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詩集 幻人録

316
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2022年8月の記事一覧

眠そうな枕

眠そうな枕

眠そうな枕
眠れない私
誰かの声が聴きたくて
ラジオを無理矢理起こす

暴れたタオルケット
項垂れる扇風機
小さく聴こえるラジオの声に
耳を傾け目を瞑る

私はきっと
この夜になにかやり残したことがあるのではないか
そう思う
そんなものないのに
眠そうな枕
眠れない私

茜

小山を越えて
野をぬけて
沢を渡って
陽が沈む

私の一生語りもせずに
峠を越えることばかり
夕陽の彩葉を絵にしては
故郷の彼方の陽が燃ゆる

茜の山の向こう側
風吹く闇の檻の中

焚火の時刻は思い出す
友の唄声頭を擦れる

あゝ人生に奮いの茜を

青の呼吸

青の呼吸

起きかけの目覚まし時計
乗りかけの自転車
向かった海は
まだ薄暗い
太陽の頭がぽつりと見えて
砂浜が駄々をこねる

私は大きくなっていた
巨木の様に
この街一帯で一番大きい
深呼吸をしたら
太陽が少し早く顔をだした

気持ちのよい風
潮っ気の多い
難しいことは何にもない
私は大きい
私は呼吸する
海の様にとても青い呼吸