(その4)死体検案書捏造炎上事件:死亡診断書/死体検案書に対する誤解
今回の死体検案書捏造炎上事件で判明したことは、医療従事者(主に医師を名乗る人物)が死亡診断書/死体検案書についての誤解または知識がないことです。
あまりにも堂々と上から目線で間違ったことをTweetするため、その都度反論してきましたので、その多くの誤解についてまとめてみました。
🔳 死体検案書とは?
医師が死体を検案(死体は診察できないため検案という)した際に記載するものです。救急車で心肺停止で搬送された場合は心肺蘇生術をそのまま継続します。蘇生に成功せず一度も心拍再開がなかった場合は「死体が搬送されてきた」ということになります。その際には死体検案書を書くということになります。一度でも心拍再開すれば「生きていた」という判断になりますので、その後すぐにERで亡くなったとしても死亡診断書となります。
🔳 捏造だという根拠とそれに対する回答
死体検案書は警察が書くものだ
死体検案書も死亡診断書も医師が記載します。これは検案書は事件性があるものだという誤解から生じたものです。
死体検案書と事件性とはなんの関係もありません。
異状死なら検案書、病死なら診断書
この誤解が一番多かったと感じました。世の中のほとんどの医師が勘違いしていると思います。検案という言葉と検視(検死)が似ていることからそう思っているのかもしれませんが、全く関係ありません。同様に死体検案書と異状死もなんの関係ありません。
異状死とは?
ちなみに異状死とは・・・
上記条文があるだけで、「異状死」自体の定義がないことが混乱を招いていたのですが、 平成6年び日本法医学会が異状死ガイドラインを出して「異状死」を下記のように定義してます。
この後、このガイドラインに対して医療過誤等に対する対応などで外科系学会から異論が噴出したのですが、それはここでは省きます。
このように典型的な間違いを堂々と、どや顔で論じる医師が多いのには驚愕しました。
病院に運ばれたのに死亡した場所が書いてない/射線が引いてある
これも典型的な間違いですが、搬送されて死亡が確認されたとしても死亡した場所はあくまでも故人が亡くなった場所です。病院ではありません。ですから病院の場所を記載するところに斜線が引いてあるのです。本件の場合は路上で急死されてますので、その道路の住所が書かれてあると思われます。
死亡診断書で書くべきところを死体検案書で書いてある
単なる勘違いと無知にも関わらず平気でツイートする連中が多いです。
病院に搬送された時点で死亡していたと判断された場合は「死体検案書」となります。心配蘇生術を施行したかどうかは関係ありません。どうも心肺蘇生術を行った時点で生きているものとしている医師が多いようで驚きました。
傷病の発生から死亡までの時間を「短時間」とか「推定」で書くことはない
これは逆に「短時間」「推定」という言葉を記載していたからこそ、その道のプロが書いたものだと私が確信した理由です。病院前で急死した場合は正確な時間などわかりようもありませんので推定で記載しますし、傷病の発生からから死亡までは短時間と記載します。
上記文献にも「短時間」「推定」などという記載が例として挙げられています。
書類の様式が違う 捏造している あるはずの注釈がない
全国の病院で全く同じ書類を使っていると思っているようですが、間違いです。政府は様式を示していますが、別に政府から死亡診断書/死体検案書の紙が送られてくるわけではありません。このような様式で記載して提出せよということです。現在では電子カルテ上からPC入力して署名してますので、各ベンダーが様式を整えてPC入力/出力できるようにしています。
(その2)にも書きましたが、Googleで死亡診断書と入力して画像検索するとさまざまな書式が出てきます。注釈を省略しているのも存在します。
傷病名がICDに準じていないから捏造
傷病名がICDという「疾病及び関連保険問題の国際国際統計分類」にはないものを使っている!だから捏造だ!という主張があります。
しかし死亡診断/死体検案書の傷病名にICDに準じて記載しなければならないというルール自体がありません。
これは死亡診断書/死体検案書を提出された厚労省が、その死亡原因からICD分類に準拠して人口動態統計として発表しているものです。
記載する医師はICDに準じて傷病名を記載する必要はありません。
ワクチンが原因だと断定することはできないから捏造
この意味不明な反論も多いですが、最終的に解剖まで行ってワクチンによる血栓が原因であると監察医が判断したからには、それを持って捏造と喚くことは論理性がありません。
監察医の判断がおかしいと主張することは仮にも可能かもしれませんが、そこから捏造だというのは論理的に飛躍しています。
🔳 死体検案書だと費用が高額になる??
病院で発行する場合、死体検案書も死亡診断書も費用は数千円で同じです。
死体検案書=解剖が行われる というわけではありません。
検視は警察が行なうもので、事件性がないかを確認するだけの簡単なものです。もちろん検視でお金を取ることはありません。同様に司法解剖も国の負担で行います。
自宅で亡くなった場合に限って、保管等で地域によっては費用が発生することもあるようです。東京では全て公費負担です。
この葬儀社サイトの記載を読むと死体検案書だと高額になるように誤解されてしまいます。
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