17、企画プロセス全公開。”今のケア現場にこそ、暮らしを豊かにする選択肢を持とう” −「第一回ケアの文化・芸術展」に行き着いた頭の中。#ケア文0202
この写真は、2011年ごろ、創業の一人として立ち上げた老人ホームで大学生らと紙すきのワークショップをした時の手元を、友人の写真家が撮ってくれました。今でも、原点に立ち返る、とても大切な一枚です。
今、2020年4月の開業を目指し、長野県は軽井沢町で、診療所(内科・小児科・在宅医療・緩和ケア)、病児保育室、通所介護施設、訪問看護ステーションからなる、在宅医療の拠点「ほっちのロッヂ」開業準備に着手しています。(2019年1月15日付のプレスリリースはこちら。)
私たちは、いわゆる在宅医療の拠点をつくりたいのではなくて、文化がうまれる拠点をつくりたい、こう思っています。
文化とは暮らしを豊かにしてくれるもの、そして人から人へと継がれるものだと思っているんです。
この「ほっちのロッヂ」お披露目を兼ねた、「第一回ケアの文化・芸術展」。2019年2月2日。この日にある大きな社会実験をまた試みようと思っています。例えるなら、これはケア版のアーツアンドクラフツ運動、と大それたことを言ってしまっても良いかもしれません。
アーツアンドクラフツ運動が、”もっと日常の暮らしにこそ、デザインの選択肢を持とう”と始まったように、”今のケア現場にこそ、暮らしを豊かにする選択肢を持とう”、というムーブメント。本人も、働き手も、です。
そのためには、思考の枠組みを外し、頭の中を再構築していくような時間になればと思っています。
開催報告ではなくて、開催する前に、頭の中のイメージと、企画のプロセスを全公開します。
普通だったらあまりしないかもしれませんが・・・、でもそれも含めて実践なのだからと。よければお付き合いください。
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2018年4月末:
「第一回ケアの文化・芸術展」の原案を着想。長い間産みの苦しみを味わった。(実際7月には3人目を出産したから、文字通りか。)
「ほっちのロッヂ」は、軽井沢風越学園の近くに位置する。同じく2020年4月の開設を目指している、幼稚園・義務教育の場所だ。教育と福祉が横断する。この流れを一言で言うならば、「文化づくり」という言葉が降ってきたのは8月ごろ。そこから収録したのが、このコンセプトムービーだ。(一言も、在宅医療の話をしていない。)
今のケア現場になくて(もしくはすっかり諦められていたり、忘れ去られてしまっているもの)、私たちが欲している感覚は、何だろうか。それは、暮らしを豊かにする選択肢、だ。本人にも、働き手にも、選択肢があまりにもない。
それが、「第一回ケアの文化・芸術展」の企画ページ序文にある。
「〇〇だから出来るんだね〜(苦笑)」という言葉をよく耳にする。(というか自分でも使いがちだったことにハタと気づいた。)
でも、それじゃあケアの未来は変わっていかない。ケアに関わる市井の人の意識そのものが変わっていかなければ、当たりとハズレのくじ引きで、老いていく道が変わってしまうからだ。それではあまりにももったいない。
いわゆる事業説明会にせず、「第一回ケアの文化・芸術展」としたのは、業界問わず価値観で人が集まり、それぞれの持ち場に帰って小さく実践することを促したいからだ。それが巡り巡って私たちの生活の実感として感じられるように。
2018年5月ごろ:
さて、ケアの在り方を揺るがせてくれる・ケアの選択肢を増やしてくれる事例を、「第一回ケアの文化・芸術展」のコンテンツにしよう。そう決めた時にいちばん最初にしたことは、ツイッターで情報収集した。過去の自分がマーク(イイねボタン。当時のツイッターのマーク(イイね)は約5500件)をつけた記事やコメントを見返し、本を取り寄せたり、作者にコンタクトメールを送ってみたり、予定帳がびっしりになるほど気になる大小のイベントに足を運んだ。
これらで情報収集しつつ、並行して、過去のノートブック、過去に読んだ本の読み直しなど、自分の過去の記憶を振り返った。2015年にデンマーク国、2018年に英国で見聞きし気づいたメモも合わせて振り返る。つまり、私の見聞録を盛大に詰め込んでいるのが「第一回ケアの文化・芸術展」のコンテンツだ。(そう思うと猛烈に恥ずかしさが襲ってくる。)
2018年8月末:
「アートサイエンス イズ」という本に出会った。
この本は、壮大にインスピレーションを掻き立てられた。先述したコンセプトムービー作成に関わってもらったブックディレクター・山口さんが著書の塚田さんをよく知っているということで、即アポをとり、「第一回ケアの文化・芸術展」での登壇を依頼した。
2018年9月ごろ:
もう一つが、「老いと演劇」だ。元々はこの記事を読んでからどうしてもワークショップに参加したかった。念願叶い参加(詳しくはこちらの記事へ)、菅原さんにもその日に登壇を依頼した。
両者に共通するのは、物の捉え方の概念を超える世界を見せてくれる・体験させてくれる、に尽きる。
これは先に挙げた、「第一回ケアの文化・芸術展」で目指す、業界問わず価値観で人が集まり、それぞれの持ち場に帰って小さく実践することを促すためには、概念を超える体験が必要だからだ。
2018年10月ごろ~12月ごろ:
まだまだ私の見聞録は収まりきっていない。そこで、ポスターなどを出展してもらう方法で、文化的なアプローチでケアの選択肢を増やしてくれるような事例に、一つ一つ声をかけていった。
・「MUKU」
知的障がいのあるアーティストが描くアート作品をプロダクトに落とし込み、社会に提案するブランド。株式会社ヘラルボニーが企画している。2019年1月26日からは、クラウドファンディングも開始している。
●「ON」の時間を彩るネクタイ&ソックス
●「OFF」の時間を彩るTシャツ&ソックス
・「モバイル屋台de健康カフェ」
屋台を通したコミュニティづくりと健康づくりを目指し、谷根千まちばの健康プロジェクトチーム。
・「食べられる景観」 / 訪問園芸(千葉大学)
日本に古くからある地先(あるいは路地)園芸のような「食べられる景観」づくり。
・「メジロック」
豊島区立目白福祉作業所と目白生活実習所が立ち上げたブランド「メジロック」。
・「茶山台としょかん」団地集会所を活用したコミュニティルーム。
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こうして、いよいよ開催が来週の2019年2月2日に迫ってきた、というわけです。実は、かなり長い時間をかけて、2日を迎えるとあって、なかなかに緊張するものもあります。
同日には、渾身の思いを込めた、福祉の未来をつくる仲間づくり、「ほっちのロッヂャー」のクラウドファンディングもスタートさせることにしています。
たっぷりと私たちの思いが入った社会実験の初日に、ぜひ立ち会ってください。残り、8名ほどで定員を締め切ります。(2019年1月26日22時現在。)
藤岡聡子
株式会社ReDo 代表取締役/福祉環境設計士
info(@)redo.co.jp
http://redo.co.jp/