私は土になりたい。
少し前にとある花火大会のアルバイトに行った。花火大会なので、観客が多く来場される事が予想されるため、スタッフの人もたくさんいた。
私はう回路に立って駅の方に案内する係となった。駅から会場まではまっすぐ一本道なのだが、途中で強制的に歩道橋を使わせたり道が狭いということもあり、歩道の幅が広いう回路を設定した。また、会場周辺には多目的アリーナや商業施設などが点在している。その日も他の会場では大規模な音楽ライブや催し物が行われていた。なので、駅周辺広範囲にわたって大混雑が予想できる。
イベント開始は18時。昼過ぎから交代で道に立っていたが、立っていただけだった。暇すぎて、ネタ練習をしていた。何の事件も起きず展開もない。
ずっと一人で立っていたのだが、18時半くらいに見知らぬ若い女性と男性スタッフの2名が来た。本来の交代相手はどこか違う場所に行ったらしい。女性が言った。
「なんかここでお客さんを誘導してくださいと言われたんですよ。宜しくお願いしますね。」と言って、私から3から4メートル左に離れたところに2人は立った。
私も軽く挨拶した。私はどうせしゃべることもないだろうと思っていたから、相手の挨拶を流して聞いた。花火大会はまもなくクライマックスを迎える。
まだ、花火大会は終了しないので私の立っているところに人は流れてこない。だから、夜空に打ち上げられた花火を私は見ていた。久しぶりに花火をしっかりみたような気がする。派手を堂々と見せつけてきたのに、すぐ消え落ちていく様が、今の私を物語っているように見えた。花火を見ながら人生の後悔や苦しみを考えてしまった。
なんとなく2人が気になって、横を見た。蟻も通るスペースがない狭い間隔で、2人は楽しく話しているではないか。
私は激怒した。そのような感情になってしまうと嫌でも話が聞こえてくる。
どうやら女性は男子バスケ部のマネージャーになりたいらしい。仕事もろくにしないで、話をしているやつにマネージャーという激務が務まるはずがない。社会を舐め過ぎだ。私は人生で初めて、打ち上げ花火が2人のところで爆破すればいいのにと思った。2人が醸し出す青春の雰囲気に私はめまいがした。現在、私はA級戦犯クラスの侮辱行為を受けてしまい、心が崩壊している。軟弱な心臓に青春という劇薬を食らう被害を受けた。あまりにも作用が激しい為、もしかしたら違法ドラッグも混じっていると感じた。むしろ、2人は薬物を絶対に使用している。
午後7時10分、花火大会は終了した。
それでも変わらず、2人は楽しそうに話している。私は憎んだ、激怒した。「仕事しろ。この野郎。給料泥棒かお前ら。」と怒鳴りつけたかった。自分の持っている赤色灯で二人にめがけてぶん投げたかった。とにかく、おそらく私の方が年上であるから、権力で圧をかけ自分の手で地獄に落としたかった。それでも2人でニコニコしている。ものすごく「仕事しろ。」と怒鳴りたい。だけど、それはできない。
なぜなら、全く人が来ないからだ。数えるくらいしか来なかった。ほぼ全員が、私の目の前にある歩道橋で駅に行った。
「全然来ないね。」女性は余裕の笑みを浮かべていた。私はもう来年にならないかなと思った。結局、私達が立っている意味を見出せないまま業務は狩猟となった。
女性は男性に「一緒に帰ろう。」と言って、2人で駅に向かっていった。その姿を見た私は、なんだか悲しくなった。