見出し画像

Palantir株下落!!何故??今買うべきなのか?その迷いを解決する!!

今回はPalantir Technologies株について解説したいと思います。Palantirとは一言でいうとビッグデータ分析を専門とするアメリカの会社です。Palantirの技術である「ダイナミック・オントロジー」を使用すれば、一見すると無意味のように思えるデータも系統的に統合し、短時間で解析する事で、あらゆるオペレーションを大幅に効率化させることができます。この技術をもとに民間向けの「Foundry」と公共/政府向けの「Gotham」の二つのサービスを展開しています。いずれも組織内外の大量のビッグデータを統合し分析することで、サービスのコスト削減および生産性の向上に寄与しています。

そんなPalantirですが、2023年8月1日から9日かけて20%以上も株価が下落しております。Palantir株はAIブームのあおりを受けている事から2023年5月から株価は2倍以上に成長しており、絶好調と思われていましたが、今回は何故Palantir株がここまで大きく値下がりしたのか、今後はどうなるのか、買うべきなのか、について解説したいと思います!!

①Palantir株が何故値下がりしたのか?

IMAGE SOURCE: GETTY IMAGES

まず何故Palantir株が値下がりしたのか、それは直近の第二四半期決算の内容が投資家の期待する程良くなかった為です。というか内容的にはそこまで悪くなかったのですが、良い決済とも言い切れなかった感じです。具体的には売上は自社予想$528~$532millonに対して実績は$533.3millionでした。これは前年対比13%成長した事になります。しかし、アナリストの予想である$533.9には若干届いていない形となります。EPSについてはGAAPベースで$0.01、Non-GAAPベースで$0.05となり、大体市場予想と変わらない結果でした。民間向けの売上が前年対比10%伸び$232million、主にアメリカ向けの売上が20%伸びた様です。公共/政府向けの売上は前年対比15%伸び$302millionとなりました。Palantirの顧客数は前四半期から8%増加し、前年対比38%の増加となります。その内アメリカの民間顧客向けが35%伸び161社となりました。3Qのガイダンスにおいては$553~$557millionでアナリスト予想である$552millionを上回っています。

この通り、売上は若干届いていないですが、EPS、ガイダンスはクリアしています。しかしPalantirのPrice to Sales Ratio(株価売上高倍率)は16倍となっており、他のAI株と比較しても割高と言われています。また、Palantirの株価が直近3カ月で2倍以上になっている事、第二四半期の結果がわずかにガイダンスを上回ったという事実を勘案すると、投資家としてはこの顕著とも言えないパフォーマンスに対して利益の確定、要は売りに転じたと言われています。

これが今回Palantirの株価が下がった理由となります。

②今後はどうなるのか?

IMAGE SOURCE:GETTY IMAGES

今後はどうなるかという所ですが、やはり今後のAIの成長をどう見るかという点が大きな焦点となりそうです。Cathie Wood率いるArk Investment ManagementはAIソフトウェアが10年後までに$14trillionの経済効果をもたらすと試算しています。Morgan StanleyとGoldman Sachsも同様に試算している様ですが、数字としてはもう少し保守的でMorgan Stanleyは$6trillion、Goldman Sachsは$7trillionの経済効果を予想しています。いずれにしても今後AIは大きな成長と経済規模が見込めそうで、Palantirも今後その恩恵を受けられる可能性があると思われます。

PalantirのCEOであるAlex Karpは、第二四半期に導入したArtifical Intelligence Platform(AIP)に対する需要は過去20年間で見たことない程だ、ともコメントしています。すでに100以上の組織がこの技術を使用しており、更に現在300以上の組織と導入に向け協議中であると明かしています。AIPは既存のシステムの上に生成AIを重ね、個人所有のデータを分析するもので、政府と企業の両方の顧客が利用できる事からも、更に需要が伸びるかもしれません。またPalantirは第三四半期も引き続き黒字を見込んでおり、$1billionの自社株買いをする予定も発表しています。

Palantirは実はシリコンバレーで伝説的な存在であるPeter Thielが共同設立者の一人となっています。このPeter Thielは1996年に投資会社を設立し、その2年後当初Confinityと名付けられた斬新な送金サービスを開拓した数人の起業家の一人となりました。この会社は後にPaypalとして知られ、これは独創的であり、間違いなく世界で最も成功したフィンテック企業の一つとなりました。また創業間もないソーシャルメディア企業Facebook(現在のMeta)の最初の外部投資家であり、50万ドルの初期投資を10億ドル以上にしています。更にMicrosoftに買収されたLinkedInや食べログのアメリカバージョンのYelp、Stripe、SpaceX、Instacartなど他にも数十社の初期投資家であります。要はそんな伝説的な投資家がPalantirにも目を付けているという事は今後も期待できるかもしれません。

③Palantir株は買いなのか?

IMAGE SOURCE: GETTY IMAGES

そんな株Palantir株は買いなのかどうかというと、今はまだ買わない方がいいと思います。いくつか記事を読みましたが共通して言われていることがPrice to Sales Ratio(PSR:株価売上高倍率)が高すぎると言われています。2023年初めの段階では6.9倍でしたが直近は株価にもよりますが16倍~21倍まで膨れ上がっています。第二四半期の売上成長率が前年対比13%の成長でしたが、PSRが売上成長率を上回ってしまうという事は投資家はPalantirの潜在的事業成長に対して期待し過ぎてしまっているという事になります。またPSRの高さは投資家がPalantirに対して過去よりも速い成長を期待している事を示しています。要は現状の株価は割高という事になります。

Palantirの成長率が鈍化してしまったのは彼らの特殊な販売方法も理由の一つです。顧客は試用期間中、無料でプラットフォームを試すことができます。この販売方法は製品の価値を顧客に理解してもらう事を意味しており、顧客が最初に購入し、長期にわたって使用回数を増やしてくれる事を期待しています。しかしこの方法は顧客を獲得、維持する為に膨大な時間と資源を投資せねばならず、世界規模に拡大する事は困難になり、潜在的なリスクも発生してしまいます。何故こんな無駄な方法を取ってしまうかというとそれはCEOのAlex Karpの哲学によるものです。彼はソフトウェアが非常に優れている為、ソフトウェア自身が販売する事ができると信じている様です。アメリカ政府向けのビジネスはこの方法で上手くいったようですが、民間向けについては最悪の戦略となりました。実際に2019年にゼロから営業チームを立ち上げた後、2021年第二四半期までにわずか34社の顧客しか獲得する事ができませんでした。しかし2023年第二四半期時点ではアメリカで161社の顧客獲得につなげる事が出来ました。この販売方法が良いか悪いかは分かりませんが、いずれにしても一部の投資家はこれを理由に株式購入を警戒している様です。

Palantirは実は2021年に無謀にも約20社ものスタートアップ企業を買収しています。表向きには将来的にPalantirの顧客になる事に同意している事を引き換えに買収を行ったと言われている様です。しかしこの買収した企業のほとんどが資金繰りの問題、規制当局からの監視、訴訟に直面し業績を悪化、結果として大失敗に終わっています。アナリストによるとこの買収により$300million以上の損失が発生している様です。また今回の第二四半期決済で伝えられた自社株買いも問題視されています。お伝えしている通りPSRを見る限り現在の株価は非常に割高となり、資本の有効活用とは言えません。いくつかの記事で共通して記載されていますが、経営陣のこういった判断は信頼に値しないと言われています。

唯一ポジティブな内容としては第二四半期での営業費用が前四半期と比較して1%しか増加しませんでした。これによりPalantirは3四半期連続で黒字化に成功しています。EPSは$0.01と少額ではりますが、前年のマイナス$0.09と比較すると大きな改善です。

AIの需要が今後伸びる可能性は十分にあるかと思いますが、Palantirへの投資は個人的には時期尚早かと考えています。もし5年、10年待てるという事であれば賭けてみても良いかもしれません。

これが私がPalantir株を買わない理由になります。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?