化学調味料を否定する危ない食文化
昨日の何気ない日本のコンビニについてのコラムをポストした途端に、化学を否定する方々からのコメントを数本頂いた。だいたいの趣旨は、コンビニ=化学調味料・添加物に汚染されているから危ないという趣旨のものだ。こういう人たちのことを僕は無化調論者という、要は自然が一番いいという思想の人たちだ。
まずその最たる例が味の素に代表される旨味調味料だ。味の素の主成分はグルタミン酸ナトリウム(MSG)という旨味成分である。この旨味を発見したのは1908年に東京帝国大学理学部化学科の池田菊苗教授により発見された。このMSGによって身体に悪影響が及ぶというのは完全なる非科学的な説である。
このMSG悪者説が発症したのは、アメリカにおいての1960年代に遡る。Chinese Restaurant Syndrome(CRS)という現象が起きた。これはMSGを使用している中華料理を食べた人が体調不良を起こしたと主張したことに始まる。アミノ酸のグルタミン酸は脳における神経伝達物質であり、多量に取ると脳内のシナプスが過剰反応し、神経毒化される可能性があるという仮設が唱えられた。後にこの学説は否定されているが、未だに半世紀以上前のストレオタイプイメージが大衆レベルでは払拭されることはなく、アメリカの中華料理屋ではNO MSGを唱っているところが多い。
冒頭の日本における無化調論者の考え方も、大体のアメリカ人的な考え方に近い。以下のビデオはDavid ChangシェフによりMSGの実験である。MSGがたくさんは入っている(と思われている)中華料理を食べた後の身体の異変を、MSGが入りまくっているチップスを食べながら語ってもらうというシニカルなジョークだ。Facebookのアカウントを持っている人はぜひ動画を見てほしい。
サイエンスを否定している人たちはこういう人たちと同じ無類の可能性があるということを考えた方がいい。もうひとつ、精製塩を否定する人たちがいる。天然塩ではなく身体に悪いというものだ。精製塩=科学的に作られた人口塩という論理だ。この人達も根本的にサイエンスが分かっていない。精製塩というのはだいたいが海外産の塩を溶解して塩化ナトリウムが99.5%以上の高純度にしたもののことを言う。塩=塩化ナトリウムということが分かっていない人が多いだけの話だ。天然塩となめ比べると、ストレートな塩味が届く。天然塩は少し丸い、それは簡単な話、塩化ナトリウムの成分量が低く、これは塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化カリウムなどのミネラル分を含んでいるだけのことだ。
スープなどに高い天然塩を使う必要は全くない。もちろん趣味の世界や自己満足の世界、あるいは謳い文句でいいたいという人はそれでもいいのかもしれないが、精製塩で旨味を別の素材で足していった方が、味ブレもせずに安定するのである。
化学を否定する人たちに僕は言いたいのが、サイエンスのエビデンスに基づいたことが如何に重要かということだ。またテクノロジーの進化があって、初めて今まで高かった調味料や食材がより安価で多くの人々の手に届くようになったという事実も忘れてはいけない。
(メイン写真は今日の家の昼食。20分以内に作るので、市販の化学調味料も含む調味料なども合わせて作っている。)