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コーラルリリースとエンディングについての考察

本記事は根拠は示しつつも多分に妄想が含まれる。そのため、最初に最も伝えたい事を書いておく。

「コーラルリリースとは、コーラル密度が上昇した事によって起きる相変異現象の名前。オールマインドのリリース計画(トリガーとか3つの条件とか)とは区別して考えなきゃダメ」

という事だ。

正直まだ整理がついていない部分が多いためそれ以外は話半分でいい。
それでは、長くなるが駄文にお付き合い頂けるとありがたい。



1.コーラルについて

コーラルは新時代のエネルギー資源らしいが、それ以外にも多くの使い道がある。

  1. ミールワームの飼料

  2. ドーザーが摂取するドラッグ

  3. 旧世代型強化人間の材料

  4. エネルギー兵器への転用

  5. 星系を焼き尽くす(使い道?)

他にもあるかもしれないが、一旦これだけ。
正直、これだけ設定が詰め込まれているSFギミックで、ストーリー的に登場する使い道が「星系を焼き尽くす」くらいなのはいかがなものかと思うが、まあ「現実には存在しない万能素材」的なものなのだろう。

元ネタは、「DUNE」のメランジ(スパイス)あたりか。映画での知識しかないが、人類が恒星間航行を行うようになった遠未来。惑星アラキスで発見されたたスパイスは、人間の知覚を広げ精神を高揚させる。
燃料には使われていないはずだが、おおよそコーラルと同じである。

余談:その他にも、「アイスワーム」は惑星アラキスで信仰されているサンドワームに酷似しているし、オールドSFの雰囲気を掲げる本作としては大きな影響元であるに違いない。

コーラルは、生命体のようにも振る舞うようで、特に異常波形には会話が成り立つ知性がある。チューリングテストやフォークト=カンプフテストはパスするのだろうか(コーラルは機械ではないが)。
他の活性コーラル、不活性コーラルについても普通の人間には聴こえないが”声”は発しているらしい。

声といっても意思疎通する類のものではなく、どちらかというと波の音を「海の声」と表現するような、エアのセンチメンタリズムだと思われる。
実際、621(プレイヤー)にも効果音くらいしか聞こえない。
キラキラしているのが信号かもしれないが、まさかモールス信号は使っていまい。

要するに、”よくわからない”。

というか、「コーラルが一体何なのか?」「どんな性質を持っているか?」についてテキストを読み込んで理解したところで「コーラルリリース」の考察にはあまり役に立たない。
多くの設定は作劇上のギミック、それ以上でも以下でもない。
(勿論、コーラルの性質を読み解く楽しさはあると思う)

人間に搾取され、自らの閉ざされた可能性に気が付いていない悲劇の生命体。生物と鉱物の中間(コーラル=珊瑚)という事さえ分かっていれば十分だと思われる。


1.1 姿なきルビコニアン(コーラリアン) エア

まず、お前はどう考えてもコーラリアンだろと。

まあ、その名称は色々と角が立つので却下になったのだろう。

エアはCパルス異常波形というものらしく、実体がない声だけの存在。ウォッチポイント襲撃後に主人公とのみ”交信”出来るようになる。
集積コーラルに到達し主人公と仲違いになった後も、自らコーラルに呼びかけて避難等をしないところみるとコーラル同士で会話は出来ないようだ。

エアも実は、掘り下げてもコーラルリリースには繋がらない。勿論、リリース計画のトリガーという重要な役割ではあるのだが、当人もコーラルリリースが何なのか良くわかっていない。

無理矢理繋げるとしたら、彼女(?)の存在そのものがコーラルリリースによって齎される”可能性の一つ”なのだろう。


1.2 コーラルリリースの正体

コーラルリリース関連の資料を読み解くと、「相変異」というワードをよく目にする。
相変異とは、主に昆虫類などで「特定の個体群が一定の密度以上に増殖することで、新たな形質を獲得すること」で、有名なところでいうと「飛蝗」などが相変異によるものだとされている。
コーラルにも、蝗のような相変異を起こす性質があり、一定の密度を超すと形質が変化する。

これがコーラルリリースの正体だ。別に次元を飛び越えたり、トンデモ現象を起こす事ではない、密度効果でコーラルが”変化”する事が重要なのだ。
コーラルを管理下に置かず、なすがままに任せよう(リリース)。彼等が何を選択するか、何に成るのかは彼等に任せる。というのがコーラルリリースの本分だと思われる。

エア達がトリガーとなったコーラルリリースでは、コーラルは「星々を伝播する力」を手に入れているように見える。
これは「変化はこれだけ?」という疑問が残る結果だ。

何せコーラルは真空で指数関数的に増殖する性質を持っている。
コーラルリリースが起きなくても、放っておけば勝手に拡散され、ウォルターの危惧した通り宇宙中を汚染(※)し尽くすはずだ。

となると、エア達のコーラルリリースによって手に入れたのは「星々を伝播する力」ではなくもっと別の何かのはずだ。

コーラルが”何を”手に入れたのかについては、後述の考察で語る。

※ ここでの汚染という言葉を放射能汚染のような有害性で捉えてはいけない、環境に対して不可逆の変化をもたらすという意味で汚染としている



2.オールマインドの目的

3周目エンディングのコーラルリリースで何が起きるのか、その答えを知っているキャラクターとして真っ先に思い浮かぶのはオールマインド(以下、AM)だ。
もしコーラルリリースの先にAMの目的があるのだとしたら、目的さえ分かれば逆説的にコーラルリリースで何が起きた分かるかもしれない

幸いAMの目的は比較的分かり易い形でテキストになっている。

テスターAC アリーナの説明文

2周目以降のアリーナ、テスターACの説明文にはこうある。
「我々は全ての傭兵がACと共にある未来を志向しています」
これは単なる建前ではなく、AMは真剣にこれに取り組んでいるのだと思われる(一見聞こえのいい言葉に趣味の悪い解釈を与えるのは、フロムゲーの常套手段である)。

つまり、コーラルリリースが行われると、半ば強制的に「全ての傭兵がACと共になる」という現象が起こる可能性がある。
それは、あるいは「人間の意識をACに植え付ける」といったような趣味の悪い結末なのかもしれない(そのようなことになればV.IIIが言うような”人間臭い”生活は送れなくなることだろう)


2.1 リリース計画

一応触れておかなくてはいけないと思ったのだが、リリース計画とコーラルリリースそれ自体は切り分けて考えなくてはいけない

あくまで、コーラルリリースは”相変異によるコーラルの変化”であり、リリース計画はそれに人類とコーラルの相補的な進化を促すよう”トリガー”によって変化の指向性を持たせるというAMの思惑である。

技研AC アリーナの説明文

エンディング名『賽は投げられた』が示すのは”不確定な未来”だが、AMのリリース計画はそうでなかったことが分かる。
少なくともAMは、自分の目的通りになるようコーラルと人間を導けたはずだ。

ただ、そんな計画を最後の最後でイレギュラー達に乗っ取られ、これから何が起きるかもよくわかっていない奴等が世界の命運を握ってしまったのだから、気の毒ではある。

そんな物見遊山で行かないで欲しいものだ
かわいそう

リリース計画にも考察の余地はあるが、結局計画は達成していない上に計画の前提条件等を考察しても大した情報にならないので、あまり触れないでおく。



3.エンディングでは何が起こっていたのか

まず、コーラルを大気圏外まで吸い上げたバスキュラープラントの外壁が水圧で潰されるかのように内側へ凹んでいく。

凹む…というよりは歪む?

恐らく、プラント内のコーラルが大気圏外へ出たことで増殖が加速し、密度と質量が指数関数的に増加、結果としてブラックホールが発生したのだと推察される。

え…じゃあ、そもそも持ち出せないじゃん。

吸い込まれたコーラルが事象の地平線で膜のようになっている

一度発散されたかのように見えた、コーラルは再度吸引されていく。

エアと621も、拡大するブラックホール飲み込まれていく。

海の底?

エアの声が聞こえる。
どうやら、621はコーラルの奔流の中でも自我を保っていられたらしい。

実は自我が強靭な621

エアがコーラルが星々へ伝播したことを告げる。

AC達が起動し、立ち上がり、共に空を見上げる。

物語はここで終わる。

これが「賽は投げられた」ENDだ。

まあ、よく分からない。

人はこういった抽象的な表現を見せられると、理解より共感が先行してしまう。
それでも、モチーフやメッセージについてはまた別に取り上げるとして、事実としてこの場面で何が起こっていたのかを考えてみよう。


3.1 ここはどこ?

ルビコン3である可能性は低いだろう。どこか別の惑星?
ACが大量に廃棄されていることから、戦場である可能性もある。
木星だろうか?

答えはそのどれでもないかもしれない。

筆者なりに導き出した答えはこうだ。
ここは「アーマードコアをプレイした人が保存した機体データやエンブレムデータが実体化した世界」。

つまり、仮想世界と現実がひっくり返った世界だ。

根拠は多くない。しかし、あり得なくはない。

まず、今作はアリーナにおける戦闘がVR空間で繰り広げられている。
登場人物のほとんどは、操縦スキルや癖までもがデータ化され、殺しても死なない、何度でも戦う事が出来る。

傭兵達が永久に争いを繰り広げるヴァルハラ。
AMもそんな世界を目指していたのではないか。

図らずも目的達成。よかったね。

ここでは、仮に”NEST世界”と呼ぶ。

画面描写に話を戻そう、衛星軌道上を追う謎の図形が見える。
これは、コーラルリリース直前に飲み込まれたバスキュラープラントと封鎖衛星がデータ化した姿ではないか?

他にも、世界がデータ化された根拠はある。

例えば、出てくるACが全員トンチキ過ぎる。右から3番目のACはアーキバス先進開発局が開発した最新型の頭部パーツを有しているのに対し、RaD製探査機もいるわ、ベイラムのタンクもいるわで一体何があればこんな面子が一堂に介して撃沈する事があるのか。
まず、あり得ない。となるとこれは別々の場所にあったACがデータ化されて、この場所に集められたと考えると辻褄は通る。

このように、指数関数的増殖によって宇宙を覆い尽くし、特異点へと引き込み続けたコーラルが、全てをデータ化した世界へと変化させたのだ。

コーラルが相変異で手に入れた力は、「全生物の情報化し、コーラルネットワーク内で再構成する力」のようなものだと考えられる。


3.2 このAC達はなに?

最初に海に沈んでいるのはプレイヤーが必ず初めに乗る機体「LOADER 4」。
多くのプレイヤーはストーリー途中でこの最初の相棒を乗り捨ててはいないだろうか?

ここはACの墓場だ、プレイヤーに乗り捨てられた機体データが流れ着く先。
しかし、ここで終わりではない、彼らには新しい乗り手が現れる。

姿を持たないコーラル、そのデバイス(出力機器)としてのAC、進化のための人の形。
三者が繋がり、進化した存在が最後に映っていたAC達なのだ。

プレイヤーが最初に乗り捨てた機体が、LOADER(荷を積むもの、装填機、データやプログラムを読み込むもの)という名で、新しい生命を乗せるのは、何の因果だろう。


3.3 どうしてこんなことを?

肉体からの解放は多くの宗教観に通じるものがある。
また、昨今はVRやメタバースによって現実の様々な柵から解き放たれ、仮想空間でなりたい自分自身になろうとする人も多い。

621もその1人だ、体を弄ばれ、おおよそ人間とは呼べない姿になった主人公。
大金を注ぎ込んで再建手術をしたところで、所詮は作り物に過ぎない。

だからこそ、選べる。
感情が欠落し、生きているとは言えない体を持った主人公。
彼が望む新しい体が与えられる世界を選ぶ事を、誰が止められるというのだろう。

或いは、それは友人なのかもしれない。

しかし、全ての柵はAMの手によって断ち切られた。

3週目の現実世界には、621の友人は誰も残っていないのである。

(いるのは”向こう側”でしか会うことが出来ない彼女だけ)

一方、コーラルにとっても、相変異によって辿り着いたこの世界は自らを新しい次元へと進化させてくれた。
今まで原初の海のように「イタズラな偶然」から異常波形という小さな命を生み出す存在だった彼らが、コア(核)を持ち、自己と他者を区切る境界を手に入れた世界。

彼らは新しい肉体を経て、急速に進化するだろう。

自我が芽生え、経験を積み、個性が生まれる。そして、時には対立する意見同士が争い合う。

しかし、彼らは死なない。肉体は好きなだけ変える事が出来る。

勝者のいない争いの果てに、彼らは辿り着くかもしれない。
闘争の必要がない、本当の新しい時代に。


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まとめ

こんな結論になるとは思っていなかった。
こんな長い話に付き合ってくださって本当にありがとうございます。

本音のところ、最後の描写は如何様にも受け取れてしまうので、個々人のお好きなようにというフロア・ソフトウェアからのメッセージを感じます。

なので、考察系記事で一番ぶっ飛んでいて、新たなる生命への希望を感じる心温まる最後にしました。

根拠もあるし信じているけど、この解釈だけではないという事を頭の隅に置いておいてください。

(あーあ、この説が主流にならねえかな〜。)

今後も考察記事を書いていくので、スキまたフォローしていただけると励みになります。

余談:実はこのNEST世界出身の登場人物がいるのかもしれません。
   一体誰なんだ…。

レイヴンの巣

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