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詩集 幻人録

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2020年12月の記事一覧

ひとりと一匹

ひとりと一匹

私はあなたの目です。

私があなたを引っ張って、光よりも眩しい日常に導くのです。

どうやら、ここのカフェは私の入店は禁止らしい。

だからあなたも入店できない。

でも、落ち込まないで

私が次のカフェまで導くから。

そしたらゆっくり珈琲を飲んで、
流れるジャズでも聴きましょう。
じっくりとまどろんで下さい。
今日はたくさん歩いたから、
全身がとても強張っているでしょう。

ひと休みして家に帰

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ビューっとな

ビューっとな

明日はまだ存在しない時間

私達はその存在もしないものに、いろいろな想いを馳せる。

拒んだり
迎えに行く程望んだり

昨日はもう存在しない時間

私達はその存在もないものに、いろいろな想いを重ねる。

抱きしめたり
目を塞いで逃げ出したり

だけども存在なんてものは、みな始めから形なんて
持ってはいなくて。

ひとつひとつの過ぎ吹く風のように

そこにあって、そこにない。

だからこそ

積み重

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奪還された夕日

奪還された夕日

これは私が仕留めた獲物だ。

そこにライオンの集団がやってきて、
獲物を横取りしようとしている。

だが、サバンナにいる全員が
私が獲物を横取りにコソコソやってきたのだと
思うのだろう。

そこにいる人間達よ。
カメラは最初から回していたか?

この獲物は絶対に誰にも渡さない、
私達の名誉のために。

私達は昔からこのサバンナで生き抜くことだけを
考えて生きてきた。

時には他者の捉えた獲物さえも

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good night show

good night show

good night show
泡の抜けたシャンパンを君が含んで

good  night  show
僕に言うの、あなたの声がうるさいわ

だからちょっとナットキングコールのピアノに合わせ
僕なりの意地悪を言うの

チラチラ光る
月の誕生日さえ、あなたは知らない
それなのに何故夜空に祈るの?
今宵の幸せを。

good night show
呆れた顔で君がぼんやりこっち向いて

good  ni

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清く濁るものたちと

清く濁るものたちと

暗く、濃霧のつつまれた真夜中の森に
まだ、あどけなさが月影に残る少女は迷い込んだ

先のみえない森の中は、少女の枝の踏む音
暗闇で獣と森が擦れる音だけが聞こえてくる

少女は不安で胸がいっぱい

月明かりも薄すぎて霧の餌食になる

草葉の陰からこちらを見つめる視線を
少女は敏感に悟った

だれかいるの?

か細い声が闇に消える

僕だよ

じめっとした短い返事が返ってきた

それは小さなアカネズミ

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平行線の波を今

明日は休日

何もせず
野良猫の様にダラダラと過ごすんだ

目覚ましはかけずに
夜更かしをして
ご飯は宅配ピザを頼み
最高の休日を過ごすんだ

まどろむ時間に思想は要らない

もはや時間も閉まってしまおう

明日も生きる

命を野性に晒さず
休日でゴロゴロしやがって

人間達は気楽だな

街中からご飯をさがし
他の野良猫とも領土争い

毎日が戦だよ

まどろむ時間も帳尻を合わせてやっと

もはや時

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Make up one’s mind

Make up one’s mind

一日の終わりに
今日という日のタイトルをつけることにした

理由は特に無い

ちなみに今日のタイトルは

「penance」

なぜなら、私は就活生

今日は企業に出すエントリーシートを
何時間もかけて何十枚も制作していたからだ

まさに苦行

疲れた私はすぐに眠った

明日はどんなタイトルになるのだろう

「Passing hearts」

今日は最悪だよ

彼女が東京で就活するらしい

私は地

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冬獣は魔法に弱い

今年は今日がはじめてなの

12月に入っていきなりやってきた冬の獣が

容赦なく私たちを引き裂いていくから

私は一度

玄関を出たのに

大急ぎで部屋に戻った

クローゼットを開け

普段は開けない一番下の引き出しから

赤いチェックのマフラーを掴み

小走りで鏡の前へ向かい

ぐるりとヒラリ

少し引き出しの中の香りがこびりついてしまっているわ

でもこれで

冬の獣には引き裂かれない魔法をひ

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