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彼を待ちながら
今、この記事を書いているのは、都内のとあるマンションの一室です。繁華街の片隅に位置しているにも関わらずとても静かな場所で、この部屋にはビルの隙間を縫って、暖かな陽射しが届いています。
私がこの部屋を選んだのは、この明るさが気に入ったから。このあたりで部屋を借りるとなると、陽当たりの良さを条件とするのは至難の業だと思う。でもどうしても明るい部屋にしたかった。夏は地獄の暑さかもしれないけど、それでもどうしても明るい部屋にしたかった。
理由は単純です。
暗い気持ちになりたくなかったから。
どうして暗い気持ちになりたくなかったか、これもまた単純な理由によるものです。
私は夫に黙ってこの部屋を借りるから。
身分はまだ一応既婚者です。主婦が恋人と会うために部屋を借りる。信じられないかも知れませんが、私はそれを決行しました。今もこれまで通り、家族の住む家に暮らしています。でもときどき、時間の合間を縫ってはこの部屋に来て、ひとりで過ごしています。
ひとりになる、その解放感を味わいたかったから。恋人と会う、その逢瀬を後ろ暗いものにしたくなかったから。この部屋に、背徳感や罪悪感を1ミリも寄せつけたくなかったから。
それが、この部屋を選んだ理由です。
恋人と会うために部屋を借りる、と書きましたが、その恋人はまだ一度もこの部屋に来てはいません。それどころか、私は彼にもう2年近く会えていません。
彼は毎日メッセージをくれます。今のところ私たちを繋いでいるものは、その毎日のメッセージしかない。もう長らく会うことも叶わないし、この先どこまで待てば会えるのかもわかりません。仕事で一度海外に行ってしまうとしばらく戻れない、そういう仕事なのもわかります。忙しいのは事実なのでしょう。
それでも。
この2年、私に会えそうな日は一日もなかったの?
2年会えないなら、デートできなくてもいいから、顔を見るだけでもいいから、その10分も作れなかったの?
と書くと「いやいや、そんなわけないでしょ。単に彼はもうあなたに会う気がないだけでしょ。他に女が居るに決まってるよね笑」と100人中100人が言うでしょうね。
否定はしません。私もその立場なら、同じことを言うでしょうから。
そしてそんなことは、散々考えてきました。なんせ2年もありましたからね。それだけじゃない、考えられるありとあらゆることを考えました。それを何周もしました。何周もしているうちに、それらは冷えて固まり、風化して、砕けて、もうそこに何があったのかも思い出せなくなりました。
2025年1月、今私が居る場所は、そんなところです。
彼を待ちながら、そんな私の思うことなどを書いて行こうと思っています。