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こんな素敵な漫画に出会うとは思わなかった:久保さんは僕を許さない

いやぁまさかこの歳でこんなにハマる漫画に出会うとは思いもしませんでした。それがこちら「久保さんは僕を許さない」。

主人公とヒロインは高校1年生。主人公の「僕」は人からなかなか見つけてもらえないという特異な人。しかしヒロインの久保さんはなぜか僕を見つける。

そんなところから話はスタートします。

最初は久保さんにいじられる主人公ですが、映画だ、クリスマスだ、文化祭だとイベントを重ねていくうちに友達から異性として意識するようになり・・・。

どれだけハマったかというと、12巻で完結している本作品、今年の6月に初めて知って一夜で全巻をkoboの電子書籍を大人買いし、すでに15周ほどしています(下図左上は単行本ではなくファンブック)。

15「周」とはなにか。

1巻から既刊もしくは完結作品なら全巻を通しで読むことを「1周」と勝手に呼んでおります。そしてこの作品、1巻から読み始めるとラストを知っていても最後まで読みたくなり、最後まで読んだら「またあの世界に戻りたい」と1巻へ戻るという中毒性を兼ね備えております。

気がつけば全巻一気買いしてから約3ヶ月で15-16周ほどしております。困ったことにまだ全然飽き足らず、また「もう1周しよっかな」とすぐに思ってしまうのです。

なにがいいって、まずはこの作品、登場人物に「悪い奴」「変な奴」が1人もいない。まじで1人もいないんです。環境や歳は違えど、みんな明るくていい人ばかり。だから初見でも安心して読める。

そして今や悠久の彼方にある自分の高校生時代を思い出させてくれるんですよ。高校生って、実質自立はできない中学生よりはある程度自立でき、かといって大学生みたいに自由な時間と多少の金はあれど社会人ほど自律自立できない中途半端な時代と違い、大人になる一歩手前の不安定な基盤で成り立つ不安定な感情が揺れ動く3年間なんですよね。

人によっては思い出したくもない3年、人によっては「人生の最後の10年いらないから高校時代の3年をもう一度過ごしたい」と思わせる3年。そういうのを全部ひっくるめて「甘酸っぱい時期」と呼べるかもしれません。

その甘酸っぱい青春を余すことなく描き切った見事な作品です。

単行本の巻頭に描かれているカラーの挿絵がまた素敵なんですよ。

あぁ、高校の時そんなことを考えていたこともあったなぁと。残念ながら(?)今の嫁さんとは結婚して21年なので10年後どころの話ではないのですが。

この作者さん、こういう何気ないカットがとても素敵なんです。

2ページぶち抜きの絵が特に素敵なものが多く、やっぱり教室のシーンが好きです。特にラストのあのシーンは内容はもちろんのこと、絵だけでしばらく見入ってしまいます。

物語もエンディングに向かってクライマックスへと登り始める11巻、ある辛いシーンがあるんですが、15周もしてるのに毎回涙が止まりません。もうね、ストーリーもセリフも表情も覚えてるのに、自分でも「アホか」と思うのに、11巻のこのシーンは必ず泣いてしまうんですよ。

自分は50年以上人間やってきましたが、漫画で泣いたのは記憶にある限り2作品だけ。1つが「ドラえもん のび太の恐竜」のラストのシーン、もう1つが「ドカベン」48巻のラスト、殿馬がピアノを弾いてるシーン。

どちらも昭和の作品なので、実に40年ぶりぐらいに泣ける作品に出会いました。でも泣けると言ってもサドエンドではなく、もちろんハッピーエンド。この11巻の泣けるシーンもきれいにストーリーを収めてくれています。

アニメもあってアマプラで見られるのでエピソード1だけ見ました。原作が好き過ぎると、それがアニメ化や実写化された時に違和感あり過ぎて嫌悪感を抱くことがままあるものですが、この作品は「あ、原作のイメージ通り、よく創られている」と感じました。

でもやはり大抵のアニメ化、映画化と同じく、原作が好きな作品はやっぱり原作が好きであって、2次作品は興味を持てませんでした。

読むのは電子書籍で読みますが、コレクター的にそのうちコミックスも全巻買って揃えようかと思っています。もちろんメルカリなど古本ではなく、新書でです。リアル本でコミックスを欲しいと思ったのはそれこそ数十年振りかもしれません。てか、20年前は電子書籍なんてなかったですからね。

→追記︰書いているうちに欲しくなって楽天で全巻セット買いました。

いやぁ、この「登場人物みんないい人」「作品中盤から仲良し5人組の話が温かい」「主人公の周りの人みんな温かい」「高校時代のイベントが懐かしい」「最高のハッピーエンド」と、15周もしていながら毎度読む度に気持ちを温かくしてもらい、足元が5cmほど浮いている幸せな気持ちにさせてもらい、仕事やプライベートで多少のストレスがあっても本作品があるから緩和されるという時間を過ごさせてもらっています。

繰り返しですが、この歳でこんなに素敵な作品に出会うとは思ってもいなかった。作者さんにはほんとに感謝感謝です。かなりの漫画好きなので今までもたくさん読んできましたが、こんなに温かくて、楽しくて、幸せで、何周もしたくなるほど中毒性がある作品はあとにも先にも本作品が最初で最後かもしれない。

できれば、この作品の続編を描いて欲しい。高校を卒業して、大学時代も描けると思うのですよ。でも大学まででいいです。その後社会人とかまで手を出すと某島耕作みたいになっちゃいますから。やっぱり「背伸びしたいけど、社会人にはなりきれない」この隔靴掻痒的学生時代を一気に透明感を持って描ける人に描いて欲しいんですよね。

推理小説で言うと有栖川有栖の大学生編。あれ、30年経った今も確かまだ完結していないですよね。有栖とマリア(漢字どうだっけ?)はどうなった?おっさん編で有栖は独身だから、あの後別れたという結末なんだろうけど。

6月にまずはkoboの無料版で1-3巻を読んですっかりはまり、残りの4-12巻どころか「これは多分一生・・・いや棺桶まで持っていく作品になる」と思ったので無料期間が残っている間にも1-12巻まで全部買って、当時の自分を褒めてやりたいほど今もハマっている作品をいつかはこのNoteで紹介したいと思っていました。

ちなみにタイトルの「僕」は「ぼく」ではなく「モブ」と読みます。それが何を意味するかはぜひ作品の中で。


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