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Nike株1日で13%の大暴騰!何故!?買うべきか?

今回はNike株について解説したいと思います。Nikeは言わずと知れたアパレル及びスポーツ関連の靴を製造、世界的マーケティング販売を行っている超有名企業です。株式としても有名なNike株ですが、直近大爆進を見せています。特に12月20日に
約$103⇒$116と1日で約13%も大暴騰しました。今回は何故Nike株が1日でここまで大きく値上がりしたのか、今後はどうなるのか、買うべきなのか、について解説したいと思います!!

①     Nike株が何故大暴騰したのか?

IMAGE SOURCE: NIKE.

まず何故Nike株が一日で大きく値上がりしたのかというと、2023年度Q2の決算報告が良かったからです。具体的には売上が市場予想$12.6billionだったのに対して、結果は$13.3billion、EPSは市場予想$0.65に対して結果が$0.85で売上、EPS共に市場予想を上回る事が出来ました。

Q2の売上は前年対比17%成長したことになりますが、もし為替の影響を受けていなければ、27%もの成長になったと言われています。しかし、良いニュースだけではありません。粗利益率は3%下がり42.9%となりました。

Nikeはこの粗利益率の低下に対して広告費と間接費を抑える事により対応しましたが、それでも税引前利益は10%しか伸びず、売上の伸びに対して低調に終わってしまいました。更に問題を複雑化したのはNikeの法人税の課税額が急増し、前年対比のほぼ2倍になってしまいました。

from Nike IR

結局EPSは前年対比2%の増加にとどまり、市場予想を上回る事はできましたが売上の成長率と比べると少し残念な結果であるとも言えます。但し法人税の増加についてはNikeがコントロールできる部分では無い内容でやむを得ず、経営陣は逆にコントロールできる部分の改善を注力するとコメントしています。

ガイダンス/今後の予想について、2023年度は当初10~12%程度の成長を予想しておりましたが、今回のQ2の決算報告で上方修正し13~14%の成長予想としました。いずれにしてもNikeは今回のQ2の決算報告で、売上、EPS、ガイダンス全てで市場予想を上回る事ができたという訳です。
これが今回Nike株が上昇した理由になります。

②   今後はどうなるのか?

IMAGE SOURCE: GETTY IMAGES.

今後のNike株はどうなるかというところですが、Q2の決算報告で良い結果を叩き出したにも関わらずNikeはまだ危機を脱し切れていないと言われています。Nikeは今回の決算からも分かる通り粗利益率が低下していますが、今後の問題はそれだけではありません。現在のドル高はNikeの様なグローバル企業には大きな影響を与えます。

FRB(アメリカの中央銀行)の政策金利の利上げに伴いアメリカドルの価値は他通貨に対して記録的に上昇しています。その結果Nikeがアメリカ以外での海外店舗の売上を財務報告や経費の支払いの為にアメリカドルに戻すとドルベースでの売上、利益を押し下げてしまいます。このドル高は2023年も続くことが予想されNikeの成長を妨げる要因になります。

2023年度通期での売上成長率は前年対比で1桁台半ば(5~6%位?)を見込んでおり、これはEPS(1株当たりの利益)が今後のQ3、Q4では成長が鈍化する可能性があります。しかし市場はこれらの懸念をまだ織り込んでいないと思われます。2021年末の最高値から約35%もの下落をしましたが、PER(株価収益率:株価が企業の利益と比べて割高か割安かを判断する指標)が直近12カ月では33倍、向こう一年では30倍と予想されており、一般的な水準と言われる20倍と比較しても割高と言えます。

もしNikeが向こう2年間の売上成長率を25%に伸ばす事ができ、その後5~9%の成長率を維持することができて初めて現在の株価が適正なPERとなります。しかし向こう2年で20%以上の成長を続けるというのは相当難しいかもしれません。。

③     Nike株は買いなのか?

IMAGE SOURCE: GETTY IMAGES.

ではそんなNike株は買いなのかという所ですが、とりあえず保留かなという所です。Nikeはコロナパンデミックの影響を受け2020年度は売上が2%減少しました。しかし、そうした逆風が解消された2021年度では17%もの売上成長率を見せています。

この成長により多くの投資家はNikeはコロナパンデミック後も大きな利益を獲得できると確信し、2021年を通して市場全体が上昇する中Nikeは過去最高値となる株価を記録しました。しかし、中国がゼロコロナ政策を実施、インフレという逆風が吹き、世界中の個人消費は抑制される事となってしまいました。結果として2022年度の売上成長率は6%増に留まっています。2023年度の上期(Q1、Q2)においては良い兆しが見えています。
これは売上の40%以上を占めるNike Direct(オンラインと店舗販売)事業が再び成長した為です。また、北米、ヨーロッパの好調な売り上げが中国の落ち込みをカバーしました。2023年度の通期では10%台前半の売上成長率を見込んでおり、以前出されたガイダンスから若干ですが改善されています。


Nikeの売上は安定していますが、2023年度の在庫はQ1では前年同期比44%増、Q2では前年同期比43%増となっています。この増加は北米でのサプライチェーンの混乱・輸送遅延、2021年にベトナムとインドネシアの工場を閉鎖した事により比較が難しい事、そして将来の為に先行して在庫を確保した為とされています。しかし、Nikeは過剰在庫を一掃する為の安売りを行っている事を認めています。更に生産コスト、物流費の上昇により2023年度上期の粗利益は2.6%下がり、43.6%となりました。これにより2023年度の通年の粗利益率は2~2.5%下がり43.5%~44%程になると予想されています。

Nikeはこの粗利益率の低下に対応する為、販売・マーケティング費用を抑制し2023年度上期は前年同期比10%増で留め、売上に対しての30.9%としています。2022年度はこの費用が31.1%だった為、若干費用を抑えられた事となります。また2023年度上期には$2.6Billionの自社株を行い純利益が伸び悩む中EPSを押し上げました。

Nikeの売上成長は堅実ですが、過剰在庫になっている事により、安売り⇒粗利率の圧迫となり、それに対抗するため販売・マーケティング費用を抑制しているという所です。アメリカのインフレが一服感が見えている事からも2023年はFRBは利上げのペースを鈍化し、後半には利下げに踏み切るかもしれません。そうするとドル安に動きグローバル企業であるNikeは売上の改善に繋がると思われます。しかし実態経済としてはリセッションに入る可能性が高く、そうなった場合は個人消費も冷え込む事が大いに考えられます。

また過剰在庫はサプライチェーンの混乱(例えば中国のゼロコロナ政策やロシア・ウクライナ戦争)による要素が大きく、金利が変動した所で改善が見込まれるかはわかりません。つまりNikeの粗利益率も改善されるかというのは読めません。アメリカのリセッション状況及びNikeの粗利益の改善が見込まれてから買いに踏み切るのもありかもしれません。


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