこの絵になる予定でした。
Dotpictのほうで描き始めて放置されている間に夕焼を描き始め、そっちが先に完成したためこの絵が後になりました。
場面について
時は第二部の折り返し地点あたり、現在(2024年1月)時点ではシリーズを通して最も新しい話です。これを書いたあと、様々な要因が重なった上で筆を止める決断をしました。
バディ関係を結んでから数年、ずっと行動を共にしてきた2人。しかし、敵の策にはまって別々になり、時には敵対することも──誰にも邪魔されない状況で会うことができたのは、世界が滅びかけている時でした。
登場人物について
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魔力を使う特殊な銃──魔銃を使うやや長髪の少年。
姉同然の存在であったシルフとの別れを機に「自分のやりたいこと」を見つけるべくギルドに参加した。そこで偶然出会ったライアと意気投合し、バディを組んで活動していた。
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たびたび登場しているエルです。月光差し込む宿屋にての左端に居るのも彼です。
もしかすると最も絵で描いている人物かもしれません。
というのも、キャラデザなどが最初期(未公開うごメモ版)からほとんど変わっておらず、イメージが固まっている人物でして描きやすいためです。そのためか物語でも行動が読める、つまり勝手に動いてくれるのであまり悩みませんでした。次のライアも同様です。
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こちらはほぼ最初期のデザインを採用している24*24pxサイズver。彼に限らず、この時のデザインがベースになって現在に至る人物が第2部メインキャラでは多い印象です。
また今回の絵で他の絵の時と違ってオッドアイになっているのは仕様です。
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かつて海賊に拾われ、裏社会にて「潮風の影狼」の二つ名で呼ばれていた狼人の少女。
現在は真っ当に生きており、足を洗うきっかけを作ってくれた恩人のもとで居候していた。その恩人が行方不明となってからは情報を求めてギルドに通い始めた。
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二つ名は話題のChatGPTくんに考えてもらいました。
彼女の経歴や能力を教え「裏社会での二つ名を複数考えてください」と入力した結果がコチラ。データを与えて学習させる生成AIくんがこんな厨二病でステキな二つ名を考案するとは──おもしれぇやつだ。(いったい何で学習したんだ...?)
※狐瓜自身としてはAIくんとは仲良く協力関係でいきたいと考えています。コンピュータとかと同じく従順さに幼子のような可愛さを感じて... ね?
気を取り直して。本編リメイク前は「強すぎた狼少女」という二つ名でしたが、それだと足を洗った後の呼び名だと思いまして変更です。
余談ですが、彼女のこれらの設定は友達の「悪事から退くのを足を洗うと言うけど、悪事をする(=手を汚す)ことでできた手の汚れはそのままって上手くできてるよね(要約)」という言葉が元になっています。中学生が話す内容じゃねぇ...!!
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即興で描いた衣装ですが、彼女も24*24pxサイズverがベースになっています。
ちなみに現在のデザインでは膝丈ぐらいまでの長さのノースリーブのカーディガンを羽織っています。尻尾用にスリッドが入っていまして、今回の絵の彼女をよく見るとそのスリッドを表す線の部分を見つけられると思います。
見てみてポイント集
▼ 海を感じさせる工夫
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今回の舞台は港湾都市オケアトゥス。街中に水路が張り巡らされており、港から小舟やゴンドラを使って人や物資の移動が行われている街です。
この文から察した方も居ると思いますので早速答えを。モチーフは水上都市でお馴染みのヴェネツィアです。ヴェネツィアをベースに世界の水の都の要素を足しています。これによって生まれる場の印象を海を感じさせるカギにしています。
突然ですが、皆さんは「水の都」や「水上都市」と聞いて思いつく風景はどんなものですか?
世界にはたくさんの水の都と呼べる街があるはずです。ストックホルムやアムステルダムも該当すると思いますが、やはり、コレだ!となるのはヴェネツィアの風景ではないでしょうか。
きっとそうなるのはヴェネツィアが数多の創作物の水の都のベースになっているためだと考えています。私が思いつくものだけで2つあります。あれ、少ない...?
このことにより、ヴェネツィアっぽい街→ヴェネツィアと言えば毛細血管のように張り巡っている運河→海という連想ができるため、川ではなく海、手前の部分は海水が流れる水路と認識することができるのです。
▼ この連想については以下の記事でも触れているので、目を通してみるとより理解できるかも...?
▼ 分けてみると...?
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もともとこの絵の制作段階でのテーマは「明暗」でした。
中心で2つに分けて対照的な絵(と言っても雰囲気は今と同じ)にしようとしていましたが、コレジャナイ感が出てきてしまったので今の形に落ち着いています。
とはいえ、その変更をしたのが制作中盤だったため完成形でも名残があります。
例えば右側は扉にカーテンが微妙な窓のデザインの家です。これは私がよくやっちゃう隙間から光を溢れさせるヤツになる予定だった名残です。
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この線画でもわかるように左側は全て壁にする予定でした。
完成形のように黒板の飾りや草を生やすつもりではありましたが、窓を描く予定は全くありませんでした。そうして光が溢れるものがある右側と光が全く通れない構造の左側で対照的にするつもりだったのです。
※意図などは次のネタバレ含む解説コーナーで扱います。
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左右の柱も単なるデザインではなく意図的なものです。
場面解説で「誰にも邪魔されない状況」と説明したのを覚えていますか?
柱がなくてもロウソクの明かりと暗闇によって2人だけの空間が演出できていますが、横向きの絵の中に柱という縦向きのものを入れることによってメリハリを付け、それを強調しています。
これによって横に視線を動かした方よりも上から下に縦に視線を動かしてこの絵を見た方のほうが多いのではないでしょうか。いや、変わらn(パーンチ 多くあってくれ...!!
もちろん意図的にしたのではなく、偶然もありました。
この柱による縦の意識の強調によってロウソクの明かりがスポットライトのようにも捉えることができる、つまりもっと2人だけの空間を演出しているということです。
今回の解説はここまで! 次回は「厭世の天使」の解説です。
※以下、本編ストーリーのネタバレを含む解説となります。
ネタバレ含む解説コーナー
▼ リード文と「告白」の意味
前回同様に、本編部分を振り返ってみましょう。
概要はすでに説明してあるので、ネタバレを含む部分──話している内容に触れます。物語の公開が追いついてないのにネタバレってなんだよという声は置いておこう。
※現在第一部からリメイクしているため、本編と内容が少し変わる恐れがあります。
▼ 前回の解説
場面説明では敵対という言葉を使ったものの、実際にはエルがライアの息の根を止める直前までいっています。ですが、ジョウケイドット第1弾の宿屋で彼に話しかけていたシャオリが拳でぶん殴ったため未遂に終わっています。
え、なんで一見関係なさそうなこの話を出したのかって?
宿屋での雑談がシャオリの中で動機となり、そのぶん殴りが今回のエルの動機になっているという連鎖の関係があるためです。宿屋の場面がなければ、これが生まれなかったかもしれないと言いつつ、宿屋の場面は本編で省いてライア視点で結局生まれたわけですが...
敵の策、操られていたとはいえ自我は存在した。けれども自分で自分を止められなかった。大切な人を自分の手でなくそうとしてしまった。自分の支配権を取り戻したけれども、片目の色は戻らない。これからも仲間と、ライアと進みたい。けれどももし、またあのようなことをしてしまったら──という葛藤を経て、エルは離れる決断をします。それが赦しになると思って。
せめて彼女だけでも別れの挨拶をと会いに行き、そのことについて話している場面が今回のジョウケイドットというわけです。
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人物解説であげた絵のリード文の意味もそれを踏まえればわかるはず。約2年の時を超えて伏線(?)回収です。ちなみにこの時はオッドアイの役割を別のことで表していましたが、今の方が視覚的にもわかりやすいためこうなっています。
「一人じゃ何もできないくせに」
その言葉は誰に向けたものだったのだろうか。
続いて今作のリード文について。きっと多くの方が忘れていると予想しましたので、持ってきました。こちらのセリフはライアの返事の一部となってきます。
ちなみに「そんなの認めない。またあたしを置いて行くっていうの? その結果がこれじゃない。一人じゃ何もできないくせに。一人じゃ──何もできなかったくせに」というのが元のセリフです。
本当はそばにいて欲しいだけなのですが、口にするのが恥ずかしいのでツンツンしています。しかし段々と勢いがなくなっているのは、自分の言った言葉が自分自身にも当てはまると気づいたためです。
場面説明でも書いたように、世界は滅びかけている状況です。
そのような状況になる最後のトリガーをひいたのは彼女です。エルと同様に敵の策にはめられ、気づいた時にはすでに遅かったのでした。
長年の付き合いからエルも察し、両者ともに『その言葉は誰に向けたものだったのだろうか』となります。
なお、同時に彼女が何を言いたいのかも察していますが「それで、結局どうして欲しいんだ? 俺は全部言ったからな」とわざとからかって、言い逃れができない状況に追い込みます。最初は反抗するものの、負けを認め、今まで通りそばにいて欲しい旨を言います。
こうして2人とも告白をしたわけです。どちらも告白のメジャーな意味である「心の中に秘めていたことを打ち明け」たのですが、エルのほうはもう1つの、宗教的な場合で使われる「罪を告げ、赦しを求めること」の意味も含んでいます。
告白のメジャーな意味つったら、好きって言うことだろ!!という声が聞こえそうな気がしたためおまけ。彼らの関係はあくまでバディ関係、どちらが欠けてもダメな存在の関係です──が、エル→ライアは少し異なるそうです。実際はライア→エルも......?
ヲタが心で叫ぶような、派閥争いが起きそうな関係です。どうなるかはなんとなく決まっていますが...
▼ 周りのモノが示すこと
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再度、赤線で左右2つに分けてみました。少し余談ですが床と壁の境目や今回のような分ける線を私は基準線と呼んでいます。
話を戻してこの左右を間違い探しのように比べてみると、乗り場と船・花壇と植木鉢・カーテンの閉まり具合といった違いがあることがわかります。
まずは乗り場と船です。前回の夕焼と同じように連想から暗示させる役割を与えています。
乗り場であれば乗り物に乗って異なる場所へ行くことを目的としたものということから──なんか難しいので説明放棄、そのままの意味ですね。エルが仲間のもとから離れ、別の場所へ行くことも表しています。もちろん、船とセットで港町っぽさを出す役割もあります。
続いて船は「助け船を出す」という言葉の船から来ています。先程のリード文とタイトルの意味でした場面解説を踏まえると、ライアはエルに助け船を出したということもできます。
異なる見方をすれば、真っ暗な心に希望の光を差したということになります。まさに明暗、これが没構造(壁と窓)で表したかったことです。
その役割が船に引き継がれているのですが、カーテンの閉まり具合(描いていませんが光が外に出て路地裏に差し込むこと)でもこれを表しています。プラスしてライア側のカーテンが閉まりかけていること──やってしまったことの重大さが目を逸らせない形で現れていることで精神が病みかけていることも暗示しています。
次に、というか最後に花壇と植木鉢です。こちらは心情描写です。
花壇の植物は生え乱れており、植木鉢は1つの植物がポツンと生えています。いつもはなんとなくで置いている植木鉢ですが、今回は意味を与えています。
モノの乱れは心の乱れ、ということで植物の乱れ具合はエルの心の乱れを表しています。色んな方向に生えているということから行き先が不明、迷いも表しています。花や蕾がなければ枯れている部分もないことは、前にも後ろにも進んでいないことも表しています。
対して植木鉢は1つだけ、これはライアのなんとなく感じている孤独を表しています。置かれた環境(仲間と旅をする状況)に不満はないけれどもどこか寂しいという感情を、自然に生えるよりも良い環境にいるけれどもさすがに植物1つだけでは物足りない植木鉢で表しています。
──と元から意味を与えて描いているように書いていますが、逆になんとなく感覚で描いた結果意味が出てくることがほとんどです。描き途中に意味が自然と出てくるので、その意味に合わせて変化を加えています。
なんだかネタバレを含む解説の方が長くなってしまったような気がしますが......
今回はここでおしまいです。お読み下さりありがとうございました!