愚痴
愚痴って目に見えないくせに、投げつけられ続けると、決して消えない傷がつく。目には見えないものだけれど、きっとそいつの姿形はおぞましく、とげとげしていて、ねとねとしているのだろう。人は、そいつを心の中に飼っておくことが出来ない。飼いならすことが出来ない。だから、静かに聞いてくれる誰かに投げつけて自分の中から追い出す。誰かに押し付けて自分は解放された気になる。投げつけられた人は、そいつを黙って受け入れる。どんなに痛みを感じても、苦しくても。「聞いてくれるのはあなたしかいないから」のたった一言だけで、どんなに重くても、傷がついても、受け取ってあげている。私は感情のごみ箱になんかならないわ、と心に決めて、話を聞いている人でも、気づかないうちに小さな傷がたくさんついている。そうやって強くあろうとする人ほど、その小さな傷を見ないふりする。
誰かが救われたら、誰かが傷つく。この世の中は、他にも、数えきれないほどの理不尽の上に成り立っている。もうここから降りてしまいたいと、願っても降りた先には、別の理不尽が待ち受けている。
どんな人にも感情はあって、それは決してコントロールできるものばかりではなくて、自分一人で処理できるものばかりではない。だからといって、優しい誰かにぶつけていいとは限らない。それを肝に命じて生きていかなければならない。何で誰もそれをわかっていない。
私はもう、ここから降りない。降りるのではない。最善の方法をとる。生きることをやめるのだ。
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