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詩集 幻人録

316
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2021年4月の記事一覧

日常戦火

日常戦火

乗用車の様な軍戦車が

街灯になりすましたランチャーが

自転車群に似た突撃兵達と

パンプスの音を鳴らす殺し屋が

私の背後上空前景から近寄る街で

私は耳を塞ぎ

目を瞑って

祈る様に帰路を辿った

通行人に似た弾幕が

私に向かって来る度に

大きな声を放っては

冷やかな視線の的となる

ゴミ袋のふりをした爆弾が

時限式に炸裂しないよう

速足でゴミ捨て場の前を通過した

流星だって

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狭い部屋

狭い部屋

キリがないほどに

私の狭い部屋に生える草は

刈っても抜いても

育まれる

それは私の狭い部屋が

終わった後の地球の文明の祖の様で

私だけ生存してしまった世界線の様に思える

私の狭い部屋には雨も降り

その度に私は傘をさし

びじゃびじゃになった草の葉を

急いで引っこ抜いていた

そんで顔を出した木の床を

雑巾でぞすぞすと拭き

疲れた頃にはまた草が育ちだす

ある日

目を覚ました

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田川に濁人

田川に濁人

窓の向こうに流れる川は

どれくらいの水温なのだろうか

触ってみればわかることだが

生憎私はここから出れない

魚は泳いでいるのだろうか

行く年考えていたが

逸れた鷺の狩をみて

魚がいることを認識した

流れる速度はどれくらいのものなのか

知りたいもんだから

だれか溺れてはくれないであろうか

などどいう暴力思想を自家発電できない為

私は今夜眠ったら

窓の外の川に挨拶にいこうと企

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太陽宿り

太陽宿り

土砂降りの太陽光が紡ぎ出す

短し朝のひとときよ

私の悲観的な内緒が増えることなど

どうでもいいとばかりに

始まってしまったら歯止めの効かない

猛進的な朝が静かに騒ぎ

直線的に蠢き出す

人々とは朝を食べた食感も匂いも違う私は

この朝からつまみ出されて

捨てられ

暗い洞穴の様な動かぬ螺子路に

利害が一致する筈だと

ひとくくりに朝の看守に放り込まれた

私はただこの朝の一部になり

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ナチュラリーは嘘をつく

色のあるパスタをたべて

風に舞うファッションを纏う

波の揺らぎを尊く見つめ

友との会話はスーパーボール

私にとっては悪くはないライフも

あなたにとっては

谷の底かも知れないワンタイム

人の苦は

身体が違うとDo not know

他人なんざ悲観なフェイスをわざわざ見せない

もがく脚は水中だけの白鳥さ

悟りの悪い私にBAD

オー シット

あなたの痛みが見えないままで

無邪

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お月さんの影法師

とうに友の背中は見えず

昼間から熱い風呂に浸かる

流れ出た汗には苦も忍もない

体温よりも熱辛く

私の日常に落ちている情よりも煮える

ねるい言葉を音無き声で吐き潰し

提灯の様に薄ぼんやりと

ただただうどんを啜りこむ

「気がつきゃ お月さんの影法師」

私の今日の一言目

もう寝逃げの刻ってか

私も昔は友の様に

言葉並べて

品並べ

せっせ せっせ


駆け回る

いつしかゼン

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風の写真

風の写真

私は写真を撮るとき
いつも考える

ビルを撮ったら
ビルが朽ち果てたあとに
写真を見返すのは悲しいな

木を撮ったら
木の精霊が死んだあとに
写真を見返すのは悔しいな

あなたを撮ったら
あなたに霞がかかったあとに
写真を見返すのは苦しいな

今を切り取ることにはなんの躊躇もないが
人生を振り返ることは少し苦手

青春のプレイバックは私を過去に縛り付けるし

過去から励ましの様な類いのものを
受信

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