#04 自分のなかにウェブをつくる
学びはYouTube先生のなかで完結しない。
デジタルとアナログの往復が学びを深くする。
学びをYouTubeのなかで完結させない
「#01 YouTube先生で学ぶ極意」で、次のように書きました。
YouTube先生で学ぶ極意は、
逆説的だが、YouTube先生の外に出ることである。
今回は、「YouTube先生の外に出ること」についてお話します。
この言葉の意味は、簡単にいえば、YouTubeのなかで完結させないということです。YouTube動画を観ている人のなかには、動画をみて「面白い」「なるほど」と感じて、そこで終わる場合も多いでしょう。もちろん、単に楽しむだけならそれで十分です。しかし、学びを深めるためには、動画に出てきた事柄について調べる、本を読む、現場に行く、といった次のアクションをとることが重要です。さらに、デジタルとアナログを行ったり来たりすることをおすすめします。
では、具体的な例をみていきましょう。
企業人だけではなく、これから就職活動をはじめようとする大学生にもオススメのチャンネルのひとつが、ものづくり太郎さんの「ものづくり太郎チャンネル」です。このチャンネルは、ものづくり太郎さんのプレゼンがひじょうにわかりやすく、ものづくりの分野だけではなく、社会や産業全体の動きを考える意味でも役に立ちます。社会の先を見通すという意味で、投資家に人気だそうです。
たとえば、「インダストリー4.0」の解説回をとりあげてみます。動画の具体的な内容については、ぜひ動画をみて確認してください。
この動画のなかで、インダストリー4.0を理解するためには「トヨタ生産方式」を理解する必要があることや、その生みの親である大野耐一氏の『トヨタ生産方式』が紹介されています。
そこで、YouTube先生の外に出て、この本を読んでみるとよいでしょう。私も『テキスト 経営人類学』のなかでふれています。本を読むと大野耐一氏の発想が、アメリカのスーパーマーケットの仕組みにヒントを得ていることがわかります。このように、異分野の仕組みやアイデアを模倣することは、さまざまな企業に広くみられます。たとえば、クロネコヤマトの宅急便をはじめた小倉昌夫氏は、当時、牛丼一筋に絞って営業していた吉野家にヒントを得て、取り扱う荷物を絞り込むアイデアを思いついたといいます。
さて、この動画のなかで、トヨタのグループ企業や自動車関連企業の名前が登場します。今度は、それらの企業のホームページをみたり、株価の変化を調べてみるのもよいでしょう。また、業界地図を示した本をみて、業界全体を俯瞰することもおすすめします。さらには、この動画と関連がある他の動画をあわせて観ることで、理解がさらに深まります。
自分のなかにウェブをつくる
このように、YouTube先生を起点としてデジタルとアナログを往復することは、点と点を結んで線にし、線と線を結んで面にすることを意味します。
上図のように、線と線から面ができると、その面のなかに未知の点(グレーのマル)があったとしても、既知の点(黒マル)と結びつきやすくなり、また、面の外にある未知の点でも、類似する(あるいは近接する)場合、既知の点と結びつきやすくなります。
脳のなかの神経細胞(ニューロン)が結びついて記憶が強くなるのと同じで、点と点の結びつきが強くなると、学びそのものが立体的で深いものになるはずです。このように、いわば自分のなかにウェブをつくる習慣が一度できれば、加速度的に学びが広がっていきます。(続く)