あなたと私とぶっ続き「宿無し弘文」
スティーブ・ジョブズが傾倒した禅僧についてのルポルタージュである。
6年に渡る日本とアメリカ大陸とヨーロッパと、この不可思議な禅僧にまつわる証言を集めて回った著者のエネルギーに感服。
それにしてもこの禅僧、とんでもない破戒僧。女癖、アル中。どこから見てもとても宗教家とは言えないような生涯を送り、周囲を苦しめ、最期は浅い池で溺死という訳の分からない死に方をする。
それにも関わらず崇拝し愛され、世界を変えたスティーブジョブズに大きな影響を与えたことも確かなのだから不思議。
私はこの禅僧の離婚2回、最後は20歳年下の女性を孕ませて、アル中で、金銭面では全くの無能で、という経歴に俄然惹かれた。
同業者のヨガを教える人間はみんなキレイな事を言う。
「心穏やかに、静かな暮らしをし、良いものを食べ」云々。
でも私はとてもそんなことできない。
結婚しているにも関わらず、いつも恋愛沙汰に巻き込まれる。
日常的な悩みは「いかにしてパンツを脱がないか!」だ。
酒だって飲むし、酒とグッとくる音楽とグッとくる男がいたらタバコも吸う。
食べるものは信条からではなく体調悪くなるから気をつけるけど。
(その辺は小心者)
過去に恋愛と酒で相当に痛い目に遭っているので
ブレーキをかけることだけは辛うじて学んだが
体質はヨガくらいでは変わらないのだ。
そんな自分の悪徳に苦しみ、親鸞さまの本を開くと
「地獄にいるから念仏を唱えるのか、念仏を唱えるから地獄にいるのかわからない」とおっしゃっる。
それを「地獄にいるからヨガをするのか、ヨガをするから地獄にいるのかわからない」と書き換えて納得している。
でもね、私は思うのよ。
人間関係全部断ち切って山に篭って洞窟で暮らせば
同業者の言うような「キレイな生き方」できるんです。
実際同業者にそういうの多い。
面倒臭い人間関係は「心乱すもの」として排除して自分の殻に篭って一人でキレイな生き方してる人たち。
でもそれってヨガマスターベーションよね。
人間の業ってそんな生易しいもんじゃない。
そんなもんだったら親鸞さんも聖アントワーヌも、舞姫タイスのために地獄に落ちた聖者パフニュスだってあんなに苦しまんでしょ。
宿無し弘文の著者の最後のオチは良い。
「あなたと私とぶっ続き」
「大乗仏教とは居てもたってもいられなくなるような慈悲である」
心を開き、持ちうる限りのシンパシーでもって人と関わろうとすると
斬りつけられることもあれば
土砂災害のように恋愛に巻き込まれることも
とてつもない美しい友情に出逢うこともあるのだ。
肯定された。ありがとう。
精進します(パンツは脱がない)。