終演しました
3月に立ち上げ、4月から稽古を開始した雪粉プロデュース公演が終演しました。ご来場いただいた皆様、本当にありがとうございます。
今まで演劇活動はしてきましたが、拠点を大阪に変えたタイミングで、メンバー募集も劇場探しもして、すべてまっさらな状態から自分で作り上げた公演でした。
今公演、学びもたくさんありましたが、一言で表すならカルチャーショックでした。様々な団体から寄せ集めたメンバーだったので知識・経験・文化が異なり、組織がしっかり確立されたいわゆる体育会系の学生劇団で鍛え上げられた私からすれば、ルール無用で自由に動くメンバーに驚きの連続でした。
一言で演劇人といっても、役者一本でやっている人と、私のように何から何までやる人とでは考え方も違うのでしょうが、とにかく暴れまわる演劇人たちを率いて公演を作るのは至難の業でした。
ただ、今回の企画趣旨は「とにかく演劇をやりたい人が演劇ができる場を提供し、演劇を観たい人が気軽に観に来れる公演」で、オーディションも課さず役者もスタッフも経験不問で全員受け入れたので、暴れまわった結果本番を楽しんでくれて、お客様にも楽しんでいただけたなら目的は達成したと思っています。
しかもコロナがまた猛威を振るい始めるという災難もふりかかり、それでも無事に公演を終えることができたという意味では大成功です。我ながら無謀な挑戦をしたなと思いますが、同時にそれをやりきった自分を、さすがに今回は褒めたいです。
他団体さんもそうだと思いますが、このご時世で演劇をすることの難しさ、主宰としての責任の重さは計り知れません。メンバーとお客様の健康を守りつつ公演を打つというのはそもそも相反することなので、どう対策すれば良いか、中止の判断をすべきか悩みました。連日他団体さんの「公演中止」のツイートが目に入り、次はうちの番かと毎日肝を冷やしました。公演中止のご判断をされた団体さんは、本当に苦渋の決断をされたと思います。
演出としては、もっとたくさん役者に稽古をつけてあげたかったというのが本音です。コロナの影響もあり稽古に人が揃わず、演出側も役者側も妥協点を見つけなければならなったのは残念でした。ただ現実的に実現可能な範囲では一切妥協していないので、私たちの今できるすべてを本番にぶつけることはできたのではないでしょうか。
自分を1番後回しにしてでも演出としてメンバーの稽古を見てあげたかったので、役者としての自分にはつらい思いをさせる稽古期間でした。稽古ができていないので当然なかなか役作りも進まず、役者の自分が今までの経験で本番を乗り切ってくれました。役に愛情はもっているので、役が寄り添ってくれたのかもしれません。
他に照明、衣裳小道具、制作などもやったので、自分が7人くらいいてそれぞれのパートで人格が切り替わるような不思議な感覚がまだ残っています。今まで兼任上等でたくさん兼任してきましたが、さすがにここまで自分でほとんどやったのは初でした。正直めちゃくちゃ大変だったけど、演劇人、少なくとも演出家は全パートを知っているべきというのが持論なので、今回はとても良い機会でした。そんな機会を与えてくれた自分に感謝です。
本当に色々あった公演でしたが、とにかく今公演を無事に終えることができたのは、ひとえにご来場いただいたお客様、場所をお貸しくださった劇場様、そして参加してくれたメンバーのおかげです。
終演後、劇場の方より「1人でよく頑張ったね」と声を掛けていただき、そこでやっと肩の荷が下りて素の自分に戻ることができました。
すべてはお客様と演劇をやりたい人たちのためにと駆け抜けてきた約5か月、コロナ禍で大所帯を率いるという、今までなら逆に誰も経験できなかった苦境を経験できたのは幸運だと思い、今後の活動の糧にしていきたいと思います。
あらためてご来場の皆様、関係者の皆様、そして私を支えてくれた家族に心より感謝します。ありがとうございました。