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聴かせて!「さぬき市津田地区まちづくり協議会」のわがこと
ここ数年、県西部では父母ヶ浜のある三豊市が注目されています。一過性のバズりに留まらず、地域活性化にしっかり繋がっているのが素晴らしいですよね。
一方で、県東部のある海辺の町も、決してバズってはいないかもですが、着実に面白くなっているのをご存じでしょうか。
今回のきかことはちょっと足を伸ばして、さぬき市津田地区でのまちづくり活動についてお伺いしてきました。
「聴かせて!みんなのわがこと(きかこと)」とは?
香川県内でとても素敵な活動をされている個人や団体にスポットライトを当て、「共感の輪が広がっていってほしい」という想いから、その活躍や想いなどのわがこと(我が事)をインタビュー形式でお届けします。
Vol.21
一般社団法人さぬき市津田地区まちづくり協議会
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津田の魅力を創り出すこと、発信すること
——お二人の自己紹介をお願いします
黒川さん:さぬき市津田地区まちづくり協議会の理事をしています。
本業は津田地区で、「うみの図書館」という図書館と宿泊施設が一体となった複合施設の運営と、「まち宿AETE」という一棟貸しの宿の運営をしています。
折原さん:ぼくはまちづくり協議会のメンバーではないんですが、さぬき市地域おこし協力隊員として、SNSを中心にさぬき市の広報活動に取り組んでいます。
それと、津田地区で「シェアハウス凪」という名前でシェアハウスを運営しています。
——まちづくり協議会はいつ頃立ち上がったんでしょうか
黒川さん:もともとは漁業関係者を中心に、漁業活性化のため農泊事業をやろうという話から、その受け皿として「さぬき市津田地区漁業活性化協議会」が2020年11月に発足しました。
ぼくはその時は宿泊業を営む一事業者として参加していたんです。
その後、漁業だけじゃなくて地域全体の活性化を推進しようという機運が高まって、2022年1月に一般社団法人「さぬき市津田地区まちづくり協議会」が立ち上がりました。
——具体的にはどんな取り組みをされているのでしょうか
黒川さん:主には2つの事業をやっています。1つは漁業倉庫をリノベーションした飲食店「PORTO PIZZA」の運営。もう1つはさぬき市と連携して地域おこし協力隊員の採用・受け入れをしています。
関連して 関係人口創出のための事業企画・運営や、さぬき市でお店を立ち上げる若手経営者のサポートもしています。
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——津田地区は最近新しいお店も増えていますね
黒川さん:景勝地として有名な「津田の松原」の北隣に、「ふるさと海岸」と呼ばれる全長1㎞の綺麗なビーチがあります。
この海沿いの地域に少し前からごはん屋さんやスパイスカレーのお店、グラノーラ専門店、藍染め工房、バリ島雑貨のお店が並ぶようになりました。
もともとの津田の中心街から外れたこの地域のことを、ぼくたちは「ウラツダ」と呼んでいます。全部で13軒ほどのお店があるんですよ。
「PORTO PIZZA」もそんな魅力ある「ウラツダ」に作ったんです。
この地域でピザやワインが楽しめる飲食店があったら嬉しいし、そんなお店をやってくれる人が出て来てくれるといいけれど、飲食店って初期投資が重いのでなかなか難しい。
それならまちづくり協議会がお店を作って運営しよう、と。お店で働く人は、地域おこし協力隊員として外から来てもらうことにしました。
結果として地域の魅力創出と、地域の仲間を増やすことに繋がったんです。
——なるほど、だからまちづくり協議会が店舗運営にも取り組んでいるんですね
黒川さん:本業の「うみの図書館」も、地域への関係人口を増やす取り組みです。
ここは築60年の古民家を改装した施設で、海にまつわる書物ももちろんあるんですが、「漂流文庫」というネーミングで一般の本も置いています。
漂流文庫の本は、地域内外から寄付してもらってここに流れ着いた本という意味もありますし、全国に連携拠点があってここで借りた本を他の拠点に返すことで、実際に本が漂流していくみたいな面白さもあります。
ゲストハウスも併設している「泊まれる図書館」なので、各地の連携拠点で「うみの図書館」を知ってくれた方が泊まりに来てくださったりするんですよ。
——もともと魅力のある場所に、魅力的な場所がどんどん増えていますね
折原さん:多くの人がそうだと思いますが、その土地でずっと暮らしている人にとって地元の景色や伝統は当たり前すぎて、地域をよくしたいと思っても当たり前のことをブラッシュアップするのって難しい。
「よそもの」の視点で、さぬき市の人にとって当たり前にある「良さ」を発信できれば、というのはありますね。
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木のぬくもりとたくさんの本に囲まれた、とても居心地の良い空間です。
「免許留学」で関係人口を
——黒川さんが津田で活動をはじめたのはいつ頃でしょうか
黒川さん:ぼくはもともと津田の生まれで、大阪の大学に進学していました。
大学4年生だった2020年の春に帰省で戻ってきたんですが、ちょうどコロナの緊急事態宣言が出て、大学から「戻ってこないように」と言われてしまって(笑)
どうせやることがないならと、卒業旅行のために貯めていたお金で会社を作り、祖父が持っていた納屋を改装してゲストハウスにしたのが始まりです。
セルフリフォームで数十万円程度でできましたが、初年度100万円、2年目300万円、3年目は500万円の収入になりました。
一棟貸しなので逆にコロナでも人気だったんです。
先ほどお話しした「漁業活性化協議会」から声がかかったのは、その1年目の秋でした。
——4年前はまだ学生だったんですね!もともとまちづくりに興味があったんでしょうか
黒川さん:祖父が建築士の資格を持っていたのもあって、建築の仕事に憧れはありました。
「大改造!劇的ビフォーアフター」とか好きで見ていましたね。
それで、将来を考えたときに一個の建築よりも、町全体のことを考えたいなと思って、大学で農村・漁村の都市計画を学んでいたんです。
たとえばカフェがほしいなとなったらどのくらいの費用がかかるのか、どうやったらビジネスとして成立するのか、ということも考えていました。
学外でも自分で全国各地のまちづくり事例を見に行っていて、そのうちメンバーを募ってまちづくり視察ツアーを立ち上げたりもしましたね。
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ドルフィンセンターのオーナーさんや飲食店の店主さん、電気設備会社の社長さんも
——自ら行動されているのがすごいです!折原さんは地域おこし協力隊員で初めて津田に来られたんですよね
折原さん:そうです。ぼくは徳島の出身で、2021年に地域おこし協力隊員としてさぬき市に来ました。
ぼくが来る前にさぬき市で採用した隊員が4人いたんですが、そのうち3年の任期終了後にさぬき市に残ったのは1人だけでした。
全国平均の62%と比べて、そこが課題だったんです。
ぼくが来た次の年にまちづくり協議会ができて、隊員の採用に関わるようになりました。
まだ任期が終わっていないので結果はこれからですが、着実に良くなっていると感じています。
——さぬき市に来ようと思ったのはなぜでしょうか
折原さん:当たり前からの脱却のために徳島から出たかったというのもありますが、ぼくの地元も海に面していたので海のそばがいいなというのはありました。
ちょうどさぬき市の募集が出ていて、SNSで地域の魅力を発信するという仕事内容も面白そうと思ったんです。
徳島の海は太平洋に面していてサーフィン文化が盛んですが、車で1時間走っただけなのに全然違う、瀬戸内の穏やかな海もまたいいなと感じています。
——いまは協力隊の仕事もしながら、シェアハウスの運営をされているんですね
折原さん:そうですね。最近は黒川さんと、地元の自動車学校とコラボした「免許留学」にも取り組んでいます。
よくある「免許合宿」だと地方の自動車学校に2週間くらい集中的に通って免許を取るんですが、免許を取るためだけに行くので地域と繋がらないんです。
「免許留学」の場合は1ヶ月くらい来てもらって、免許を取りながら地域でいろんな体験をしてもらっています。
免許合宿は期間が短いほど料金が高くなるので、期間を延ばして料金を抑えた分、滞在費用にまわすことができるんです。
——面白い取り組みですね!免許合宿のイメージが変わりそうです。
黒川さん:関係人口を創り出すには、接触回数を増やすか、滞在時間を増やすか、なんです。
学生さんだと交通費がかさむので、じゃあ滞在時間を伸ばそうと。
でも、もともと地域に興味ある人じゃないとなかなか津田を選んで飛び込んで来れないんじゃないか。そもそも選んで行くんじゃなくて、行かなければならないから行くもの、なんかないかな、と。
免許合宿は相性がよさそうだなと思っていたら、自動車学校さんも合宿施設を持ってないので外からの呼び込みができなくて困っていることが分かったんです。
それなら滞在施設を持っているところと組みませんか、と提案を持ちかけたのが始まりです。
「免許留学」に来てくれた人が半年後にまた遊びに来てくれたり、免許を取ったあとにドライブで来てくれる人もいるんですよ。
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勉強会をしたり、映画を見たり、使い方はいろいろ
多様性のある人材のいる町に
——津田のまちづくりのうえで、課題はありますか
黒川さん:移住者は増えているんですが、プレイヤーの年齢層が若年層に偏っているのが課題と言えば課題です。
同様に移住者が増えている三豊市と比べると、あちらは地域の二代目、三代目の人も結構います。すでに地盤があり、事業を継承したうえでチャレンジしている人が多いです。琴平もそうですね。
津田はもともと地盤がある人が少ないですし、移住者のタイプとしても他地域で成果を出してから移住している人が少なくて、これから何かしたいという想いを持って移住している人が多いです。
なので、津田で初めてのチャレンジをしようとしている人たちをどうサポートしていくかが重要と思っています。
資金面もそうですし、広報の面でも新店オープンの情報発信をまちづくり協議会で代行してあげたりしています。
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ステキな写真の数々はインスタグラム @sanuki_chiikiokoshi で
——移住者が増えるだけではなくて、いろんな人がいることが大事なんですね
黒川さん:たとえば外から人を連れてくるのが得意な人とか、ガイドが得意な人とか、多様性が大事だと思います。
ただ、もう空き店舗もないし、今のリソースの中でできることは少なくなってきていますね。
これまでは「ウラツダ」という狭いエリアに絞って、そのなかにお店を次々にオープンさせることで注目されている部分もありました。これからはノウハウを持つ人、お金を持っている人、といったように外部からリソースを調達していく必要があります。
0を1にする段階が終わって、これからは1を10にしていく段階なのかなと思っています。
そうなると、今チャレンジしている人たちを支援する人たちもいたらいいですね。店舗を作る人だけでなくて、店舗のPRをしてくれる人とか。
そのあたりがこれからの課題かなと考えています。
——そんな人たちが関係人口の中から出てきてくれるといいですね
黒川さん:そのためには、まちづくり協議会も中間支援組織としての体制を強化していくことが大事です。
自主財源を持って、まちづくりに対して予算を出せるくらいになると、できることも違ってきます。
ここで暮らしたいけど、働き口がないから来れない人たちを逃してしまっている。それはすごく残念なことだと思っています。
人手が必要で、でもマニュアルさえあれば短期間でも日雇いでも働ける場が町の中にほしいです。
そうして人が増えれば飲食業の売り上げも上がって、もっとお店も増える。
いまは高松に働きに行ってしまって、高松でランチしてコーヒーを飲んでいるわけで、それを地域内でお金が循環するようにしたいですね。
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テイクアウトして海辺で食べるピザ、美味しそうです
自分の好きなことで稼ぐ
——折原さんは来年春の協力隊任期終了後も、津田に残られるのですね
折原さん:シェアハウスができるまで、津田には中長期で滞在できる場所がなかったんです。
ここに来てしっかり学びたいという人にとって、一泊二泊では短いとなったときに、地域に寄与するならこれだなと思ってスタートしました。
津田に特化したことをやっていきたいというのももちろんありますし、一方で「自分の好きなこと、興味のあることで稼ぐ」というのもやっていきたいと思っています。
そのひとつとしてアロマの事業をいま立ち上げています。
もともと香りに興味があって、たとえばその人の印象はファーストコンタクトでかなり決まる、というのはよく言われることですが、視覚だけじゃなくてその人に合ったパーソナルな香りとか、空間にマッチした香りなんかをデザインしたら面白いんじゃないかと。
——それは確かに面白そう!
折原さん:あと趣味で弓道をやっているんですが、武道ってちょっとやってみようかな?っていうのが難しいですよね。どこに行けば教えてもらえるのか分からないし初期費用もかかるし、めちゃくちゃ敷居が高い。
だからハードルを下げたいと思って、マルシェや神社で体験イベントを開催しています。
黒川さん:ちなみに折原さんは今年の国体にも出場している、現役バリバリの競技者なんですよ。
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ビーチで弓を引くというのがなんとも面白いですね
——国体選手に教えてもらえるなんて、素晴らしい体験ですね!
折原さん:ただ、弓道を職業として稼いでいる人ってほぼいないんです。柔道や剣道だと実業団だったり整体の仕事についたりというのがありますが、弓道の整体ってないですし(笑)
弓道で少しずつお金を稼ぎたい、好きなことをして稼ぐというモデルケースに自分がなりたい、というのも考えています。
——「自分の好きなことで稼ぐ」って大事なことだと思います!黒川さんもご自分のやりたいことを仕事にされていますね
黒川さん:地域のなかでいろいろ試してみたい、というのは確かにありますね。
図書館をつくるときも協力隊の募集も、こうやったらうまくいくんじゃないかなと仮説を立てて、それを試すのが好きなんです。「シムシティ」とかまちづくりのゲームってありますけど、あれをリアルでやっている感じかもしれないです。
津田に新しいお店が増えていくのを見て、飲食店だけじゃなくて図書館があれば町のランクが上がるなと思っていました。図書館がある町って外からの見え方、空気感が変わるなと。
町を俯瞰で見て、次に何があればいいかな、とゲームみたいに考えています。
津田はサイズ感がいいなと思うんです。
他の場所で活動することも考えていたんですが、地元ということとあまり広くないエリアということもあって、全体に目が行き届く。それこそゲーム画面ぐらいのサイズでちょうどいいなって(笑)
さぬき市の中ではポテンシャルが高い地域だと思うので、それを生かしていきたいですね。
——今後の展開について教えてください
黒川さん:津田に来たらまずはこれをやる、というものが必要だなと考えています。名物料理を食べるとか、ほかではできない体験とか。定番のお土産もほしい。
そのために、まちづくり協議会も自分の事業でもしっかり稼げるようになりたいですね。
あと、関係人口創出の取り組みとして、津田を舞台とした絵本づくりを今やっています。実際に絵本作家さんに津田の町を回ってもらって、絵本を書いてもらっているんです。
地域プロモーション動画ってありますよね。地域の魅力を伝えるには空気感を届ける必要があって、写真やポスターよりも動画のほうが伝わりやすい。それもタイパの時代なので5分くらいの短い時間で伝える必要があります。ただ、動画はもう供給過多なのでなかなか見てもらうのは難しいところもあります。
それならご当地絵本は? と思ったんです。
絵本の舞台が実際に存在していて、モチーフとなった街に訪れてみようかな、となったり、連携先の図書館に置いてもらったり。
地域の広報拠点として、絵本がパンフレット代わり、動画代わりになってくれたらいいなと思っています。
——黒川さんにとっての、まちづくりのゴールってなんでしょうか
黒川さん:ぼくのなかでは、小豆島と津田の間に定期航路を作ることが最終目標なんです。
もともと港町として栄えていたところだし、来年の瀬戸芸も誘致したし、海上からの交通があるといいなと思っています。
遠ざかる船に手を振っているシーンで「第一章 完」ってテロップが出たら、それこそゲームのエンディングみたいでいいですよね(笑)
取材を終えて
ずっと気になっていたウラツダに訪問し、舞台裏の熱い思いも聞くことができて、本当に楽しいインタビュー時間でした。お若いお二人が、まるでゲームを楽しむかのように町を活性させている様子は、とても頼もしくて、次はどうなっていくんだろうとまるで映画を見ているかのようなワクワク感がありました。
うみの図書館では本についたQRコードを自分で読み取り、2年間まで借りることができて、全国のどこの連携拠点でも返却可能、出会った漂流文庫との一期一会を楽しめます。本を巡る旅、なんてしてみたくなります。また町を題材にした絵本は子どもから大人まで楽しめ、町のパンフレットが絵本という発想も斬新です。
ワクワクの種を次々と蒔き続けている津田地区からこれからも目が離せません。津田から小豆島への船旅が実現する日を心待ちにしています!
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リアルなまちづくりのお話、とても面白かったです!ありがとうございました。
さぬき市津田地区まちづくり協議会
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さぬき市地域おこし協力隊
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まち宿AETE
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シェアハウス凪
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