見出し画像

容姿ニュースで思い出したこと

「本当に水川あ○みみたいで美人」
「竹内○子みたいだね」
「…」
「でさー…」
私と2人の友人が居酒屋で飲んでいた所、隣の席の男性2名が声をかけてきた、会話の中の一小節。

3人の中にいて私だけ芸能人に例えられなかった。

1人目を例えた時からイヤな予感はしていた。
2人目を例えた時『どうするんだろう』と客観視していた。
案の定、私は顔を見られたのに例えられなかった。
例えない優しさだったのかもしれないし、そもそも私は居ても居なくてもいい人物で、美人2人しか見えていなかったという事もある。

不細工で太っていた学生時代。
大学生で少し痩せ、社会人時代は環境の変化で太ったり痩せたりしているが総じてぽっちゃり気味だ。
重い一重、団子鼻、エラ張り顔という苦悩を詰め込んだ顔に一応のメイクはできるが限界はある。写真のうつりに納得した試しがない。
対して母はキレイなぱっちり二重で鼻筋も通っていた。
母に似てたらなぁと思った事もあったが、幸い両親共にかわいいかわいいと育ててくれたし、友人にも恵まれたため、コンプレックスではあるもののあまり苦労はしていない。
笑顔がいいと言われるが、それも褒めるものが無いときに使う常套句だなぁと思いつつ、それでも何とか褒めてくれたんだからと、私は不細工だが笑顔がいいぞと言い聞かせて育ってきた。

そんな私も、道行く人や初対面の人を、心の中では『美人』『イケメン』『○○に似てかわいい、カッコいい』と思ったりする。
とはいえ、開口一番で見た目は褒めないし、褒める時は慎重になる性分になった。
口に出さないのは、相手が返しに困るという状況が生まれるから。
仲の良い間柄なら某かのジョークも言えるが、初対面や仕事の場では無理だ。
最悪、どちらもセクハラやモラハラになる可能性がある。
どちらも、というのは、社交辞令でお返しした言葉で傷つけるというトラップもあるという事。

私は相手からいただいた情報でその人のラベルを貼りたい。
それが通りすがりの人でも、『優しい』という誰にでも当てはまりそうな曖昧なラベルでさえも。
自分の主観だから間違いもあるだろうけど、少なくとも趣味や人となりは興味深いし、ハラスメントトラップは避けられる可能性が高いから、私は対する人のそういった側の情報を重視したいと思っている。

ずいぶん前の事だが、旅先で偶然入ったカジュアルなバーで、テレビで見たことのある3人の役者さんと狭い店内に横並びに座る事になった。
その中の1人がニコニコしながら「オレ以外カッコいいでしょー。」と2人を紹介した。
役者さんこそ、イケメンでくくられるとか、そういう事に敏感な傾向にあるのではと思っていたので、正直戸惑った。
普段そういった偏見の矢面に立っていると思われる人でも、まず容姿を持ちだすのかとびっくりした瞬間だった。

意識したり考えさせられたりする場面は、不意に火の粉のようにチリチリと降ってくる。
振り払ってもまとわりつくイヤな感じはあるが、火が近くにあるという警告になる。
見えない地雷を踏み抜くよりはマシかなと思っているが、できれば遭遇したくない。

私は友人や知人を紹介する場面が訪れたとき、偏見も何もない私の言葉で伝えられるんだろうか。
そんな思いを巡らしながら、アップルパイとコーヒーをいただく午後のひととき。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?