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詩集 幻人録

316
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2024年5月の記事一覧

美しい熱

美しい熱

記憶失うほどにきつく
あふれた嘘はシーツに溶け込む
薔薇の花でいっぱいのベッドで
私は棘に刺さって沢山出した

あなたの声は囁きながら
遠くのあの子へ送る恋文
私でしょ ここにいるのは
目の前の薔薇の精

くだらない脳天直下型快楽
誠に誠実な秤を騙し
重い方を上に傾かせ
一夜に溺れさせてくる

愛は流星群の如く
最後には消えてしまう事情
ほどけない縄で私を縛って
微熱じゃ物足りない地獄

後ろ向き

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バニラアイス

バニラアイス

淀みない星の涙は
幾千の夜の橋渡し

可憐に笑った満月は
屈託のない自然界

愚直な風に流された雲は
明後日の空に逃げた

そんな夜に食べるのはバニラアイス
甘くて少し空虚な味

星の涙は甘い味
初めて知った様な

みずみずしい満月を搾って
少しさっぱり

時計は壊れたまま
5月の夜に浮かんでいた

寛大な空からのシグナル
受け止めて今宵はご馳走様でした

年寄りの鷲

年寄りの鷲

あなたは遠い彼方の空から
私をギョロッと見つめてる
あてもなく緑道を彷徨う
弱い私をただ見つめてる

東の空の隅端で
翼広げて浮かんでいる
風の城壁に当たっても
少しも揺らぎはしないのだから

私を見てはなにを思う
小さな私は鼠の様に
隠れて歩く
ただひたすらに

美味そうだとか
滑稽だとか
弱者を真似た役者だとか
一体なにを思うのか

心はあるか
あるなら飛べる
心は豊かか
それなら行ける

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赤い純白

赤い純白

僕は兎
くすんだ白の毛並み
雪の平野にそっと
つま先を降ろす

赤い色をした
ドレスの君が
なぜこの平野で
踊っているの

僕は続く
君の後に
ひらひら回って
足跡が増える

光が反射し
眩しく赤い
純白のステージ
君は綺麗だ

どこから来たの
何故ここで踊るの
僕の問いなど
絵空事

私は薔薇で
手足を貰った
嬉しくてつい
季節を待てなかったのよ

僕は兎
君は薔薇
一緒踊った
スパンコールの雪

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他所様の楽園

他所様の楽園

古いブランコが鳴く
無邪気な声の主が
地上の楽園を作り出す
ここは穏やかだ

誰かが言っている
明日も晴れるから
遠くへ出掛けようと
ここでは無い

空は澄み渡り
木々は揺れている
子犬が散歩の途中で
少し震えたくらい

座った椅子が暖かく
目の前の滑り台から
命の灯火がスースーと
降ってくる

私の困った気持ちも
今だけは顔を隠し
ゆったりとした
顔に変わる

サンダルに砂が紛れ込む
それをそっ

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愉快な雨

愉快な雨

愉快な雨が降る夜のこと
私は布団の奥のほう
屋根頭に当たる水滴を
心弾ませ聴いていた

眠れぬ夜の隠し月
見えぬは宵空 明星への旅
泪の代わりに踊る音
私はごろりと寝返った

走る雨音段々急ぐ
屋根頭を通り越し
私の布団に刺さってく
ばちばち ばちばち遊んでる

仰向けになり戯れた
雨粒達と話してた
心に出来た水溜り
映るは笑う言葉達

がむしゃらに話す雨粒は
各々違う話題をくれる
百合の花が綺麗

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小鳥のうた

小鳥のうた

小鳥がなにも言わないの
あなたがそうと言うもんだから
耳を澄まして目を瞑る
チユン チユン チユン チユン

小鳥は歌を歌ってた
古い昭和の歌謡曲
私は可憐に身を任せ
踊る心の空泳ぐ

肌が触れ合う感覚が
淋しさと重なりあったから
あなたは歌が聴こえない
上手な歌がわからない

春の木陰の真ん中で
染み込む季節の飾り歌
私はずっと前からさ
この歌なんだか知っていた

黄金色した五線譜は
まどろむ時

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風と私と

風と私と

あなたの通り香
頬に当たる風
飲みかけのサイダー
眠りに落ちた

子供達の声
遠くではしゃぐ
ぼかした記憶は
曖昧で綺麗

寂しさは海の底
時間は止まった
穏やかな陽の中で
あなたを想う

降る翠の木々の葉は
広い世界の入り口
私は軽いシャボン玉
アゲハ蝶と共に飛ぶ

ゆらゆら
ゆれゆれ

風の悪戯
私はどこへ行く

ゆらゆら
ゆれゆれ

しめされず飛んだ
答えなんて死んだ世界へ

風は行く

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