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詩集 幻人録

316
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2021年9月の記事一覧

水中にて

水中にて

眼鏡についた雨粒で
私の心は読まれない

天使がハンカチを持って
私の眼鏡を拭かないように

わざわざ新宿の雑踏のなか
あなたと淋しいお話しを

ここは皆が迷う場所
人間だって
天使だって

あなたは屋根のある場所で
濡れた私をどう見るの

きっと悲観に陶酔しているとでも
感じているのでしょう

眼鏡に付いた雨粒のせいで
あなたの心が読みきれない

私は靄と雨粒の隙間から
駅の改札口に向かうあなた

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東京sky magic

東京sky magic

ダイソンにまたがった魔女は

夜空を優雅に駆ける

乗り心地は快適で

スピード感もいい

東京タワーを斜め上から見下ろした後に

赤坂の夜景を目に焼きつけた

高級ホテルの上の方あるラウンジの窓には

ゆっくりとした時間が流れている

魔女はそれに感化されスピードを落とした

Bluetoothイヤフォンから流れるユーミン

新しい東京からエモーショナルを引き出している

夜空を駆ける魔女が

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もしかしたら

もしかしたら

もしかしたら僕には
トロンボーンを吹く才能があって
でも
トロンボーンを吹く機会がないもんだから
才能に気づかずに譜面は風に飛ばされる

もしかしたら僕には
君の心を優しく撫でる才能があって
でも
他者との繋がりを拒むもんだから
君と才能が距離をとった

もしかしたら僕には
宇宙飛行士になれる才能があって
でも
夢物語って思っているから
才能はブラックホールに吸い込まれた

あの時
友達を泣かせち

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焔花

焔花

花瓶に骨を生けました

綺麗な花弁が咲いております

花瓶に骨を生けました

真っ赤っ赤っ赤 燃えるようです

花瓶に水を注しました

じゅうじゅうじゅわっと

鎮火します

花瓶の花は消えました

燃ゆる花弁が炭になります

これでゆっくりおやすみなさい

花瓶に花を生けました

あなたの様な大きなダリアを

不安が焦げる匂いとともに

三

僕は『三』
みんなからは「さん」とか「three」とか呼ばれてる

僕の名を読んで阿呆になる芸で有名な三です。
あの時はなんだか複雑な気持ちでした。

早起きは三文の徳
とか言われた時は嬉しかったな
なんか僕が良い扱いを受けている様でね
でも「たったの三文なら寝てるわ」
という意見は僕からしたら辛辣だった

三度目の正直
って時には僕も力を入れて全力だすね
全力だすけど
二度あることは三度あるって

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小鳥の謳

小鳥の謳

拗らせた時代にも
小鳥は空を駆け抜ける

縁とゆかりの風呂敷で
空ごと小鳥を包んでる
小鳥もきっと
私達と同刻に生きているもんで

違いなんてのは
ただのひとつも無いもんで

小鳥も私も
シンプル故の穢れなき風と謳う
ひとつの元素とひとつのこころ

ゆけゆけ
荒野も
バッサバッサ

ゆけゆけ
都会も
くーるくる

拗らせたのは
時代じゃなくて
頭を捻ったぐるぐる人間

ほどいて
ほどいて
すーるす

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Rain

Rain

葉も霧に隠れる
星が避難した夜

降る雨は屋根を濡らし
コンクリートは黒くなる

風はそんなに強くないから
時折走る自動車の顔も
そこまでしかめっ面ではない

私はアパートのベランダで
なにもない時間を過ごす
残暑を疎む季初めに丁度いい雨さん

翌日の朝にはどっかに行くっちゃね
今のうちにここいら一帯通らしてな

そう言ってきたのは
頭の垂れる意を込もった優しい雨さん

雨さんはひたすらに私の手を

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季蝶の文

季蝶の文

彼方には薄浅葱の空

カステラ色の蝶の群れが一斉に羽音をたて

私と空の真ん中のビル間を横切る

其れ等は青柳色の蝶が住む木に

押し掛けるように群衆で集った

青柳色の蝶の群れは其れをうけると

羽根いそいそと一斉に飛び立ったては
ビルの影裏に消えていった

私はひとつ また夏を見失った

きっとこれから中禅寺湖への
峰いろはでは
ポスト色の蝶の群れがばさばさと
青柳色の蝶が眠り落ちそうな頃合い

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食パン

食パン

カビの生えた食パンにはなんの罪名も病名もない

ただ台所の棚のなかで失念されていただけ

悪いのは私

私が食パンを放置したから

カビが生えて食べれなくなった

贖罪に私がこのカビの生えた食パンを食べても

お腹を痛める程度だろう

食パンは命を落としたのに

私は数日で寛解する

これはとても悲傷的な

人間の自覚のない行いのひとつにすぎない

食パンに着いた汚点を直視できないのは
重ねて心の

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傘の教室

傘の教室

あの子は足がとてもはやい

その子はいつも授業で褒められる

給食を残さず食べる子も

風邪をひかない子もいる

僕は足も遅いし
授業で手は挙げられない
きのこだって食べられないし
すぐに鼻水がでる

先生は僕のこと嫌いかな

みんなみたいになれないな

だから学校に傘をいっぱい持ってきた

何日にもわけて10本くらい

お父さんたちの傘は無くなっちゃったけど

これでみんなと一緒になれるかな

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