魔物
私の心が大波に揺られて溺れて水浸し
鬱の魔物は水面で
滑っとどろんと顔をだし
大きく開口した魔物は私を
夕飯として丸飲み鵜呑み
それでも言うの
あなたは言うの
魔物なんざいないのいないの気の迷い
そういって私の靴を磨き
シャツにアイロンをかけては
微笑みと神妙の丁度真ん中の顔をして
豊かな箪笥の引き出しを
そっと開けては色とりどりの召し物を用意した
私が今溺れているのは
私の冷や汗からできた海
私を飲み込んだ魔物は
いない いないの空想動物
あなたは私の想像力を
ずっと静かに褒めてくる
今度は静かな湖で
白鳥と一緒に踊りましょう
そういう創造の世界で暮らしましょう
そうやっていつも
言ってくるのは
大きくて小さなあなたの言の葉
私は涙で違う池をつくった
苔生すまでは育てたい箱庭の池