YorkshirePuddingの涙〜クリスマスには愛を温めよう
日本ではクリスマスと言えば何でも良いからパーティー。とりあえず恋人作ってデート行くみたいなイベントだがイギリスでは全く意味合いが違う。
イギリスでは家族が心を寄せ合う日。
Merry Christmas!!と家族で祝いながら心の奥底で失った家族の面影に想いを馳せる日。
今年のクリスマスほど酷いクリスマスがあっただろうか?
クリスマス直前に3回目の更に厳しいロックダウンとなり、更には変異したウイルスがロンドンを中心に広がっていることが判明しイギリス発の航空機を各国が止めた。
とうとうブレグジットの期限が数週間に迫り合意なきEU離脱となる可能性が高くなっている。
(これは何とかぎりぎり合意に漕ぎつけました汗)
明日なき大英帝国。
ヨークシャーに1人暮らしをする93歳になる義父。
私を娘のように愛してくれる80代の未亡人。
そして今年の夏前に膵臓癌が見つかった義弟。
他にも愛する人がたくさんたくさん居るイギリスに今度いつ戻れるのか全く見当がつかない。
夫の気持ちを思うと辛くて少しでもクリスマス気分を盛り上げようと思い娘と一緒に車で1時間の郊外にあるイギリス人が経営する英国料理のカフェに出かけた。
このカフェではSunday Roast Lunchという典型的なイギリス料理が楽しめる。ポテトや人参などの根菜とじっくりとローストした牛肉やラム肉、そのローストから出てくる肉汁をワインと煮詰めて作るグレイビーソース。
そして小麦粉と卵を溶いてふわっと膨らませて焼くヨークシャープディング。素朴だが心温まる家庭料理だ。
家族3人でCozyな暖炉のあるカフェに座って懐かしい家庭料理を食べていたら私は思わず涙をこぼしてしまった。
娘が1歳の誕生日を迎えた直後に急に亡くなった義母。
その義母と義父とみんなでテーブルを囲んで食べたこんな普通な暖かい食事のことが味覚や嗅覚や色んな感覚と共に蘇ってきたのだ。
突然涙を流し始めた私を見て娘はびっくりして「どうしたの?何が起きた??」
夫を見たら彼も目を赤くしていた。
「お母さん、やっぱりラムが食べたかったあ」
(ポークとビーフはあったがラム肉は売り切れだった)と言ったら2人とも笑った。
何ひとつできない。愛する人に手も届かない。
こんなクリスマスにはせめて身近に居られる人と小さな小さな愛を温め合おう。そして遠くの愛する人の無事を祈ろう。