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作品のない展示室

世田谷美術館で開催中の作品のない展示室に行ってきた。

タイトルの通り、作品はない。

側だけがあり、ぼくたちがいる。観る対象は「側」だ。

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観るものがないので、みんな窓を見る。外の景色を見る。時々、歩いている人が通る。

観るものがないというのはこんなに不安になるものか、と驚いた。そういえば、普通の(というか)展示なんかで、ぼくたちは、絵を観て、作者や解説が書いてあるプレートを見る。絵が抽象的すぎると、プレートの方ばかり見てしまう。

人間は、理解がしたい。

しかも現代ではすぐにスマートフォンでなんでも調べられる。ぼくたちは今や「わからない」ことに耐えられない。

今回のこの展示は、コロナ禍においての苦肉の策とばかり思っていたけれど、かなりユニークな体験ができた。

観る対象もなく「個」としてそこに在るというのがこんなに不安なものなのかと気づいた展示でもあった。

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展示が終わり、雷と激しい夕立がやってきて近所に住む友達の家に避難。

缶ビールを飲みながらharuka nakamuraの『スティル・ライフ』を聴く。

自転車に乗って、友達の家に行くなんて学生時代に戻ったような気分になる。

レコードを聴きながら、過去の話をする。2020年、コロナ時代の午後。

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