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詩集 幻人録

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タイムスリップ

タイムスリップ

古いアルバムに残された
あなたの記憶を辿って
私はタイムスリップしたの
あの頃の甘い生活

写真の中で暮らしてるのに
あなたは私に気づかない
だけども隣で笑っていられる
二人だけの懐かしい時間

徐々にあなたはセピアになって
だから私は絵の具で染めたの
あなたの肌も服も茶色い髪も
そしたら見上げたカモメが止まった

段々世界が終わってく
海もカモメもセピアになってく
あなたの動きもピタリと止まった

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蛹の部屋

蛹の部屋

中学生の頃の僕は自室に篭もっていた
特にそこが好きだった訳ではないが
そこしか逃げ場所がなかったともいえる
外界を隔てるカーテンはぶ厚く鎖国した国の様
部屋の中に居るにも関わらず
僕は自分の胸の奥に居る
部屋ごと僕の胸の奥にあるのだ

その中で暴れては椅子を壊し
本棚をうつぶせに倒した
僕は僕の胸の奥で暮らしてる

ギターが一本
部屋に置いてあった
たまに僕はギターと笑う
ギターは逞しく繊細だ

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7月の坂

7月の坂

蒸し返すような暑さ

溶けていくアイスクリーム

溶けていく彼女と僕

絵画の様な入道雲は

固まりになって空にへばりついた

丘の上の街まで帰る

僕達は

うなだれながら

坂道を歩き登った

重い荷物と

棒だけになったアイスクリーム

家に着いたら冷たいソーダ水で

体と心を潤したい

滴る汗

張ってきた脚

追い抜いていく自動車

年々熱くなっていくこの国

少し休もうと日陰に入る彼女

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君はミルクティー

君はミルクティー

さよなら君は

笑顔で手を振って

僕の涙を

置き去りにした後で

歌を歌ったみたいに

汚れた泣き顔と

遊んでた

古いソファーで

久しぶりだよ

胸が痛むのは

憧れだけが

まだこっちを見てる

頭を撫でながら

笑って消えた

君をまだ

追いかけている

理想郷の様な

小さな部屋の

君の面影

徐々に薄れてく

僕の物だけになった

さっぱりとした部屋

それはまるで

愛を捨

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夕闇の踊り子

夕闇の踊り子

夕闇と共に踊る
それはあなたと約束した刻
ここで踊ってさえいれば
あなたが古い馬車で迎えに来てくれる

何日経ったかわからない
私は夕闇の綺麗な踊り子

薄明かりの下
ゆらゆら踊る
万華鏡をゆっくり回すみたいに

夕陽が沈みかけは少しばかり淋しい
だから余計に踊りたくなる

一匹の猫が軒下から来た
おまえも一緒に踊ろうか

猫は私の気持ちとは裏腹に
にゃーごろ鳴いて私に言った

「あなたの涙は見栄

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冷たく燃ゆる歌に喝采を

冷たく燃ゆる歌に喝采を

冷たく燃ゆる

胸中は熱く

街は変わらず 知らん顔

熱狂のなか

僕らは拳を高く上げた

それでも街は そっぽむく

孤独な街は

手には入らず

巻き込むことは出来ぬまま

熱い想いは

小さな体内で

灯火揺らいで燃ゆるだけ

だから僕らは声にして

ピアノを鳴らして

命を燃やす

それは生きてく糧であり

ゆらゆら燃ゆる

だけではない

たからかに熱く

燃え盛るが故

周囲も燃やす

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流転鳥

流転鳥

梟は鳴いた

樟の枝分かれ

都会の公園

迷い込んだのは

遥か遠くの森から

夜風に乗って

車のエンジン音

行き交う人の声の隙間

梟の鳴き声

彼は叡智の源

だけども知らない

信号機の羅列

梟は鳴いた

反響もしない声が

雑踏に踏まれてく

彼は困った

叡智の外側

鈍い星

明るい夜に

痛い耳鳴り

チカチカとした灯火が鬱陶しい

彼は考えた

きっと私は夜風に当てられ

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雑踏讃歌

雑踏讃歌

壊れた方位磁針

ここはどこ

雑踏をかき分けて

人混みは焦るの

みんなの顔

表情はばらばらで

私はどこへいく

右往左往

わからなくなって立ちすくむ

空にはポツンと一番星

目印と決め

とにかく前を行く

哀しみはどこからやってきて

どこに流れるていくのだろう

ビルの隙間

高架線のした

交差点の人波の中

探しものが思い出せない

私は一体なにを辿ってここにいる

冷たい風

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朝焼け

朝焼け

朝焼けが心地よくて
あなたは思わずはにかんだ

遠くに見える鉄塔の影が
薄らぼやけてみえた

空気は幻では無くて
見えない優しさで出来ている

言葉はいらない なにもいらない
だから側においで

嗚呼 忘れものもなく
この世から旅立てる時に

嗚呼 今日の朝焼けを
思い出せればそれでいい

ひとつも背負えないだからこそ
愛を刻んでおこう

太陽の命が眩しくて
あなたは思わずはにかんだ

朝靄に眠る

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僕だけに咲いた傘

僕だけに咲いた傘

優しく憂いの雨が止んだ

街に取り残されて

行き交う人達は嬉しそうに

傘を閉じていく

急いで変わる信号機

僕は渡らずまだこっち側

繋いだ手と手が離れていった

交差点の向こう岸

ためらうこと

立ち止まること

愉快に踊りながら

なんて生きれない

喪失感がぐっと胸を刺す

違う色の景色

悲しみの色は水溜り

勘違いならいい

この胸の傷みの全てが

雨上がりの匂い

黒く染まった

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雄大で華奢な空

雄大で華奢な空

泣いてもいいよ

君は黙って呟いた

言葉の絨毯

傷みは夢

愛の薬を飲んで

色気のない部屋

僕に合った小さな椅子

そこからなにを届けるの?

鐘のなる部屋の外で

出逢いは突然

窓を開ければ

鳥達が幾重に羽根を広げた

飛んでもいいよ

鳥は優しく呟いた

清らかな声

僕の耳元で

僕は泣きながら

この空を飛んだ

雄大で華奢な

美空に浮かぶ

返信を待った

君の声のする方

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人魚と朝日

人魚と朝日

絵になる人魚

遠目でみるの

近くじゃ海の底に消える

眩しい朝日

波の白粒

懐中時計は海の底

私は砂浜の上

裸足で立って

星を感じて目を瞑る

絵になる人魚

騙されないで

ここにはいろんな想いがある

暖かい海水が

私の足と戯れあって

わがままな夏の調べ

希望はあるの

あるからここに立っている

彼女達もほら ほんのり微笑

この朝に誓いをたてる

明日もここで

星を感

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甘い三日月

甘い三日月

甘い三日月

そっと撫でた

カーテンの隙間から

届かない願いと

星屑の痛み

悲しき夜のヘソ

君なら今宵はどう踊る?

僕はずっと窓越しに寝転がって

冷めたアールグレイ

消えた天使

コンクリートの壁

目が覚めても

見る夢は

心にぼんやりと

影を落として

答えの出ぬまま

ベッドの上で

少しジャンプ

無理やりにね

とめどない

朝日が来る前に

僕は鬱陶しい髪を束ねた

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オーダーメイドの星座は泣く

オーダーメイドの星座は泣く

濃紺の月周り 

天使のキス

冷めた薔薇の香り

映しだしたのは 

夜空のスクリーン

止まった時間の針

夢物語と

沢山の嘘

秘めたはずの想い

星影をくぐり

新しい夜の

風を待って今飛び出そう

オーダーメイドの星座が今

美しく耀き 

涙溢した

それじゃなんて言葉

かけたらいいの

せっかくの甘美な夜なのに

それでも哀しみより生まれた

強さはまるで流星群

とめどない涙

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