見出し画像

カジュアルゲーム制作現場から学んだクリエイティブディレクションのコツ

この記事は、Gaudiy Advent Calendar 2024の10日目の記事です。Gaudiyの行動指針「Gaudiy UNIFORM」の1つである「超守」をテーマに、実務で学んだクリエイティブディレクションに関するコツを書こうと思います。

Play Squadでゲームデザイナーを担当しているShunです。
もともとGaudiyではUIデザインをメインで担当していましたが、現在はゲームデザイナーというポジションで、ゲーム仕様・企画の作成、実装・データ作成の依頼、UIやアニメーションなどクリエイティブのディレクションを行なっています。

この記事では中でもクリエイティブディレクションに絞って実務で学んだコツや考え方をお伝えできればと思います。

そもそもクリエイティブディレクションとは何か?

ゲームにおける必要なアセット(UI・イラスト・アニメーションなど)をクリエイターに依頼し制作してもらう業務です。
またゲーム全体のクリエイティブの方向性を決めて、ビジュアルの統一感やクオリティの担保も行います。

ゲームは特に制作物の量が多いので、ディレクション担当者が全体のアセットを把握しチェックを行わないとビジュアルや機能の統一感が失われやすいので注意が必要です。

補足:Gaudiyにおけるカジュアルゲームは比較的アセットの量が少ないので、1名で全部のアセットをディレクションしますが、一般的にはアート・UI・サウンドなどそれぞれの領域でディレクターが存在するケースが多いです

実際にどうやるのか?

ディレクションというと大層な聞こえがしますが、作業自体はざっくり大きく分けて3つの工程しかないと考えています。

  1. 発注: 制作してもらいたい内容を伝えて作業に取り掛かれる状態にします。

  2. 確認: アセットを確認して、OKか調整を入れるか判断します。

  3. 調整: 制作物に対して改善点を洗い出し伝えます。調整が完了したら再度確認します。

基本的にはこの工程をひたすら回し続け全てのアセットを完成までもっていくのが仕事です。
ではこの工程毎で、実践を通して学んだコツやポイントを伝えていきたいと思います。

発注のポイント

1.具体的な作業内容は指定しない

失敗ケースとして細かく指定しすぎてディレクションではなく作業指示となってしまう事があります。
例えば、色はこのカラーコードで、テクスチャーはこれで、フォントはこれで〜など事細かに伝えた場合です。

こういった場合は自分の想像している制作物のイメージを超えるものが出てこないだけでなく、デザインがちぐはぐになりクオリティが低くなってしまう場合が多いです。

わたしのよくやる方法としては「こういう方向性にしたい」「ここは大事なので目立たせたい」と言葉で伝えたり、参考画像を見せながら「この画像のこの印象を取り入れたい」というように目指す印象や情報優先度だけ伝えて、それを達成するための具体的な手段はクリエイターに任せるという方法です。

こうすることで、クリエイター側で考えたりクリエイティビティを発揮する余白が生まれるのでアウトプットのまとまりもよくなるケースが多いです。

2.一見関係ないと思われる仕様もなるべく細かく共有する

発注時のよくある失敗として「ここの画面のこのクリエイティブを作ってください」とだけ伝えて済ませてしまうケースがあります。

おすすめとしては、具体的な発注に移る前にゲーム全体の仕様を関係者全員に伝えることです。
一見関係なさそうな仕様まで伝えるというのがポイントで、例えば発注する制作物とは関係ない画面のUIなどを含め、全体像をまず伝える工程を取ります。

これによりクリエイター側で他の画面を考慮したUI作成や共通化できるパーツの洗い出しなどをスムーズに行うことができたり、さらにはパーツの書き出しの仕方や負荷を考慮したデザインなど実装に向けた連携もとりやすくなる利点もあります。

また全体像を伝えることにより、仕様を伝える中でクリエイター視点での改善点や指摘が生まれたりブラッシュアップするきっかけにもつながります。

確認のポイント

1.コストパフォーマンスを意識しながら取捨選択を行う

確認のフェーズでは、クリエイターが制作した演出やUIなどに対して本当にこの表現で実装まで進めるべきかという判断を行います。

どんなに良いアイデアでも、それを実装するのにコストパフォーマンスが見合わなかったらここでやらない判断をしなくてはいけません。特にエンジニアやPMはスケジュール感やコスト感にシビアなので、しっかり議論して結論を出す必要があります。

ただ全ての表現をコストが高いからと諦めてしまったら良いものにはならないので、ここで優先度に合わせて取捨選択を行うのが大事です。

例えば弊社が開発したあるIPのカードゲームでは、インゲームの演出に一番コストをかけているのですが、ここはIPに親しんできたゲームファンが一番喜ぶポイントとしてコストをかけるべきだと判断しています。

2.安易に判断しないで、持ち帰って考える。

私がよく失敗した事例として、結論(OKなのか、調整が必要なのか)を焦って出してしまうことが特にミーティング中にありました
今では結論をすぐに出せなかったら一旦冷静になって持ち帰っています。

こういった場合の受け答えとしては「今パッと答えられないので持ち帰ります」「もう少し考えてから結論出させてください」と伝えています。

現場では早くOKにして次のフェーズに進みたい引力がどうしても強くなります。それに対してグッとこらえてよりよくなるパターンを考えたり、なんとなくモヤっと気になっているところを言語化する時間を取るのは大事だと思っています。

調整のポイント

1.まず良いところを伝えて、最後に調整項目を伝える

調整において伝え方は大事です。
私も元々デザイナーなのでデザインを制作してチェックをもらう立場として、制作物を見せる側の緊張感は分かっています。

最初から「〇〇が出来てない」「〇〇がダメ」みたいなダメ出しをひたすら言われたら聞く気もなくなってしまうし、今後見せたくなくなりますよね。
なるべく「ここは良いですね!でもここを直したらもっと良くなると思います」というようにポジティブな側面を最初に伝えるようにしています。

また制作物が良くない原因はクリエイターだけじゃなくて、発注側にも原因があるので、思ったアウトプットが出なかった場合発注自体に問題があった前提でコミュニケーションを取るのが大事だと思っています。

こういったディレクターのスタンスはカービィの産みの親、桜井さんも言及されてますのでぜひ参考にしてみてください

2.影響の大きな要素から調整する

「ここの文字のカーニングがガタガタで」「装飾の形がバランスが悪くて」「あ、あとここのパーツの色ちょっと変えたくて」といったように、気づいたところから伝えてしまうのは良くないです。

調整項目は必ず影響の大きな要素から伝えるように気をつけています。
例えば「文字のカーニング」の話をする前に「フォントの選定」をしないといけません。文字のカーニングを調整したあとにフォントが変わってしまったらやりなおしになってしまうからです。

影響範囲が大きい要素(カラー・フォント・背景が一般的に影響度が高いです)から調整をすることで、無駄な工数を減らせますし伝える側のコストも下げることが出来ます。

3.必ず理由とセットで伝える

好みや感覚で調整を加えることにならないようにするために、必ず調整を加える理由を伝えるのが大事です。

これをサボると、受け取り側としてもなぜやり直しなのか分からずモヤモヤしますし、伝える側もだんだん何のための調整か分からなくなってきてしまいます。理由を必ず1つ決めて伝えることはディレクションの精度を上げる練習にもなります。

まとめ

まだまだ書き足りないところもありますが、以上実践を通して学んだクリエイティブディレクションのコツまとめとなります。
ただ、ディレクション自体は正解がない作業ですし、私が書いたことも人によっては合わない場合もあると思います。少しでも参考になりそうなところがあれば嬉しいです。

また、UIデザイナーだった自分がここまで大きな裁量を持ってゲームデザイナーとしての経験をさせてもらえて学びを得ることが出来たのはGaudiyだからこそだと思っています。

Gaudiyでは一緒に働くゲームクリエイターを探していますので、もしこの記事を読んでディレクションなども含めた業務領域を広げたいと考えているクリエイターの方はぜひ一緒にお話しできればと思います!

Gaudiy Advent Calendar 2024、明日の担当はプロダクトマネージャーのkaaazuさんです!お楽しみに!

いいなと思ったら応援しよう!