リハビリテーション
雨が降った翌日に、地面に桜が咲いていた。
窓から見えるスカイツリーの頂上から、ビームがでないかと毎日思っていた。
飛んでいく飛行機の高さの、空気の薄さを思った。
なかなか飛び立たない鳥の、感情に思いを馳せた。
会社の窓から見える開けた品川の、100日後を思った。
全部、私にとって苦くて仕方なかった。
全部、タバコに火をつけながら一人で考えていたことだ。
生きることの延長線上に今はタバコがあった。
好きだった友達は母になることを知った。
苦手だったあの子は結婚することを知った。
時間に火をつけて吸い込んで、吐き出しているうちに月日は流れてたみたいだ。
私は全く変わっていない。価値観のコロコロ変わる人間が嫌い。薄い人生だなと思うしインドにでも行ったらいいと思う。
正しくは、変わりたくなかった。
多分だけど、少し変わってしまった。そんな自分が嫌いだった。あの頃の自分が好きだった。
もう戻ろうにも戻れない。
もうあの頃の自分も、親友も、恩師も、みんな死んだ。
タバコが燃え尽きたみたいに。
そうしてまた一本、時間に火をつけて吸い込んだ。