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板の上のぺこぱは何者か

M1のスペシャルムービーが100万回再生の大台を突破し、現在も再生回数を伸ばしている。
決勝の舞台へ向かう芸人の一瞬を切り取った3分11秒の動画は、図らずもマヂカルラブリーの優勝やインディアンスの敗者復活を示唆したような内容を含んでいた。
運営の先見の明も然ることながら、どの瞬間のどの映像もどの発言も飽きることなく何回も見てしまう。
M1後に数々の論争がなされたが、この動画の界隈は素直に興奮し感涙する安寧の地であったし、これからもそうあって欲しいと願っている。

思ってもみなかった伏線回収で沸くこの動画だが、本来の目的は、決勝戦までのアーカイブと決戦への視聴者の誘導。
大衆の心を掴むM1特有のヒストリーを演出する役目を負うこの動画に欠かせなかった芸人をあげるとするならば、私はぺこぱではないかと感じている。

「ここでしか味わえない刺激があるんですよ」
昨年のM1から1年間テレビに出まくった松陰寺さんのつぶやきがゴングとなり静かで熱い戦いが板の上の魔物のイントロと共に始まる。
目の前の人を笑わせたいという強い思いで無観客の劇場と対峙し、上を目指し邪念を振り払うかのように漫才をする芸人の歓喜、苦悩、野心、祈りが晒されていく。

「あの舞台が忘れられないから挑戦したい」
シュウペイさん他、芸人の熱い言動で弾みをつける舞台裏。
だがエントリー総数5081組の猛者ひしめくバトルロイヤルは淡々と進み、累々たる屍を量産していった。

「甘くねぇなやっぱ」「もちろん」
前回チャンスをものにして光が当たったぺこぱも肉薄したが決勝には届かなかった。
決勝を前にコンビはフェードアウトする。

「地下芸人の這い上がりですよ」
決勝に進み、世に出る足掛かりができた芸人をスポットライトが照らし、輝く決戦の舞台へと続く余白を残して動画は終わった。

そこで思う。

ぺこぱ、助演男優賞もんじゃね?

ぺこぱが歩んだM1前後のヒストリーを最大限フリにしたサクセスストーリーがベースにあるからこそ、世に出ていない芸人に大衆が期待や希望を込めて応援をし、境遇に共感する。
ぺこぱが出場することで、M1ドリームとは何か、M1にしかない刺激とは何か、なぜ売れてもM1に挑むのかという、明確な答えがない不可思議な現象が浮き彫りになる。
そんなM1マジックの謎は謎のまま、視聴者がそれぞれの思いを乗せM1の視聴者となり、再び伝説の一夜が生まれる。

ぺこぱは確実にM1を盛り上げた唯一無二の芸人であり、この動画の立役者ではないかと思っているが、これは私の勝手な想像であるし、運営にそんなシナリオは1ミリもないだろう。
でも私はこの動画の助演男優賞をぺこぱにあげたいと思った。
次回またM1が開催されるのであれば、今回のM1やこれから起こる未来をフリにしてまた板の上に帰ってきてほしいと願ってやまない。

最後に、良くも悪くもにっこり笑って「M1て凄く面白いでしょ?」と、映像と音楽でこんな魅せ方をする運営が板の上の魔物を操るラスボスではないかと思いつつn回目の動画を見返している。
そこでまた心に残る発見をしたのだけど、それはまた別の機会に。

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