逢えたら
気がつけばどこかの劇場らしきところにいた。
周りには誰もいなくて、どうなっているんだろう?
と思いながらも不思議と慌ててはいなかった。
何かに呼ばれているのか、自然と舞台裏の通路のようなところを歩いている。
すると、知らない誰かが現れて、あたしのことを探していたという。
「会いたいと思っていると思うの。」と言われながら、さらに奥の方に案内されて、その場に残される。
そこは少し暗くて、離れたところからの強い明りが漏れ入ってきていた。
半分道具置き場みたいなところだなということと、自分はなんでここにいて、あの人は何だったんだろうといったことが頭を巡っている。
どうしようもなくて思案しながら立っていると、ゆっくりと人の気配がした。
その方向を見たけれど、強い明りの方向から現れたせいでよく顔が見えない。
近づいてくる人影。
何となく分かるのは、長い少しウェーブがかかった髪に華奢だけど背が高い人。
その様子にまさかなと思いながらも、ありえないという意識の方が強くて、誰なのか確かめようとただ目を凝らす。
人影が目の前まで来たところで、ようやく顔が見え始めた。
目元に視線がいって確かめられた時、綺麗すぎる眼差しが自分を見ている。
その人が目の前にいることが信じられず心臓が動きが早くなる。
息ができないくらいの驚きが、体をフリーズさせている。
けれど、そのことで驚いている暇はなかった。
その人はあたしの目の前まできても歩みをとめず、至近距離まで近づいてきている。
動きはまだ止まらない。
途中、その人は少し目を細めて、笑ったような気がした。
「あの。」と声を出そうとした時、あたしの左頬に彼の手のひらが添えられ、重ねての驚きで、声が出せたのかどうか分からない。
顔が近づく。
もう唇が触れるんじゃないかというところで、彼の動きが止まった。
あたしは息を殺して様子をうかがう。
近すぎるほど目の前にいる彼の表情から、意図を読み取ろうと意識はそこに集中する。
気を取られていると、首元で何かが動いたのを感じて視線を落とす。
もう片方の彼の手だった。
そして、あたしの服の一番上のボタンが外されていた。
そのまま二つ目のボタンに手がかかり、またひとつ外される。
思わず、その手を止めようとあたしは自分の手を重ねた、するとボタンを外すのをとめてくれた。
視線を彼の顔に戻すと、また、少しふっと笑って、今度はあたしの首筋に顔を近づけてきたと思ったら、柔らかい感触がした。
信じられない。
彼の唇があたしの首筋に触れている。
何度かついばむような感じで、キスされる。
ドキドキしすぎて熱い。
でもちょっとくすぐったくて、体がビクっとしてしまった。
けれど、彼は構わず首へのキスを続けて、だんだんと唇が触れる場所が頬骨のあたり、あたしの唇のあたりへと移動してきて・・・。
重なった。
最初は軽かったキスがだんだん、ゆっくりとしっかりと唇を吸ってくる。
流れのままに身を任せていると、脇腹のあたりに冷たくも暖かくもない手が添えられた。
そのままゆっくり、また、今度は下の方からボタンが外されてるみたいだった。
幾つかボタンを外すと、直接、体に彼の手が触れた。
温度がないと思った手はちょっと熱くて、少し驚いたけれど、
ずっと重なってる唇が気持ちよくなってしまってぼぅっとしかそれを捉えられなかった。。
@waco
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【あとがき】
2018.4に他に投稿していたもの。
とても美しくかっこい方がイメージの元。
一人称だが特に自分というわけでなく、
なんとなく読む方にはこの形で感じてもらった方が
自然かなと思いこの形に。
綺麗なお兄さんが好きでちょっとした夢を見れれば楽しいなと。
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